第43話 親の気持ち
ランク10魔力渦では、収支が黒字になるまで4回アタックした。
ランク9以降になるとソロだとキツイ。
疲れを感じた俺は、近場の温泉宿で2泊して家へ戻った。
今日は、子どもたち二人がサバイバル実習で帰宅しない。
この機会に、妹夫婦とじっくり話しをしてみることにした。
夕食後に話題を投げる。
「なぁ。あいつら二人がシーカーになること、親としてはどうなんだ?」
「反対だよー。危なくない仕事を選んでほしいに決まってる!」
「そうですね。
どこでどんな仕事をしていても、魔力災害に遭う可能性はありますが、わざわざ自分から危ない場所へ飛び込むことは、認めたくありませんよ」
「まぁ。そうだわな。俺でも感じることだ。親だもん当然だよな」
自分の子どもが可愛くない親は居ないだろう。
子どもたちには幸せになってほしいと、願うのが親だろう。
「それでもシーカーになることを認めているんだよな?」
俺だったら、いろいろ説得を試みて失敗して、子どもと喧嘩別れになってしまうかもしれない……。
子育てって、やっぱ難しい。
父さんと母さんは、どうやって俺たちを育ててくれたんだろう?
「認めてないよ? でもさー、あの子たちなりに考えた結果なんだもん。渋々だよ」
「自分の将来は自分で決めるものだと、自分に言い聞かせて、私たちにできることを精一杯やるだけです」
「二人は立派だよ。俺は狭量だな」
「兄さんも自分の子どもができれば変わると思うよ?
子どもができる前と、生んだ後では世界が一変したもん」
子どもを自身で身ごもる女性と、男性とでは感じ方が違うだろうと思う。
それでも、自分の血を引く幼い命を大切に想うことは、性別関係なしで親として当たり前のことかもしれない。
俺は情報端末を取り出して、二人に見えるように置く。
「これは知ってるか? シーカーの年齢別死亡率と引退率だ」
「知ってるよー。私もあの子たちに見せて説得したもん」
国連が出している統計で、日本のものと全世界のものを並べてある。
考えることは同じということか。
「学校を卒業してシーカーになった若者の半分以上が、その年に死亡か引退してる。
2年目もシーカーをやっているのは、4割程度しか居ないよな?
あいつらは大丈夫なのか?」
「大丈夫で居てほしいよ! もう来年は卒業だから、頑張ってお金貯めてる」
「ですね。私たちにできることは、少しでも危険を避けてほしいから、お金を用意するくらいしか、ありませんよ……」
親として辛い決断だろう。
ほんの数ヶ月だけど一緒に暮らしてみて、子どもたちの可愛さと、育てる難しさを実感した。
父さん、母さん、苦労して育ててくれて、ありがとう。
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