第3章 おりぇ、ヒューマンの国に行っちゃったよ!
第46話 キレちゃったよ
さて、令嬢を送る為に出発する日になった。しかし、また一騒動起こっている。
「私は伯爵令嬢なのよ! 馬車はないの!? 馬車を用意しなさいよ!」
「ですから、馬車だと大森林を抜けるのに日数が掛かりますので。魔物も出ますし」
「嫌よ! 馬になんて乗れないわ!」
令嬢が両手を腰に当てて、ユニコーンに乗るのが嫌だと言い張っているんだ。
乗せるユニコーンも嫌そうだが。『え、こいつヒューマンじゃね?』と、でも言いたそうだ。
「りひと、ろーすんら?」
「ハル……もう俺、嫌だよ」
そんな事を言っていても仕方がない。
「リヒト、どうした?」
天の助けか? 第1皇子のレオーギルが見送りに来たのか現れた。令嬢がロックオンしていた皇子だ。
「レオ様! やはりレオ様来て下さったのですね!」
令嬢は皇子の元へ擦り寄って行く。
「リヒト、どうした?」
おや、令嬢を身体ごと避けてスルーしたぞ。
「彼女が、ユニコーンに乗るのは嫌だと言い張って困っているんです」
「そうか、ならもう1人で帰ってもらおう。私達が送る義理はない」
「え……レオ様?」
「何度も言うが、君に愛称で呼ばれる筋合いはない。やめてくれないか。サッサと1人で帰るか、それともリヒト達に頼み込んで送ってもらうか。君が決めなさい」
「え……あの、私……伯爵令嬢ですのよ?」
「それがどうした? この国では関係ない。あったとしてもリヒトは皇族だ。伯爵令嬢等、足元にも及ばない。それともたかが伯爵令嬢が、国の第1皇子である私と皇族であるリヒトに無礼を働いたと大公国の大公へ正式に不敬罪を申し立てようか?」
「え……あの、ですから」
「ああ、リヒトもう良い。サッサと1人で帰ってもらおう」
「そんな! 酷いです! 大森林に放り出されたら私、どうやって……」
「そう思うのなら大人しく言う事を聞きなさい! 私達は君を送る義理はない! オークの集落から救い出して保護してやったんだ。命を助けてやったんだ。それだけで充分だろう? 自分の立場を理解しなさい!」
ああ、第1皇子。よっぽど付きまとわれて堪えていたのだろうか? 普通に話しても無駄だと割り切ったのか? しかし、実際リヒト達が送り届けないといけない理由はない。
「伯爵令嬢らっけ? お前身分を分かってないんじゃないか? たしか、伯爵の上が侯爵らろ? その上が公爵ら。りひと達皇族はその上らぞ。そりぇに、助けてもりゃっといてその態度はないよな? どうすんら? 1人れ帰りゅか? 魔物が出りゅ大森林を何日も歩いて帰りぇりゅか?」
黙りこんだ令嬢。分かったのか?
「何を言ってるのかさっぱり分からないわ!」
ああ、分かっていなかったー!
「リヒト、かまわない。もう、大森林に放ってくると良い」
「レオ殿下、しかし……」
「でも! でも申し訳ありません! 私よりずっと身分が上の方だと言う事はわかりました! それに、大森林を私1人で抜けられる筈がありません! なので! 大変申し訳ありません! 家まで送って頂けないでしょうか!?」
おや、分かったみたいだな。
「リヒト、これを彼女の父親に」
第1皇子が手紙をリヒトに手渡した。
「分かりました」
リヒトが令嬢に向き合う。
「今後は俺達の言う事を聞いてもらいます。聞けないのなら、そこから1人で行ってもらいます。良いですね?」
「そんな! 横暴だわ!」
「じゃあ、どうぞ1人で帰るがいい」
「帰れる訳ないじゃない!」
「だから! 俺達はお前を送る理由がないのに送ってやるんだよ! まだ分からないのか?」
「何で送る理由がないのよ!」
また、堂々巡りだ。
「俺達は君を助けたんだぞ? 俺達のせいで攫われたんじゃないだろう? 何で俺達が送らないといけないんだ?」
「だって、大森林なんでしょ? 送ってくれなきゃ帰れないじゃない!」
「それが送ってもらう態度か? 迷惑ばっかかけてまだ勝手を言うなら1人で帰ればいいんだ。俺達も面倒が無くなってその方がいいよ」
「だから、1人で帰れないと言ってるじゃない!」
ああ、また最初に戻ってしまった。
「ですから……」
そしてまたルシカが最初から順に噛み砕いて説明した。出発しようとして小1時間はたっただろうか? 流石にハルもリヒトや第1皇子と一緒に疲れている。
そして、また何時ぞやか見た……令嬢の土下座だ。納得すれば素直に謝る事は出来るのだ。もっと、理解力……いや、謙虚になる事、頭を使う事を勉強するといいのだが。
「大変申し訳ありません! 第1皇子殿下にも失礼の数々をどうかお許し下さい!」
「もう、いいからサッサと帰って下さい。リヒト、ルシカ、すまないが頼むよ」
ああ、第1皇子が投げやりだ。いや、疲れている。
そして、やっと出発できた。リヒトのユニコーンにはハルがちょこんと乗っている。そして1番の貧乏くじはルシカだ。前に令嬢を乗せている。ミーレと、今回はイオスも同行する。皆、無口だ。何故なら、令嬢が煩いからだ。
「何で馬が飛んでるのよ! 怖いじゃない! 降りて! 降りなさいよ!」
もう説得は諦めた様だ。皆無言で先を急ぐ。とにかく、ベースまでは行かないと。そこで馬車に乗り換える予定だ。
ハルがエルフの国に来た時よりもずっと早くユニコーンは大森林を進む。ユニコーンも早く降ろしたいと言わんばかりに急いでいる。
「キャハハハ、超はえー!」
ハルは1人無邪気だった。
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