013/実戦
束縛。
惨殺。
焼殺。
沈黙。
幽世の中で唐突に起こった遭遇戦。
訓練を終え、実際に上手く連携できるかを試しにやってきた前回と同じ場所。
実入り的にはなんとも言えないが、安全性をある程度保証できる場所として選んだ場所。
其処にあったのは。
「――――ふぅ。」
目の光を失いながら、全てを惨殺する少女の姿。
最前列に立ち、全ての攻撃を受けつつ執拗に斬り刻む姿。
つい数年前にも見掛けた、特殊な状態に陥っているような顔。
ただ、彼女自身に感じる物は今の所見当たらず。
つまりは後天的に何かがあった、と考えるのが一番適当で。
(またかよ!!!!!)
内心でそう叫んだのは悪くないと思う。
出会い方といい、能力的に優秀なことといい。
恐らくはヒロイン方面のキャラだとは思ってたけど!
知らねえぞこんなパターンで出会える美人寄りのヒロインキャラ!
原作まんまのキャラ何処だよ!
あ、白の外見は除く。
「……終わったかの。」
「……です、ね。」
まあ、心の中で叫ぶだけで実際には顔には出さないように努力したが。
ただ、二人も呆然としてる。
(……二人も何だかんだ動いてはいるんだけどな。)
周囲に木々が生えているのもあって、それを利用して飛び跳ねて首を狙った白。
対象が弱い……余り警戒する必要もない妖だったのもあって。
軽い呪法のみで焼き払ったリーフ。
誰が一番仕事をしていないか、と言われれば多分俺か。
……束縛陣ばっかり多用しちゃってるな。
デバフ入れる相手じゃないのは分かってるが。
「……ただ、あそこまで暴れられると連携も何もないな。」
俺達の連携は前提として一人が全員を薙ぎ倒す、というモノではない。
無論それを根底に置く部隊もあるだろうし、そう構築するプレイヤーも居る。
ただそれが許されるのは『
誰かという起点が倒れたら終わり、という編成が許されるわけではない。
特に今は『復活』という手札が取れない。
それが開放されたからと言って、起き上がり小法師のような戦闘が許容されるかは別として。
それを強く体感して、二人にはそれを強く頼み込んで数年間鍛え上げてきた。
だからこその感想。
「へ。」
その言葉を聞きつけてか。
当人がとてとてと近寄ってくる。
「な、何か間違ってました!?」
「間違ってたっていうか……なぁ。」
あ、棘の罠です。
みたいじゃの。
そんな会話が少し離れた場所で行われ。
瘴気箱の解錠が進んでいく中だと。
俺と伽月だけがやることがなく、話を出来るのも俺達だけという状態。
……彼奴等、俺に任せて逃げただろ?
まあ、致し方ない部分もある。
その辺りを担当するのが俺の役割でもある。
だから、少しだけ話をする。
本格的な話は後回しにするしかないけれど。
今言って、少しでも変化があるのかの確認をする。
「自分の意志はあったか?」
「へ?」
先ずはリーフと同種でないことを確定させる。
少なくともあんな変化は幽世に入ってから。
妖を相手にしているから発生した、という線はこないだの白の件で消える。
だとすると、考えられるのは……瘴気に対して反応してしまうのか。
或いは、何かが植え付けられているのかの何方かだと思う。
「戦闘中、何を考えて動いてたか……と言い換えてもいい。」
「な、何を……ですか。」
これも隠すとは言わないでくれよ。
そうなるとちょっとどころじゃなく面倒になる。
「はっきり言っちゃえば、俺達の部隊の連携が完全に消える。」
伽月が正式に入ることになれば幾つかは消えるのは覚悟していたが。
あの動きをされると、二人で動くやり方でさえ横入りされてそこで脚が止まる。
戦闘中に行動を失敗する、というのは許容できることと出来ないことがあって。
回避された、という事と――――仲間の行動で動けなかった、では天地の差が生じる。
其処を治せるのかどうなのか。
その第一歩となるわけだが。
「一人で戦ってる時の動きに身を任せていたのか?
或いは俺達の動きを見間違えて動いたのか?
それとも……気付いたら戦闘が終わっていたのか?」
先ず二番目の選択肢は無いと分かっていて、口にする。
そして最後の場合はもう少しイベントを……彼女の内心を深掘りしないと信用できない。
何となくではあるが、最初の選択肢と最後の選択肢が混ざっている予感がした。
「…………すいません。 あの程度なら真正面から一人で対応できたので。」
「幽世に踏み込んだ事はあるんだよな?」
「はい。 ……その、一人でですけど。」
まあそれは想定してた。
聞く限り、兄弟子やら師匠とは差が凄そうだし。
どっちに付き従ってもバランスが取れていないようだったし。
……ああいや、師匠は兄弟子に付きっきりだったと考えたほうが良いか?
実際詳しい事情を全く知らんから想像に過ぎないけど。
「……ならまあ、次の時は声を出して動いてくれるか?
それなら多分俺も対応できる。 指示に徹する事にはなるが。」
「わ、分かりました!」
俺が言える立場でもないんだけどなぁ。
「改めて言うけど、戦力としては期待してる。
俺じゃ前衛として色々足りてないしな。」
「はい……。」
しょんぼりとした顔を見て、何とも言えずに顔を逸らす。
二人へ目線をやれば、肩を竦める白が映った。
リーフは申し訳無さそうな表情を浮かべている。
……あの式、絶対後でしばき倒す。
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