010/流派
結局教えるか教えないか悩む事少し。
その間に二人が起き出してきて、今朝方の会話を簡単に説明することに。
ただ、目的の部分を伏せて。
俺が聞けたのは目的の不一致を避けるためであり。
飽く迄『信頼したから明かした』と言う形ではなかったからだ。
「ええっと……こんな感じです。」
但し、能力に限っては全員で見せ合う。
手札がどうなのか、何が出来るのか。
最低限知っておかなければフォローも指示も出来たものじゃない。
なので、”仲間になる”と宣言した時点で此処までは既定路線だったわけだが。
幸いなことに、この部分の常識は欠けていなかったらしい。
しずしずと差し出したそれを、四人で頭を突き合わせて見る。
少しばかり狭い。
『伽月/深度5』
『力』 『霊』 『体』 『速』 『渉』 『呪』
8 2 8 6 1 1
『未取得/0点』
【無】 :『写し鏡の呪法』 :1/1
/自身の内側の情報を水鏡に映し出す簡易呪法。
【無】 :『無銘流派:水』 :3/5
/特定の能力使用時に消費軽減。
【無】 :『習熟:刀剣』 :2/5
/刀剣類の扱いに習熟する。能力上昇で補正。
【無】 :『一刀無尽』 :3/5
/両手で握った武器の火力上昇。能力上昇で補正。
【花】 :『瘴気変換:生命』:1/5
/周囲の瘴気を生命力に変える体質へと変化する。
【鳥】 :『乱撃』 :3/5
/複数を刻む連撃。【物】【能力回攻撃】【不定対象】
【鳥】 :『気配干渉』 :3/5
/自身の気配を増減させる。能力上昇で操作量変化。
…………。
「凄い脳筋だな……?」
「の、のうき……?」
え、本気でこれで一人旅してたの?
よく生きてたな、という気分と。
それ以外出来ないってのは他に考えなくて良い分楽なのか?と。
部隊編成時ならまだ分からなくもない能力一覧に言葉が漏れる。
「なんだこの真っ直ぐ行って叩き切るしか考えてねえの!?」
「わ、悪いんですか!?」
「いや悪くはない……と言うか、その辺を強く言えるような立場じゃないけどさぁ……。」
修羅型*1じゃねえか、というのは口に出さない。
『無銘流派:水』で能力消費量を下げ、『一刀無尽』に類する火力パッシブで固め、『乱撃』で複数体と単体どちらにも対応。
確かに傍目から見ればよく出来ている。
……ただ、『流派』の中でそれを選ぶのか。
他にも『蜻蛉』『居合』とかの火力特化や状態異常特化の構えがあるのに汎用向け。
つまり、一対多数を見据えた上での構築と言う事。
多分彼女一人で決めたわけじゃない。
指導者がいたはずだ。
「のうご主人。 この『気配干渉』とやらは何じゃ?」
「白のほうが詳しいとは思うんだが……。」
「名前だけは見掛けたがイマイチ効果が分かっておらんでの。」
目の前に使い手がいるならそっちに聞けよ、と思わんでもない。
ただ彼女は何も言わず俺を見ている。
――――試されているのかな、とそう感じた。
「使い方は幾つかあるが……伽月みたいなのが覚えてる理由は多分二つかなぁ。」
「二つ……です、か?」
そう、二つ。
単純に気配を消すだけがこれの本領ではない。
「一つはまあ
「……え、ええ。」
能力一覧を見られただけで得意な内容……というか戦法とかその辺全部だな。
それらを全部抜かれているのに追いついてない。
隠さなければいけない、というのは知っていても。
何故なのか、というのを追求して考えたことがないように思える。
……一人で放流するの怖いなぁ。
「もう一つは……戦闘中に気配を拡大化する、って使い方の筈。」
「……ん? 戦闘中に?」
「ああ。」
そう。
言葉でいうだけだと大したことが無さそうに思えるけど。
前衛で警戒していないと確実に引っ掛かる罠みたいな方法。
「唐突に気配の大小を切り替えるんだよ。 そんで誤認させる。」
ゲーム的な表現をするなら『回避率増加/スタン発生付与/先制率増加/遭遇率増減』。
普段の気配を唐突に拡大させることで一瞬だけ麻痺させたり、或いは間合いを見誤らせる。
言うなら裏の使い方、か。
派生を伸ばせば伸ばすほど”剣圧”に近いプレッシャーを浴びせられるようになるやつ。
「…………あ、あの。 朔、様?」
「うん?」
「何故、それを……あ、もしかして貴方も……。」
あわあわしてる。
自分の処理できる上限を越えたか。
「いや、俺は覚えてない。 便利だよなぁと言うのは知ってるけど。」
正直取る余裕が無さ過ぎるのもある。
回避率増加の恩恵があるから便利だけど、使い過ぎると周囲の妖呼び寄せるしなぁ。
『鳥』で取るなら純粋に行動の隙を潰せるやつとかのほうが小回り利くはずだし。
「では何故!? それはある種の流派の秘技の筈です!」
「何故、と言っても……。」
隠すようなことか?
術技を身に着けていないとしても、近接戦闘を学んでいれば意識を感じる事はそこそこある。
それを増減させる、というのは発想としては普通にありそうなもんだが。
「伽月とやら。 ご主人はまあ、そういった部分について詳しいんじゃよ。」
「……何故です?」
「父上殿に学んだからよ。」
そして目線を向けられた。
そういうことにしておけ、ってことだな。 今は。
「……まあ、今後何か取るならそういう訳で相談できるし。
適当に武具だけ調達したら外で合わせて、幽世行く……でいいか?」
話をそう纏めて、小さく息を吐く。
……変に知識を撒きすぎるのも大変だ。
でもこれ、最初に聞いてきたのは白だから……結局白が原因じゃねえか?
目線を向ければ、にやりと笑われた。
……後でちょっと仕返ししよう。
*1:単体で敵を皆殺しにする攻撃特化型ビルド。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます