ただ、自分の創作と向き合う

貴葵 音々子

創作って、苦しくて楽しい

字下げって必要?




 字下げ。

 行の一文字目を下げることです。

 小学校の頃、作文の授業で習った記憶があります。

 その時は「そういうルールなんだぁ」と漠然と理解しただけでしたが、ルールには往々にして意味がある。


 字下げの重要性を知ったのは、WEB小説を読むようになってからでした。

 横書きに慣れていないせいもあって、とにかく目が滑るのです。

 目が滑るというのは、どこまで読んだかわからなくなるという事象。軟弱者め!


 試しに私の作品でやってみましょう。ぱっと見た感じ読みやすいかどうかだけ見てみてください。



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【字下げなし】

青々と苔生こけむしたビルから溢れる滝が飛沫を上げた。その近くでは無残にも横倒しになったランドマークタワーを無数のツタが覆う。がらんどうになった施設内は密林と化していた。

視点を移すと、歪んだ交差点の真ん中に錆びついた5ドアの乗用車が見える。ずいぶん長い信号待ちをしているようだ。色を失った信号機に絡まる海藻が、まるでそれをあざ笑うがごとく、風に踊る。

倒壊した建物の数がかつての繁栄を黙示する、荒廃した水没都市──。

そんな寂寥感せきりょうかんに支配された街を、夜明けの残星が静かに見下ろす。

喧騒が消え失せた世界の中に、ひときわ緑化の進んだ一帯がある。

うっそうと生い茂る多肉質な樹木の森に、ひっそりと残された大型ドーム球場の残骸。天井は抜け落ちて、日当たりは良好だ。

手入れが忘れ去られたフィールドには水が張り、もはや池と表現した方が近い。液状化現象の影響だろう。

天災が作り出した水面の中心に、朝焼けを浴びる巨大な蓮の花が咲き誇っている。

この異質な画像が大手SNSサービス【グランオーブ】に投稿されたのは、西暦2045年4月の出来事だった。


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 文字の圧がすごい(笑)

 段落が分かりにくくてずっと情報がズラズラ続いているように見えます。これは疲れますね……。軟弱者の私は確実にブラバしています。


 では次、字下げありの場合。



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【字下げあり】

 青々と苔生こけむしたビルから溢れる滝が飛沫を上げた。その近くでは無残にも横倒しになったランドマークタワーを無数のツタが覆う。がらんどうになった施設内は密林と化していた。

 視点を移すと、歪んだ交差点の真ん中に錆びついた5ドアの乗用車が見える。ずいぶん長い信号待ちをしているようだ。色を失った信号機に絡まる海藻が、まるでそれをあざ笑うがごとく、風に踊る。

 倒壊した建物の数がかつての繁栄を黙示する、荒廃した水没都市──。

 そんな寂寥感せきりょうかんに支配された街を、夜明けの残星が静かに見下ろす。

 喧騒が消え失せた世界の中に、ひときわ緑化の進んだ一帯がある。

 うっそうと生い茂る多肉質な樹木の森に、ひっそりと残された大型ドーム球場の残骸。天井は抜け落ちて、日当たりは良好だ。

 手入れが忘れ去られたフィールドには水が張り、もはや池と表現した方が近い。液状化現象の影響だろう。

 天災が作り出した水面の中心に、朝焼けを浴びる巨大な蓮の花が咲き誇っている。

 この異質な画像が大手SNSサービス【グランオーブ】に投稿されたのは、西暦2045年4月の出来事だった。


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 どうでしょう。

 文字の圧は相変わらずですが(本編は改行で工夫してあります)、段落がどこで一区切りなのか、少しわかりやすくなったのではないでしょうか。


 字下げしてあると、行のはじまりの目印になります。

 それだけでもぐっと読みやすくなる。

 読みやすくなるということは、続きが読みたくなる。


「そんなの気にしなくても普通に読めるわ」

「字下げしてなくても評価されてる作品はたくさんある!」

「文法なんて書籍化された時に校正すればいいじゃん」


 うんうん。気にならない人は字下げしなくてもいいと思う。

 ただ、あなたの作品を読んでいる読者の中には、私のような軟弱者もいるということを忘れないでほしいです。

 字下げされていないことで、読みにくさを理由にブラバすることもあります。

 もしくは「字下げしてないということは文章が稚拙なんだな」なんて印象を持たれて、プロローグでさようならされてしまうかもしれない。


 字下げは法律ではなく慣習。やったからと言って爆発的に評価されるわけじゃないし、やってなくても罰せられることもない。

 でも、

 ただ、それだけのことです。



 ちなみに会話文で使う「」の前は字下げ不要なんですって。

 そういうもんだと慣例的に覚えてたけど、改めて「なんでかなー」と思って色々調べてみたら、文章の体裁という意味合いが強そう。


「←が既に右寄りで左にスペースがあるから、字下げしなくても揃って見えるので美しいらしいです。



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【字下げあり】

 ある朝のこと。

 「おはようございます」

 と、Aは言った。


【字下げなし】

 ある朝のこと。

「おはようございます」

 と、A子は言った。


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 なるほど~。「」で字下げすると、0.5文字くらい右にズレてガタついて見えますね。

 一方で字下げしない場合は文頭が揃っていて読みやすい。

『紙面になった時、どれだけ読みやすく美しくできるか』という編集の方々による努力の積み重ねが慣習になったのでしょうか。


 なんにせよ、読みやすいに越したことはないです。私たちはのですから。わざわざ読みにくい文章を書いていても、仕方がないですよね。


 パソコン執筆の場合はスペースキーを押すだけでいいのですぐ実践できそうですが、「スマホで執筆していると字下げが面倒」という意見は、何となくわかります。

 私はiPhoneで字下げしようと思ったら、このスペースが半角なのか全角なのかすらわかりませんでした。

「辞書に『読み<スペース>』『書き< ■>』で登録しておくといいよ」というありがたいご意見をネットで見てやってみましたが、め、めんどくさい……(こら)


 そんな私のようなズボラさんは執筆アプリを利用することをお勧めします。

 私は普段からNolaを愛用しています。

 Nolaには自動字下げ機能というものがあって、スマホのアプリで書く時も勝手に字下げしてくれるのです。しかも「」を入力すると自動で字下げを解除してくれます。これが無料で使えていいんですか!?!?



 以上、字下げについての見解でした。

「めんどくさい」「気にしてない」「知らなかった」以外にあえて字下げをしない理由があったら、参考までにコメント欄で教えていただけると嬉しいです!



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