真剣な話には笑いがつきもの 9ページ目

「リアコン王子が反対する理由は何かな?」


「僕たちは教わる立場なんですから、生徒が教師を処罰するなんて、おかしいに決まってるじゃないですか」


「なるほど、リアコン王子という名前は認めるのね」


「い、いえ、そういうことではなく──」


「この学園の方針に『より良い学び舎』というのがあるでしょ? つまりね、その方針に反する教師がいてはならないのよ。だって、教師のための生徒じゃなく、生徒のための教師であるべきだからね」


「そ、それはそうですけど、で、でもっ」


「ふぅー、それなら逆にリアコン王子に質問です。教師とは、生徒たちの人生に責任を持っているのですか? すべての教師がそうとは言えないけど、中には自分の私利私欲のため、教師という立場を悪用する人もいるんじゃないですかっ? パワハラは、生徒に対してもあってはならないのですよっ」


 決まった──華麗な名言が今ここに誕生しました。自分で言っときながらなんですけど、この言葉はカッコよすぎます。これは今年の流行語大賞を狙えますね。


 あぁ、ずっとこの余韻に浸っていたいよ。なんだかやり遂げた感満載で、思わず笑顔がこぼれちゃいそう。


「あの、西園寺会長、どうしてニヤニヤしてるんでしょうか?」


「何を言ってるのよ、このリアコン王子。私がニヤニヤしてるだなんて──」


「サキも、朱音会長がニヤニヤしてるように見えるのだー」


「なるほどー、ツンデレ会長は自己陶酔するタイプなんですね。これは大スクープだよ」


「どうせ、カッコイイこと言っちゃった、とか思ってるだけかとー」


 はうっ、奈乃ちゃんに心を読まれてるし。


 ということは、ニヤニヤしてるのも事実ってことなのねぇぇぇぇぇぇ。


 不覚──顔に出てしまうだなんて、一生の不覚なんだからっ。なんとかして、この場を誤魔化さないと……。


「こ、これはわざとよ、わざとニヤニヤしたんだからっ。別にカッコイイこと言ったとか、そんなことは微塵も思ってないもの。で、でも、ほんの少しだけ、自分に酔ってただけ、だよ」


 ふふふ、見てよ、この完璧な誤魔化し具合。


 これで私の面目は保たれたはず──なんだけど、みんなの顔が少し変だよ。


 口元に手を当てながら、私に向ける視線はどこか温かさを感じるし、そっか、そういうことね。これは、幼子が無邪気に遊ぶ姿を微笑ましく見守るような──。


「って、なんで、みんな笑っているんですかぁぁあぁぁぁ」


「朱音先輩があまりにも可愛すぎるからですー。これは写真に撮れば高値で売れそうですねー」


「こんな会長の一面もあっただなんて、ボクは尊死しちゃうよ」


「なのちゃん、写真撮ったら、こっそりサキに売って欲しいのだー」


「さ、西園寺会長の、ぷぷ、言いたいことは、ぷっ、わかりまし──」


「リアコン王子のくせに、笑いながら喋るなぁぁぁぁぁぁぁ」


「ぐはっ」


「きゃー、私の陽琥君がー」


 ──はぁ、はぁ。


 つい、特大のビンタをお見舞いしちゃったよ。

 でも私は悪くないもん。笑った管君がいけないんだもんっ。


 まったく、なんで笑うのよ、ばかっ。

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