第13話 騎士団長って……
もちろん本心である訳は無いのだが、オルベアは斬蔵の言葉を真に受けた様で満足気な笑みを浮かべ、大きく頷いた。するとモーリスがそれを咎める様に横から口を挟んだ。
「オルベア、そんな態度を取るものでは無い。斬蔵殿に失礼ではないか」
「我等騎士団、国の為に命をも投げ出す覚悟。モーリス殿は我々よりその男を頼りにするおつもりか?」
どうも騎士というのはプライドが無駄に高い生き物の様だ。モーリスの言葉に憤りを感じたのだろう、打って変わって不満そうな顔に変わったオルベアがモーリスに絡み出したのをウィリエール王が宥め、レザインは困った顔で斬蔵に頭を下げた。
「斬蔵殿、オルベアの非礼も国を思うあまりの事。ここはどうぞお許しの程を」
「『お許し』も何も別に怒っちゃいねぇよ。そんな事よりクリ……なんとかってのが攻めてくるのは明日なんだろ? 今夜、セレスとエレナはどうする? 一旦学園に帰すか?」
自分の事よりもセレスとエレナの事を気にかける斬蔵を気に入ったウィリエール王は今から聖マリウス学園に戻るより城に居た方が安全だという事もあり、三人に今夜は城に泊まる様に勧めた。
「そうしていただけると助かりますな。救世主とは言え男は男、女子寮に泊める訳にはいきませんからな」
ほっとした様子でモーリスが言うと、斬蔵は惜しそうな顔でセレスを見た。
「えっ、あそこって女子寮だったのか? 嬢ちゃん、そんな大事な事は先に言ってくれなきゃダメじゃないか」
本気で言っているのか冗談なのか……ともかく斬蔵達は今夜は城に泊まる事になり、セレスとエレナを戦争の話に加わらせたくないというモーリスの意によって二人は先に客室へと案内された。
*
「ザンゾーさん、大丈夫かな……」
セレスとエレナが案内された部屋はさすが城の客室だけあって豪華で聖職者のタマゴの二人には夢の様な空間だった。しかし状況が状況なだけにそれを楽しむ余裕などある訳が無く、二人で過ごす夜はセレスにとってもエレナにとっても凄く長く感じられた。
*
長い夜が明けた。うつうつしていたセレスが扉を誰かがコンコンと叩く音にはっとしてドアを開けた。するとそこには優しく笑う斬蔵の顔があった。
「よう嬢ちゃん、よく眠れたか?」
斬蔵なりの気遣いなのだろうが、よく眠れる訳など無い。だが、そんな事を言えば斬蔵に心配をかけてしまう。
「はい。お城のベッドって、ふわふわで凄く気持ち良いんです。とてもよく眠れましたよ」
もちろん嘘だ。その証拠にセレスの目は真っ赤だ。よく眠れたどころかほとんど眠れなかったのだろう。だが、斬蔵はそれに気付かなったのか、或いはセレスの気持ちを読み取ったのか、にっこり微笑んだ。
「そっか。そりゃ良かったな」
口では言いながらも、その目は既に笑ってはいなかった。
「嬢ちゃん、これから戦争が始まる。大人しく隠れてるんだぞ、扉にしっかり鍵をかけてな」
セレスの身を案じて言う斬蔵だが、部屋に立て篭ったところで城が燃やされてしまえば意味が無い。とは言えそれは学園の寮に戻っていても同じ事。城に居る方が危なくなったら助けに行きやすいだけマシかもしれない。斬蔵は不安そうな顔のセレスの頭にそっと手を置き、口元に笑みを浮かべた。
「そんな顔すんじゃ無ぇよ。俺は救世主様なんだぜ、この国はしっかり守ってやるから心配すんな」
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