第22話 魔力渦へ



 ヘリコプターに乗って、国連日本支部を飛び立った。


 はじめて乗ったが、爆音が酷いし寒くて乗り心地は最悪だ。


 魔力渦の周りには、魔獣が溢れ出さないよう、分厚い防御壁が建設されている。


 防御壁の外には国連軍の駐屯地があり、ヘリコプターはそこに着陸した。


 ここ横浜郊外に、ランク1の魔力渦がある。


 防御壁のゲートを通って内側に入ると、予想に反して建物が多い。


 聞けば、軍人もシーカーも最初はここに来る。


 全員がここで講習や訓練を受けるから、さまざまな施設が建設されているそうだ。


 魔力渦自体もコンクリート壁で囲まれていて、ここからは見ることはできない。



 岩沼さんに案内されて更衣室へ移動する。


 俺のような一般人は、許可エリア以外では武装することができない。


 それは当然のことで、街中で異世界戦闘用の装備で暴れられたら、たまったものではないだろう。


 許可エリア以外では、専用の装備ケースに入れて運ぶことになっているから、更衣室で着替える必要がある。


 これから一緒に異世界へ行く岩沼さんは、俺の着替えを手伝った後、いま着替えをしている。


 更衣室の外で待っていると、「お待たせしました」と岩沼さんが出てきた。


 エッ! 誰?


 謎の美少女がそこに立っていた。


「国連職員は、事務職でもシーカーランク2を持っていますから、全員が装備を所持しています」


 戦闘を考慮してか、メガネを外してポニーテールに結んでいる。


 水色のライトアーマーに身を包んだその姿は、異世界ファンタジー作品から抜け出してきたヒロインのような、そんな出で立ちだった。


 もし岩沼さんが独身の身だったら、この場で交際を申し込んでいたかもしれない。


 イヤ。ダメだ。


 己の考えを即否定する。


 異世界で女性について学んだ俺は、見た目で女性を判断してはダメだと、よく知っているはず。


「高そうな装備だ」


「支給品です」


 岩沼さんのクールな態度で、俺も少し落ち着いた。



 魔力渦を囲っている壁を超えて、はじめて魔力渦を直視した。


 なるほど、黒い球体の表面に渦のような模様が見える。


 国連軍の人たちが続々と魔力渦へ消えて行く。


「私たちも行きましょう」


 岩沼さんに手を引かれ、魔力渦へと足を踏み入れた。


 さっき外見に惑わされないと決意したのに、手を握られてドキドキしてる俺ってチョロい……。


 いや違う。


 戻って来てからというもの、ご無沙汰だから溜まってるのかもしれない。


 そんなアホなことを考えていたら、一瞬の浮遊感を感じた。


 次の瞬間には、目の前に別の世界が広がっていた。


「こりゃすごい」


 信じてなかったわけではない。


 だが、こうして一瞬で別の世界へ移動できてしまうとは、魔力渦のデタラメさに驚いた。


「円形防御陣形」


 護衛をしてくれるのは、2つの小隊で合計12人。


 1つめの小隊が俺と岩沼さんを中心に、半径5メートルの円陣形を組む。


 もう1つの小隊は半径15メートルで円陣形を組んで、基本陣形が完成する。


 昨日、時間をかけて練習したけど、俺はとくに何もやることがなく、正直ヒマで仕方がない。


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