第164話 ゴブリン討伐 2

 雑魚はいつの間にか隊員達がすべて倒していた。残るはゴブリンロードのみ。


 ――グギャオォォー!!


 ゴブリンロードが雄叫びを上げる。

 どんどん矢を射る隊員達。肩に当たり、足に当たり、確実に動きを奪っていく。


「ハル、ウインドカッターやってみるか?」

「ん、りひと」


 そうだね、ハルさん。まだ何もしてないからね。


「ういんろかったー」


 風の刃が空を切り、ゴブリンロードの腹を斬りつけた。


 ――ギャァァー!!


「ありゃりゃ」

「アハハハ、腹じゃだめだ。ハル、首を狙え」

「おう、ういんろかったー!」


 またハルが風の刃を飛ばす。今度はゴブリンロードの首を刎ねた。


「よし! ハル、上出来だ!」

「うげげ」

「ハルちゃん、首チョンパやん」

「見事だわ」


 ハルちゃん、ちょっと嫌だったみたいだぞ。首が飛んだからな。


「後始末するぞー!」

 ――おう!


 エルフ達が皆、木から降りた。

 巣の中程に土魔法で地面に穴を掘り、ゴブリンの死体をまとめる。


「みんな触りゅの嫌しょうら」

「だってハルちゃん、臭うでしょう?」

「ん、くちゃい」

「な、めちゃ臭いな」

 

 ハルにカエデとシュシュは呑気なもんだ。


「いいかー? 燃やすぞー!」

 ――リヒト様! オッケーです!

「よし! 結界張るから離れてくれ!」

 ――了解です!

「フレアー」


 リヒトが超高熱の炎で巣を焼き払うと同時に巣を囲む様に結界を張った。結界の中で炎が燃え上がり死体や小屋も焼き尽くしていく。


「周りの木が燃えない様に、結界を張って小屋や死体も纏めて一気に焼いてしまうんだ」

「イオス兄さん、凄いな」

「リヒト様は凄いだろう?」

「うん、別格や。軽く魔法を使ってるもんな」

「ああ。最強の5戦士の1人だからな」

「スゲーな! リヒト様は剣のイメージがあったんやけど魔法も凄いんやな」

「アハハハ! どーよ!」


 リヒト、ちょっと自慢気だな。カエデを見てリヒトが言う。


「カエデ、1度タグ見てみるといいぞ。魔力が増えていそうだ」

「え、そうなん?」

「ああ。カエデはまだまだ伸びるだろう。マメにチェックするといい」

「うん、リヒト様。分かった」


 以前はまったく魔法が使えなかったカエデ。今では、剣に風属性を付与する事もでき、今日はマジックアローも使える様になった。これは、凄い進歩だ。カエデの努力だ。


「かえれ、えりゃい」

「ホンマに? ハルちゃんありがとう! イオス兄さんのお陰やわ!」

「カエデは素直ないい子だな」

「え、イオス兄さん。急にどうしたん?」

「素直にありがとうって言えるのは良い事だぞ」

「イオスの言う通りだな」

「そうですね、カエデは良い子ですね」

「リヒト様、ルシカ兄さんまで。そんな褒められると照れるにゃ〜ん。恥ずかしいにゃ〜ん。嬉しいにゃ〜ん」

「アハハハ! それ、久しぶりに聞いたな!」

「ああ、カエデらしい」

「ホント、良い子だわ」


 カエデもまだ10歳だ。このまま歪まず素直に育ってほしい。このメンバーといれば大丈夫だろう。



「ハルちゃん、お帰りなさい」

「ばーちゃん、たらいま」

「ハル、風呂行くぞ」

「ん、りひと」


 相変わらず、2人一緒に風呂へ入るらしい。が、今日は討伐に参加していた隊員達もゾロゾロと着いて行く。


「カエデもお風呂にいってきなさい」

「ミーレ姉さん、自分はいいよ。大した事してへんし」

「何言ってんの! ゴブリン討伐してきたんだからお風呂に入って臭いをとってきなさい!」

「カエデ、いってこい。俺達も皆入るから」

「え……イオス兄さん、自分臭い?」

「ま、多少はな」

「臭うわよ」

「ミーレ姉さん、マジ!?」


 カエデもバタバタと風呂場に向かった。


「シュシュ、あんたもよ」

「え!? あたしはいいわよ」

「何言ってんのよ」

「シュシュ、入りましょう」

「おう、行くぞ」

「ルシカ、イオス! あたしはいいの!」

「駄目よ!」

「駄目です」

「無駄な抵抗だな」


 ルシカとイオスに引き摺られながらシュシュも風呂へ向かった。ゴブリン討伐に参加した皆がベースの裏に併設されている露天風呂に入っていた。


「何これ! 露天風呂なんてあんの!?」

「シュシュ、流すぞ」

「イオス、だからあたしは……」


 ――バシャーン!


「ブハッ! やだ! 嫌なのよ! あたしお風呂なんて入った事ないんだから!」

「おや、そうでしたか」

「虎は風呂嫌いなのか?」

「あたしはクリーンでいいのよ!」


 ルシカとイオスが2人掛りで有無を言わさず、シュシュをガシガシと洗い出す。泡まみれのシュシュ。


「やだー! ルシカ、イオス、やめて!」

「駄目ですよ。ほら、動いたら泡が目に入りますよ」

「シュシュ、動くなって」

「あぁぁー!!」

「アハハハ! シュシュは風呂が駄目なのか?」


 リヒトや他の隊員達に笑われてしまったシュシュ。


「風呂は気持ちいいじょ~」


 ハルは大人しくリヒトに頭から洗われている。ちょこんと風呂場にある木の椅子に座って洗われている。全体的に丸いフォームがなんとも可愛い。


「ハルちゃん、泡だらけね」

「しゅしゅもな」


 ――バシャーン!

 ――バシャーン!


「ブフッ! だから、イオス! お湯かける時は言って! ルシカ! あたし心の準備するから言って!」

「アハハハ! 情けねー! よし、ハルいいぞ」

「ん。りひと、背中」

「おう」


 リヒトが自分の頭をワシャワシャと洗っている。ハルはそのリヒトの背中をゴシゴシと洗う。


「やだ、ハルちゃん。可愛い! お尻がプリップリじゃない」


 ――バシャーン!


「イオス! やめて! お湯が目に入っちゃうわ!」

「もう、少し流しますよ。泡が残ってますから」

「えぇー! ルシカー!」


 ――バシャーン!


「よし、りひと。いいじょ」

「おう、さんきゅ」


 リヒトが頭からお湯をかぶる。


「よし、ハル。入るか」

「ん」


 リヒトに抱っこされ湯船に入るハル。


「ふゅぅ〜、気持ちいいな」

「おう、ベースの風呂が1番落ち着くな」

「ん」


 ――バシャーン!


「シュシュ! 飛び込むんじゃねーよ!」

「ウフフフ、笑った仕返しよ。ふぅ、いいお湯だわ」


 シュシュも湯船に入って顔だけ出している。


「らろ? 気持ちいいらろ?」

「ハルちゃん、ホント小ちゃくて可愛い。食べちゃいたいわ」

「え……」

「食べないわよ」

「ふゅぅ……」


 風呂場でも賑やかな虎だ。

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