ちびっ子転生者は手に負えない!〜転生したらちびっ子だったけど、聖獣と一緒にちゅどーん!する〜

撫羽

第1章 おりぇ、ちびっ子になっちゃったよ!

第1話 食べれゆ?

 ――――バキバキバキ

 ――――ドゴーーンッ!!


「ぅおッ!! なんだなんだッ!?」


 夜明け前の静かな森で、突然の轟音と地響きに驚いて飛び起きたイケメン。

 少し耳が尖っている……もしかして、エルフか?


 白く透き通った美しい肌、絵筆で描いた様な長いまつ毛の向こうにはブルートパーズに金が混じった様なブルーゴールドの瞳。

 ブルー掛かった金色の絹糸の様なブルーブロンドの髪。その髪を細かく編み込みポニーに結んでいておしゃれっぽいヘアバンド(紐)までしている。今、寝ていただろうにヘアバンド(紐)……もしかして、ドレッドっぽくしているつもりなのか?


 結んだ先の髪は編まずにそのままストレートのポニー。編み込まなければきっとサラサラストレートでエルフ特有の綺麗な髪だろうに……もしかして、ちょっと変わり者ってヤツか? それともオシャレなのか?



 まだ夜行性の獣や魔物だけが活動している様な、夜明け前の薄暗い静かな闇が支配する大森林の中。突然の轟音と地響きで、木の上で寝ていた鳥達が驚いて飛び立っている。


 ここは、大陸の中央。広範囲に広がる大森林。『ヘーネの大森林』と呼ばれている。

 大森林の五芒星の頂点の位置におかれているエルフのガーディアンの砦、ベースと呼ばれる拠点だ。

 ガーディアンとは、その名の如く大森林の守護者だ。


 ・大森林の魔物の討伐、調査

 ・大森林の自生植物や獣の管理、保護、調査

 ・大森林の異変の有無の監視、調査

 ・大森林に出入りする者の管理等


 その役割は、多岐に渡る。

 

 何故、エルフがガーディアンを担っているのか。それは、この『ヘーネの大森林』の奥深くにエルフ族の国があるからだ。

 もう1つ理由がある。『ヘーネの大森林』は奥に行けば行く程魔物が強くなる。

 ヒューマン族(人族)ではそんな魔物には対抗できない。頭脳、身体能力、魔力等あらゆる点においてエルフ族はヒューマン族を大きく上回る。まるで、別次元だ。

 何より、森と共に生きてきたエルフだからこそ、ヒューマンでは察知できない事でも気付く事ができるからだ。



「リヒト様!」


 慌てた様子で、部屋にやってきた男性。また耳が尖っている。が、少し肌が浅黒い。


 ダークブルーブロンドの髪にダークブルーの瞳のイケメン。肌は先のエルフより少し浅黒い。ストレートの髪を後ろで1つにきっちりと編んでいる。

 キチンとさんか? もしかして、ダークエルフか?


 先のドレッドヘア擬きのイケメンエルフ。どうやら名前はリヒトと言うらしい。

 まあ、エルフ族は総じて美男美女だと言われている。


「おう! ルシカ、今の何だ?」


 ダークエルフはルシカと言うらしい。言葉遣いが違う。

 もしかして、主従関係ってヤツか?


「何があったのかは分かりません! しかし、森の中で土煙がたっています。あの場所で何かあったのでしょう。出られますか!?」

「ああ、もちろんだ! 何があったのか確認しないとな!」


 話を聞きながら着替えを済ませたリヒト。ルシカを連れて森に入って行く。

 その2人が乗っている白馬は何だ!? 額に角があるぞ? もしかして、ユニコーンぽい馬か何かか?

 しかもその馬、空を走っている!? 飛んでいる!? 翼はないのに……木々の間を疾風の様に走り抜けて……いや、飛んで行く。理解不能。


 暫く2人が大森林の中を進むと、大きな魔物が倒れているのが木々の間から見えてきた。


「おいおいおい! あれは超大型じゃねーか!!」

「リヒト様! あまり近寄ると危険です!」

「いや、あれはもう生きてねーよ」

「は? 何があったんでしょう?」

「さあな、調査しないとな」


 そう言って、超大型と言った魔物の直ぐ側に降り立った。


「えッ……!?」

「はぁ……!?」


 2人が同じ場所を見て固まっている。と、言うよりも訳が分からず反応できないと言う方が正解か。


「ちょ……!! お前! 大丈夫か!? 怪我はないか!?」

「え? どうしてこんな所にいるのですか!?」


 ちょっと口の悪い方が、リヒト。

 こんな時でも喋り方を崩さないのが、ルシカ。

 性格がよく分かる。滲み出ている。


 2人が驚いて反応が遅れたのも無理はない。超大型の魔物が息絶えているその側には、小さな男の子が地面にペタンと座っていた。

 しかも、超大型の魔物をそこら辺で拾ったであろう細い木枝でツンツンと突いている。

 男の子が2人に気付いた。



「あぁ?」

「あぁ? じゃねーよ! お前何してんだ!? 大丈夫なのか!」

「おっしゃん、こりぇたべりぇゆ?」


 魔物を木枝で指しながら何か言っている……

 もしかして、その木枝はお気に入りか? かっちょいい小枝なのか?


「あ?」

「たべりぇゆ?」

「はぁ!?」


 訳の分からない事を言って小さな男の子は気を失いポテンと倒れた。


「おいッ!!」


 リヒトが慌てて男の子を抱き上げる。


「リヒト様、どうしてこんな場所に!?」

「さあ、訳が分からん。怪我はない様だ。とにかく、連れて帰ろう。ルシカ、魔物を頼む」

「はい、承知しました」


 ルシカが超大型に近寄り、腰のベルトに付けていた小さなポーチの被せを開けた。

 すると、ヒュンっと魔物が小さなポーチに吸い込まれていく。

 これは、お馴染みのマジックバッグてやつだ。

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