第5話 ポピー


コリウスの花をもらったあの日から彼女には会えていない。

まるで一瞬のようにも思えたあの時間は長い夢だったのだろうか。


あの日から毎週いつも通りの時間に家に向かうが、いつの日も門は閉ざされ、きれいな庭を見ることはかなわなかった。

時がたつにつれてぼくはその家の存在を忘れてしまった。


新学期が始まり、桜が舞う季節となった。

そんなある日、不思議な空き地を見つけた。

こんなところに空き地なんてあっただろうか。

外から見たら一見普通の空き地だが人を引き付けるなにかがそこにはあった。

ぼくは気になってそっと空き地に足を踏み入れた。

そこには、白と赤のポピーの花が一輪ずつ静かに咲いていた。

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