第31話 ランク1魔力渦へ



 退院して20日くらい経過したころ。


 魔力研究所から依頼された本の翻訳作業をしたり、家族から話しを聞きながら現代知識を身に付けている。


 自分の中で、これなら普通に生活できるだろうと、やっと思えるようになってきた。


 26年の空白によるカルチャーショックは、結構大きかったんだなと、改めて実感した。



 生活にも慣れてきたから、シーカーとしても活動してみようと思い、神奈川にあるランク1の魔力渦へやって来た。


 防御壁の門で身分証とライセンスカードを見せて、訪問目的を伝える。


 問題なく入場許可が出たので、渡された地図を見ながら目的地を目指す。


 前回来た時は誰一人見かけなかったけど、今日はたくさん人が居る。


 この前は人払いされていたのか?


「ここか」


 日本には、ランク1の魔力渦はここにしか存在していない。


 はじめて魔力渦に入る人は、必ずここの教習所で講習を受ける必要がある。


 受講終了印がないと、魔力渦へ入ることができない。


 受講は予約制だが、この時期にシーカーデビューする人は少ないようで、予約はすぐに取れた。


 受付で必要書類に記入し、講習室へと移動して待つ。



 講師は国連の職員だから俺の事情を知っていたが、


「特別扱いはしないぞ」


 と発してから講習が始まった。


 俺としては、特別扱いされる方が苦手だから、ありがたい。


 講義の内容は、この世界で生活している人なら当たり前に知っていること。


 それと、一般にはあまり知られていないシーカー独自の決まりごとなどだった。


 防御壁の内と外の常識の違いを叩き込まれた。


 講習の後は、シーカー用の施設や設備の説明を受けた。


 武具などの装備用品店、練習用の施設などなどもあり、防御壁内で異世界に関することがすべてできるようになっている。


 魔力渦を通って異世界へ行く時は、預かり所で装備品ケースを受け取り、更衣室で着替える。


 持ち込んだ物で、異世界へ持っていかない物は装備品ケースに入れて預けておく。


 魔力渦に入るには、検査所で異世界へ持ち込む物のチェックを受ける必要がある。


 持ち込み禁止の物は、結構な種類が指定されている。


 禁止薬物やアルコール類、

宝石などの異世界で高額換金可能な物、

動植物などの環境に影響を与える物、

などなど多岐にわたる。


 当たり前のことだろうが、改めて指摘されないと気が付かないことも多かった。


 環境で言えば、異世界ゴミ問題がある。


 食べ物や飲み物の入れ物なんかを、ポイ捨てするマナー違反者が多く居たそうだ。


 それが原因で、ダンジョン内で異臭が漂って苦情が出た。


 いまでは、持ち込んだプラスチックなどはすべて持ち帰ることが義務付けられている。


 異世界から戻った時に、入った時の持ち込みリストと、

持ち帰ったゴミを調べてポイ捨てしていないかどうか、

チェックされる仕組みになっている。


 いつの時代も、ゴミ問題はたいへんなようだ。


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