第13話 小等部の教科書



 リハビリが始まって一週間。


 足はまだ思うように動いてくれない。



 暇つぶしに小等部用の教科書を読んでるけど……。


 俺が小学生だったころの内容と比べて難しくなっている気がした。


 義務教育の期間は増えたけど、昔のような高校や大学はないらしいから、中等部までに終える範囲が広くなっているそうだ。


 昔は無かった、魔力・魔法・異世界などの教科が増えたせいで、一般科目の授業内容が難しくなっているようだった。


 疑問点は、午後の診察で先生に聞くとだいたいは答えてくれるし、島松先生が来た時に詳しく教えてくれる。


 人口の推移について詳しく聞いたら、驚きの返答が返ってきた。


 俺の暮らしていた時代から、全世界の人口は半分くらいで、日本の人口は四分の一にまで減ってる。


 日本では、魔力渦がない広い大地を目指し、富裕層が我先にと海外へ移住していった。


 魔力災害に遭った企業も、広い土地を求めて海外へ移転したりで、国内の人口が激減したそうだ。


 国民の多くが海外へ移住してしまうと、税収は減り国の財政はきゅうしてしまう。


 それを救ったのは魔力研究所だった。


 本社が日本にあるから、多くの外資が税金として入ってきて、この国は何とかなっているそうだ。


 魔力研究所が海外へ移転したら、日本は国として相当ヤバそうだ……。




     ◆




 魔力渦が発生すると、”周囲を厚いコンクリート壁で囲うように”と国際法で決まっている。


 魔力渦から魔獣が溢れてきても、市街地に被害が出ないようにする対策だ。


 日本では魔力渦の防御壁の外に、国連軍と自衛隊の駐屯地があり、有事に備えている。



 防御壁の中(異世界を含む)での行動は、すべて自己責任となる。


 一般人で立ち入りが許可されているのは、シーカーライセンス(探索者認定証)持ちだけになる。



 小等部用の教科書とバカにしてたけど……。


 ちゃんと読み込んでみると、この26年で世界が変わり果ててしまったことがよくわかった。


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