9-11
その日は大森林と川を挟んでの一進一退の末、日が暮れると一様に撤退していった。
薄暗い森の中なので夜の間に戦うのはお互い無理なのだろう。
日が暮れてしばらく経ったタイミングで南に行っていた米軍の2人が戻ってきた。
「ロードオブザリングみたいだったな」
そう言い放ったカストロ中尉に木栖が「どの辺が?」と問う。
「剣と弓とプレートアーマーを主体としつつ、俺たちには理解しがたい方法で突然火が出てきたり雷が落ちたりするところが実にファンタジーだった!」
「船の速度も手漕ぎの割にずいぶん早かったしな」
陸軍所属であるはずの准将の言葉に木栖が「手漕ぎ船に明るいんですか?」と問えば「カヌーが趣味でね、専門家ではないが多少はわかるつもりだ」と告げる。
確かに現代地球人で手漕ぎ船の速度が分かる人などそう多くないだろう。
「成人男性が4~5人乗れるサイズの木造の川船、川の流れが緩いとはいえ流れに逆らう形だと考えると漕ぎ手がひとりというのは無理があるように思えたがそれでも対応できてるというのがな」
「おそらく魔術で身体強化してるんでしょう、この世界の人間はみんな魔術による身体強化を普通に施していますからね」
「興味深いな」
それと映像では分からなかったが、どうやら金羊国側ではナイフや石を用いて水中から船に穴をあける工作をする人員を一定数用意していたらしくこれも効果があったと言う。これは木造船ならではだろう。
体を洗いたいという2人を井戸のほうに見送ってしばらくすると、ラドフォード中尉が戻ってきた。
「死ぬかと思った」
「お疲れ様です、いまポアロ大佐お呼びしますね」
ラドフォード中尉は小型カメラを事前に森の各所に設置し後日回収するという形をとったので、映像はSDカードに記録されたものをポアロ大佐にお渡して分析してもらう形になる。
俺は3階からポアロ大佐を呼び出すと、二人の会話を聞くことが許された。
「現地に行って分かったことはありますかな?」
「弓の有効射程範囲がおかしい、150メートル先にいる俺を狙って弓を当てに来てます」
「飛ばすだけなら不自然な距離ではありませんね?」
「その場合なら弓の先を少し上に向けて射るはずです、しかし彼らはまっすぐに俺のほうへ矢を向けてきた。
あれは150メートル先からでも俺を殺せるという根拠を持った行動です」
米軍の2人からは聞けなかった話だ。
「弓って150メートル先の人も狙って射抜けるものなのか?」
「たぶん無理だと思う。防大の弓道場が90メートルあったが慣れてる奴でも普通の弓道場より大きいとかで外してることが多かった。拳銃でも150メートル先は無理だ」
木栖のその言葉に茫然とする。
拳銃より飛ぶ弓ってなんだそれ、と言いたくなるが何も言えなくなる。
そんな俺の気持ちを差し置いてポアロ大佐は「西の国からは完全に敵と認識されていますね」とつぶやく。
****
その日の夜更けのことだった。
金羊国はグウズルン情報管理官の部下を主体とした遊撃隊による夜襲を敢行。
夜の砦を守る兵士を襲撃し、建造物や武器の破壊し、砦の備蓄品の持ち去り、獣人奴隷たちの金羊国側への連れ去った。
それを俺たちが知るのは翌朝、自動運転で飛ばしていたドローン映像を見てからのことだった。
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