愛の優先順位
【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名
(一)
「ねえ、私のも拭き取ってよ」
まだベッドの隣の息の荒い女からそう言いわれ、巨勢は「自分で拭けよ」とぶっきらぼうに言い、ティッシュを部屋の隅のゴミ箱に向かって投げた。
巨勢がバスルームに向かおうとすると、「来週ね、木曜日は、会えないかも」と女の言葉を背中に受け取ったが、そのままガラス張りのドアを開けて「知ってる」とだけ言って中に入ってシャワーを浴びた。
(続く)
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