デート中の傍観者
それは、新曲に向けてのレッスンが終わり、メンバー全員で遊びに出かけていた時のことだった。身バレして騒がれないように変装して、5人楽しくモール内を散策していました。この時の私はこのまま楽しく一日が終わると思ってた。
5人横並びになって歩いているときに冬華が反応したのが始まりだった。
「あれって、雅さんじゃないですか?」
冬華が指を指した方へ全員顔を向けると、そこにいたのは紛れもない雅くん本人だった。それだけでなく、雅くんの服装や髪形を変えてお洒落している。
「でも、なんだか様子がおかしくありませんか?」
「本当ですね.....」
「もしかしなくても浮気ってやつ?」
雅くんの隣に、雫が居たことは皆気づいた。
だが、この三角関係に関しては、グループ全員に話してないし、デートに関しては誰にも打ち明けていない。私以外のメンバーからすれば、隣に知らない女性がいるだけで不信感が募るに決まっている。この事態をどうすべきか、打開策が無いか必死に考えていると、ゆるゆるが一つの提案を出した。
「尾行以外ありえないしょっ」
「まぁ、そうなるよねー」
「私は大丈夫だから...尾行なんかせずに、私たちは私たちで楽しも!」
二人からこの4人を引き離したい思いで、
「そんなことしたら、また一人で思い悩んで誰にも打ち明けないつもりでしょ」
愛菜に言われたことに否定できなかった。ストーカーに被害にあった時も、今だってそうだ。結局何も言い返すことが出来ず愛菜たちは、二人のことを尾行することになった。
「二人の姿を見つけた瞬間から気になっていたんですが、お二人とも恋人繋ぎをされていませんか?」
「やっぱり、してるよねー」
「これで疑惑1だね」
この尾行に特に熱心だったのは、冬華とエイナと愛菜だった。ゆるゆるはその3人を眺めながら飴をなめていた。抜け駆けなんてしないって体育祭で対決する日に雫と約束したから二人の関係を疑ってはいけない。
そのまま尾行を続けていると、お手洗いの前で雅くんが一人で待っている姿があった。
だれも、雅くんから目を離そうとはせず周りから不審な目で見られていてもお構いなしだった。その途中誰かが雅くんに話しかけている姿を目撃してさらに目を凝らす3人。
そして、お手洗いから戻ってきた雫が割込み何かしら会話をしていたが距離が離れているため私たちまで声は届かなかった。
「あれってもしかして宮森さんかも」
「もしかして、愛菜の知り合い?」
「うん。一回だけ特集を組んでもらった際に話したことあるの」
「なら、その宮森さんに聞き出すしかないね」
3人での話が終わりお互い進路を変えたところで宮森さんらしき人の元へ近づく。
「あっ、宮森さんお疲れ様です」
「あのどちら様ですか?」
変装していると接点がある人でも気づけていないことに感心しつつ、冬華はマスクをずらし顔が見えるようにする。
「えっ!あっ....失礼しました冬華さんお疲れ様です......」
私たちの存在に気が付いた宮森さんは、大声で驚きはしたものの変装している姿を見て察してくれた彼女は小声で挨拶する。
「今日はどうされたんですか?」
「さっきまで、宮森さんが話していた人たちのことを聞きたいんです....」
「さっきのってもしかして、初々しいあのカップルのことですか?」
「やっぱり、雅さんは浮気をしていたのね」
「疑惑は確信に...」
3人とも、カップルという言葉を聞いて、すぐに作戦会議に移っていた。あと一人のゆるゆるは飴を食べ終わったあともずっと冷静だった。宮森さんはというと事情を知らされていないこともあり、置いてけぼりにされてしまっていた。そんな滅茶苦茶な空間の中で唯一宮森さんに聞かなければならないことがある。
「その、カップルってこと本人たちが言ってましたか?」
もしかしたら、宮森さんが勝手にカップルだと思い込んでいる可能性もある。だからこそこれだけは質問して聞き出すべきだ。
「自らカップルだとは名乗っていませんでしたけど、割り込んできた彼女さん、彼のこと「彼氏」って発言していましたよ」
私、いつの間にか負けてたんだ...
何度も、欠席をしている間に二人に進展があったんだ。なら、私がすべきことは二人を陰ながら応援するんだよね........
いざ、現実を突きつけられると気持ちを切り替えるのは不可能だと実感する。
何でだろう...気分が悪い。これが失恋なの?気持ちを整理しきれなかった私は、顔を下げたまま皆に顔を見せれなかった。
「あ、ありがとうございます.......」
出来るだけ感情を抑え込んで感謝の気持ちだけを伝えた。でもこの感情を抑え込むのも限界だった私は、本来このモールに来た理由も忘れ、無我夢中に走った。
「ごめん用事思い出したから帰るね..........」
「えっちょっと恋花!どうしたの?!」
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