2話目
ある所に優しい神様がいました。
神様は温厚で情にあつく、人間らしい神様でした。
そんな神様の元に、ある日突然人の子が現れて嫁いできたと言いました。
「本日よりお側に置いて頂きたく嫁いで参りましたサシェと申します。」
「…は?」
神様は口をぽかんと、あけてその小さい人の子を見つめます。
「……本日!より、!」
人の子は自分の声が小さかったのかと思い直し、一言一言大きくはっきりと叫びました。
「あのね、君の声が聞こえなかった訳じゃないんだよ!大声だされたら私が耳の遠い老人みたいじゃない!」
その声に驚いたのは神様です。
慌てて人の子の口を覆い、大きな声を出すのをやめさせました。
「んんん!(離せ変態!)」
「……酷いっ!」
初対面から容赦のない様子に神様は泣き真似をしてみせました。
「…? では何を?」
「何を?はこちらのセリフだよ」
呆れた神様はため息をついて人の子に問いました。
神様には人と契る趣味もなければ、誰かを娶る必要もないのです。
それをよりにもよって子供を騙くらかし、神が稚児趣味であるような村の態度に神様は、少しばかり落ち込んでいました。
もともと人々からはあまり好かれていないとはいえ、これでも世界を見守ってやってきているのです。
…そんなに嫌われていたのか。
神様は人がいいので、悲しい気持ちになりました。
「嫁ぐって……君はいくつ?」
「先日7歳になりました。」
指折り数えた細い指を見せつけてて、人間の子は何故か自慢そうに言い切ります。
その身体は細く、とても7歳には見えません。
綺麗に身を整えられているのに、白粉は多すぎて死人のようであるし、紅は赤すぎて痛々しく。
着ている衣も村で上等の物ではあるものの、人間の子には大きすぎて布を纏うよいうよりも、布が動いているようです。
神様うーんと、首を捻りました。
ここ最近は気候も良いのに、なぜこの子供を送り込んできたのか想像もつかなかったのです。
それからしばらくお互いに黙ったままで時間が経ちました。
「そう、……そっちの世界は随分と悪趣味な婚姻を結んでいるんだね」
神様はできるだけ言葉を選んでそういいました。
おそらく幼い人の子にはわからないだろうと思いながらも言わずにはいられなかったのです。
「……器にもならないだろうに」
人の子の頭を撫でながら神様はぽつりと言葉を落としました。
「……? 私はもとより器ではございません!人間でございます」
その言葉に神様はきょとんと、人の子をみつめました。
人の子は胡散臭そうな目で神様を見ています。
それから、神様は盛大に吹き出して笑い出しました。
「っは!ははっそうだね、そうだ!忘れていたよっ…」
高そうな絹の袖で目尻を拭い、その無垢な頭をぐりぐりと撫で付けます。
「お前…サシェと言ったか?サシェは賢いね」
突然褒められたサシェは首を大きく捻りました。
「神様?…今なにか、誤魔化されましたか?」
サシェの頭を撫でる手を捕まえて、サシェは問いかけました。
その目は神様を見透かそうとする強さと澄んだ色をしています。
神様は目を眇めてから、まなじりを和らげてサシェの乱れた髪を整えてやり、言いました。
「さてね、お前にはまだはやいよ」
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