第08話 家族の行方



「おはようございます。気分はどうですか?」


「おはよう。いつ動けるようになるのかな?」


「それは今後のあなた次第です。

 このまま順調なら、数日中に拘束の解除も含めて、ご要望に応えられるかもしれません」


「了解だ」



 その後、精神科の先生が来て、俺個人に関係することを話してくれた。


 家族の消息を知ることができたのは嬉しかった。


 両親は実家近くに出現した魔力渦の余波で亡くなっていた。


 遺体の確認はできていないが、生存確認が取れていないから死亡扱いになっているそうだ。


 魔力渦出現時の衝撃波で、周辺の何もかもがちりになってしまう。


 巻き込まれた人の多くは遺体すら残らない。


 運が悪かった。


 と考えるしかないだろう……。


 せめて、苦しまずにけたのならいいのだが……。


 せっかく戻ってきたのに、両親に会えないことが悲しかった。



 俺には二歳年下の妹がいた。


 妹は魔力災害に巻き込まれることなく生存しているようで、結婚して二児の母だと教えてくれた。


 詳細はまだ教えられないそうで、今後の俺次第だそうだ。


 先生たちの考えは、


『暴れるようなら一生隔離する』


 こんなところか?


 家族の情報なんかは、昔の記録をわざわざ調べてくれたんだろうし、虐待を受けているわけではないからジッと待とう。



 先生が帰った後、昨日とは違う動画を見せられた。


 昨日見た動画は、小等部へ入学したばかりの子どもたち用に作られたアニメだった。


 今日見た動画は小等部3年生用のもので、リアルな実写映像だったから驚いた。


 魔力災害の記録映像や魔獣の写真など、グロいものも多かった。


 先生の話しでは、ニュース映像として流れたものばかりで、今の子どもたちは見慣れた映像だと聞き、さらに驚いた。


 魔力渦が出現する瞬間を収めた映像もあった。


 人工衛星が偶然捉えたものらしいが、ほんの一瞬で街が消えてしまっていた。


 内容としては昨日のアニメとほぼ同じで、新情報は関連する法律の話しだった。



――シュッ。


 動画を見終わると、人吉先生が入ってきた。


「早ければ明日にでも拘束を解くことが決まりました」


「それは嬉しい。身体を動かせないのは結構ストレスだわ」


「拘束を解く準備として、身体の自由を奪っている処置を解除します。

 違和感や痛みが出たら、正確に知らせてください」


「了解した」


 突然、背中にズキリと痛みが走った。


「背骨に入れていた神経麻痺装置を解除しました。痛みはどうですか?」


「少し痛かったが、今は全身が痺れている感じかな?」


 その後、10分くらいかけて麻痺解除が終わった。



 神経麻痺装置の話しを聞いて驚いた。


 今回の俺のように、暴れられると困る人にする処置で、背骨に針を打ち込んで、意図的に全身麻痺状態にする装置らしい。


 罪人になった気分だ……。


 後遺症とかの心配をしたら、「何かあっても回復魔法で治ります」と言われた。


 何だかそれは、マッドサイエンティストの考え方に思えた。


 全身の拘束具はそのままだから、感覚が戻ってもまだ動けないが、明日には拘束具も外してもらえるようだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る