9-6

まだ夜も明けきらぬ早朝、大使館のドアを蹴破らんばかりの勢いでグウズルン情報管理官が「起きろ!話がある!」と飛び込んできた。

眠たい目をこすりつつ木栖と二人で出迎えると美しい白獅子の獣人は鬼の形相で俺たちをにらんでいた。

「昨晩、日本側から軍人の入国があったと報告があった」

「ぐんじん……」

寝ぼけた頭でぐるぐると記憶を掘り返して思い出す。

「ああ、そういや観戦武官が来るって話だったか」

木栖に確認すると「そうだったな」と思い出す。

そういえば金羊国側に観戦武官がくる話してないな?というか観戦武官って言葉あるのか?

「正規の入国手続きなのは間違いないけどこのタイミングなんで身柄確保させてもらってるんだが、事情を説明してもらおうか?」

金羊国側が押収してきたらしい書類を木栖に見てもらうと正規の辞令だ、と耳打ちが来る。

(まずい、これ俺たちが西の国側に協調してなんかやると思われてるな)

こういう時やれることはひとつ。

「……俺のミスだ」

さっと正座になり首を差し出すポーズをとる、これはこの世界における土下座に該当する最大限の非礼を詫びるときのしぐさである。

「説明してもらおうか」

木栖による観戦武官について説明のあと、この世界に観戦武官に該当する概念が無いというところに思い至らず俺が報告せずにいたことで金羊国側に余計な不安を与えたことを詫びる。

「2時間後に政経宮にきてハルトルとファンナル隊長に同じ説明をしてくれ、駐日大使館のロヴィーサに今問い合わせさせてるから確認が取れ次第大使館にお返しする」

グウズルン情報管理官の絶対零度の目を浴びながら大使館を去っていく。

足音が聞こえなくなると「真柴、」と声をかけてくれる。

「俺もそこに思い至らなかったから俺の過失でもある、気にするな」

「……悪い」


2時間後、ハルトル宰相とファンナル隊長のいる政経宮の大会議室へ赴くとふたりは不安な表情で俺たちを見つめてきた。

例えるなら迷子になって親を探す子供に似た目つきである。信じていいのかという不安を隠しきれないそのまなざしに俺の良心が痛む。

その中にはグウズルン情報管理官やエルヴァル物流担当の猜疑心を隠さない目やクワス教育統括官のまだ混乱しきったまなざしが並ぶ。

「この度は俺の過失によりご迷惑をおかけしました、事情を説明させていただきます」

俺と木栖で出来る限り丁寧に観戦武官の概略と今回の過失についての丁寧な説明を行うとハルトル宰相は「信じていいんですね?」と聞いた。

「はい」

とにかくこの件については俺のミスなので詫びるほかない。

関係者からの質問にも誠意をもって答えていると、会議室にノック音が響くとロヴィーサ駐日大使が現れた。

「確認が取れました、彼らは敵ではなく今回の戦の見学者だそうです。武器も正規品、身元も問題ありません」

その一言で場の空気が緩むのが分かった。

ハルトル宰相がロヴィーサ駐日大使から資料を受け取って黙読ののち小さくため息を吐いた。

「観戦武官の入国及び観戦記録活動を許可します。今回の件については日本及び地球側にもしっかり報告させていただきますので、次からは同じことがないようにお願いしますね」

「……寛大なお答えに感謝します」

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