011/能力選定


「よーし…………。」


若干ぐったりするほどに話し合った。

俺の瘴気深度レベルが『2』に上がったことで、白の取得できる能力にも多少の余裕があった。*1

気付けば太陽の角度も少しだけ変わっており……一刻2時間くらいは話し合っていたのか、多分。


その結果を映し出した水鏡をぼうっと見つめている。


【無】 :『写し鏡の呪法』  :1/1

/自身の内側の情報を水鏡に映し出す簡易呪法。

【鳥】 :『兄宇迦斯の指先』 :2/5

/解錠・解呪を可能とする。能力上昇に応じて補正。

【鳥】 :『鶺鴒の見通し』   :2/5

/幽世での発見行動を可能とする。能力上昇に応じて補正。

【鳥】 :『血飛沫月光』   :1/5

/血液を月光に晒す。【物】【刃】【出血発生】

【月】 :『月読ノ導き』   :1/5

/自身の種族特徴を取得する。能力上昇に応じて変化。


必須の呪法は考えないものとして。

『魅了』を発生させる【月】の種族特徴系能力を一つ。

俺の求めていたモノであり、正直手習いでは信用に於けないので取り敢えずの半人前。*2

そして白の強い希望だった攻撃系の術技の中で、消費霊力が軽いもの。

その中で今回は確実に有用だと思われる『出血』を発生させるモノを選んだ。


血が出る――――肉体を持つ妖であれば発生する確率を必ず持つ、汎用性のある持続火力。

毒の方が威力は上だが抵抗される確率もある。

その内取るにしても、今はこれで良しとした。


「……全く折れなかったの、ご主人。」

「当たり前だろ……俺の命だって掛かってんだぞ。」


隣で同じように伸びている白。

……式でも肉体を持つとこんな感じになるのか。

つついてみようかと思ったが、反撃が怖かったのでやめておく。


「…………で、ご主人。 お主の能力はどうするんじゃ?」

「あー……それなー……。」


取る候補は決めている。

と言うより、1ポイントは既に決定済み。

残り2ポイントをどうするかって感じになるんだが……。


「まず相手の攻撃の弱体化を取るのは確定してる。 能力的にはまだ齧るだけだがその内限界まで上げる。」


減少量が増える呪法だからこそ、此方と比較して格上の相手に対して強い効果が出る。

攻撃と防御両面を一定時間でも下げられればその分戦闘時間は短縮されるし、危険度も減る。

特に回復担当を直ぐに仲間に出来ない以上、道具という上限が常に問題になる。

対策をするのはまあ当然。


「多分将来的にはこの辺も上位能力まで派生で取るとは思うが……。」


何故上位になると外つ国の神々の名前が混じってくるんだろうな。

いや今はどうでもいいか。


「問題は残り二つなんだよな……。」

「ご主人も吾と似たようにする……というのでは駄目なのか?」

「攻撃術技を取ったり、ってことだろ? 霊力の問題で最初に取るか悩むところ。」


正確に言うと生命力と霊力、どっちも削るから使い勝手が良いものを取るにしろ。

俺の場合は自動回復取ってからのほうが効率がいいんだよな。


「だからまあ、取るなら常時強化系列として……自動回復か割合増加か、或いは個体能力強化か。

 ついでに言ってしまうなら武具を扱う才能も何かしらに決めて取っておきたい。」


武具を扱う才能ウェポンマスタリー

武具の種別毎に存在するので他のものに応用が効かない、という欠点はあるが。

逆にその武器を使う限り命中への補正や常時攻撃力の増加、果ては武具の特性の強化にまで至る。

本来なら最初に手に入れる高位の加護を宿した高レア/ハイエンチャント/ユニーク武器から逆算したい。

ただそれが許されるのはセーブ&ロードが出来たゲーム時代。

最初から手に馴染む武器種を定めてしまう方が売却含め取り回しも良くなる筈。


「才能? 極めるのかや?」

「いや、そこまで余裕は無いと思う……他を削れば分からんが。」


だからこの時点で決めてしまいたい、というのはある。

まあ扱いやすい/扱いにくいは絶対あると思うので、父上に見て貰った方が良いのかもしれない。


「先ず射程が短い武器は俺の立ち位置・役割からして一旦外す。」

「そうじゃな。 仮に取るにしろ吾との連携も必要となるしの。」


……ああ、そこまで考えてなかった。

そうだな、同じような立ち位置で戦うなら慣熟訓練は必要か。

個別ではなく、二人で動けるように……無言でも対応が取れるように。


「だからまあ……取るなら長柄系の武器か投射系、弓系列だな。」


杖術としても使える場合の武器は長柄になるし。

槍や杖、或いは投げ物か弓。

どれも同じように負担が掛かるのは間違いない。


「吾としては長柄か弓が有り難いのぉ。」

「ん? 理由聞いてもいいか?」

「投げ物はどうしても使用できる数に制限が掛かるじゃろ?

 それを言うならば弓も同じだが、アレならば矢筒の運用手法次第でどうとでもなる。」


吾も封じられた時は弓で射られたんじゃよなぁ、と嫌なことを思い出す声。

……矢は矢で運用コストが重いんだよなぁ。

まあその分、瘴気深度では分からない火力が出せたりもするんだが。


「……多分倉庫に転がってるだろうし、一度触らせて貰ってから決めるか。」

「そうじゃな。 そうしよう。」


……その後数分ほど。

少しだけ疲労が抜け始めるまでゴロゴロとしてから。

互いに起き上がり、目配せをして。

同時に荒屋を後にした。


……遅れたほうが、父上に怒られるような錯覚がしていたので。



*1:レベルが『1』上がる毎にスキルポイントを『3』、フリーポイントを『2』取得する。

*2:手習い半人前一人前熟練達人

基本的にスキルの上限は5であり、他のスキルを経由して基礎のスキルを強化する形になっているものが多く見られる。

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