柚机莉徒 ~ 3 ~

10 Nothing starts only by thinking

 二〇〇五年七月三〇日 土曜日 七本槍ななほんやり市内 柚机家


 プルプルと震える腕を叱咤しながら、莉徒は無言で気合を入れる。

 何故だか呼吸も止まる。

 あと少し。

 あと一つ。

 あと一文字。

「うぅぉわったぁー!」

 バッ、と両腕を上げ、ぐん、と伸びをして……。

「きゃああ!」

 椅子ごと後ろにひっくり返る。

「ぐえ」

 背中と後頭部を強かに打ち付け、女子らしからぬ呻き声を上げてしまった。

「いったぁーい!」

 目玉が飛び出るかと思ったが、いくら小顔の割りに大きな目でも顔から飛び出したりはしていないようだった。

「うるせぇ!莉徒ー!」

 隣の部屋から三歳年下の弟の逢太おうたが声を上げた。姉を呼び捨てるのはそもそも柚机家の習わしだ。かくいう莉徒も逢太はは勿論両親のことも名前呼びで通している。大方逢太も宿題で行き詰っているのだろうが、知ったことか、と思う。

「ムフッ」

 夏休みが始まり早くも一週間が過ぎたが、莉徒はバンド練習の後のお茶会も、喫茶店でのゆるゆる和みタイムも我慢して、ひたすら宿題に打ち込み、今、やっと全ての宿題を終わらせたのだ。早速シズと千晶ちあき瑞葉みずは美朝みあさにメールを入れる。由比ゆい美朝は瑞葉とともに莉徒の数少ない親友の一人だ。高校一年生の頃から妙にウマが合って、ずっと仲良くしてくれている。いわゆる優等生である瑞葉と美朝には解らないところをいくつも教えてもらった。送信が終り、程なくすると早速瑞葉から電話がかかってきた。

『すごいねー、もう終わったんだ』

「うん、瑞葉のおかげ。サンキューサンキュー」

 美朝もそうだが何故瑞葉のような大人しくて勉強もできる子が莉徒と仲良くしてくれているのかは全くの謎だが、瑞葉も美朝も、妙に纏っている空気感が莉徒の好みなのだ。

『あはは、莉徒ちゃんの創るラブソング、興味あったけどね』

「ぜーったい嫌だって!案外千晶ちゃんの方がそういうの向いてたりねー」

 少々の含みを込めて言ってみたが、そこで一瞬だけ間が空いた。

伊口いぐち君?』

(むふふ……)

 少しかまをかけてみる。

「あー、あのね瑞葉、言っとくけど私と千晶ちゃんは何でもないからね。バンド内での恋愛は御法度」

 今までそれで壊してしまったバンドの数は一つや二つではない。幸い今のバンドは、仲間としては最高のメンバーだ。千晶は瑞葉のことを好きになったようだし、拓には彼女がいる。若干癪に障るがシズは自分を女としてすら見ていないだろう。色恋沙汰で壊れるバンドは山とあるし、自分もそれをやってきた。しかし、Koolクール Lipsリップスではそれはないし、してはいけない。というよりそうはならないだろう。

『え!な、何?』

 あからさまに面食らった声を瑞葉はあげた。

(やっぱりねぇ……)

 千晶が瑞葉を好きになったらしいことは本人からも聞いたが、瑞葉が千晶をどう思っているかを訊いたことはなかった。しかし、今の瑞葉の反応で全て判ってしまう。

 莉徒は後から知ったのだが、実は莉徒が以前組んだユニットでライブに出た時に、どうやら千晶がいた頃のBeatビート Releaseリリースと対バンしていたらしいのだ。そこで瑞葉は千晶がバンドをしていることを知ったらしい。それから莉徒が千晶と組むようになってから、何度か千晶のことを訊かれたことがあったので、何とはなしにそんな予感もあった。

「え?いやぁ、何かカンチガイされると嫌なのよねー、私が。千晶ちゃんも可哀想だしね。彼女いないのに私みたいなのとくっついてるとかカンチガイされちゃったらさ」

 説明口調も甚だしいが、それに瑞葉は気付くだろうか。

『へぇ、伊口君、彼女いないんだー』

「って聞いてるけど」

『ふーん……』

 無関心を装う辺りがまた可愛らしい。そんな態度を見せられてしまうとついからかいたくなってしまう。

「何か訊きたいこと、あるんじゃないのぉ?」

『え?』

「いやーぁ、ないならいいのよ。ないなら」

 むふ、と語尾につけて莉徒は笑う。瑞葉は学内でもかなり人気がある。本人は全く意識していないようだが、瑞葉を目で追う男の数はかなり多い。それがすべてイコールで瑞葉に恋をしているかどうかはまた別の話だが、少なくとも悪い印象は持たれていないということは間違いない。

『……す、好きな人、とかは、いるのかな……』

「だから瑞葉って好きよ」

 そんな瑞葉が観念するように言う。一頻りいじって満足すると莉徒はにんまりと笑った。

『もぉー、ずるいよ』

「瑞葉が判り易すぎんのよ。まぁ彼女はいないし、正直好きな人がいるかってのは判んないけど、ガンガンに攻めてオッケーよ。私が保証するわ」

 全てを言ってしまうほどお節介でも世話焼きでもない。恋愛というものは成就するにせよしないにせよ、そこまでのプロセスを楽しむのも大切だ。その間に育つ感情や気持ちだってある。

『でもライブ前だし色々忙しいよね』

 ということは機会があれば、千晶と時間を共有したいということなのだろう。いきなり瑞葉からデートに誘うことは流石に無理かもしれないが、そこは逆に莉徒の方から千晶に何某かの情報を少しだけ与えれば良い。お節介はしないつもりではあるが、上手くいく可能性の高い関係をただ傍観して妙な方向に行かないようにはしてあげるのが、親友の役割であり、バンドメンバーの役割でもあろう。

「リハ入る日程は私が教えてあげるから後は瑞葉の頑張り次第ね」

『んー。頑張るのは、具体的にどうしたらいいの?』

「私に訊かれても……」

 千晶と同じようなことを言っているあたり、お似合いなのではないだろうか。どちらも我を前面に出すようなタイプではないが、千晶に限って言えば、ベースの部分では己を出すことに慣れているので、仕掛けるなら千晶の方なのかもしれない。

『あ、そっか……。ん、でも頑張ってみる。よく判んないけど』

 どうやら苦笑した様子で瑞葉は言った。この間のようにまずは対面でのコミュニケーションを重ねるのが良い手立てかもしれない。

「ん、がんばんなさい。ま、宿題のお礼ってことで」

『あはは、うん、ありがと莉徒ちゃん。んじゃねー』

「あぃー」

 通話を終えるとすぐにメールチェックをする。千晶とシズ、美朝からもメールが入っていた。

『くそー、負けたか。オレもあと四、五日くらいかな。ま、千晶には負けないと思うけどさ』

『早いなー。俺はあと三日くらいかな。まぁシズに勝てれば罰ゲームないし、それでいいや』

 どちらも勝つ気は満々らしいが、この分ならシズの負けは確実だ。

「明日の練習の時の探り合いが見物だわ」

 そう言うと莉徒は携帯電話を閉じた。


 二〇〇五年七月三一日 日曜日

 七本槍南商店街 楽器店兼練習スタジオ EDITIONエディション


「いってぇー!」

 莉徒の下段回し蹴りがシズの内腿に綺麗にヒットする。まじまじと瑞葉の、特に胸を見ていたのでつい。

「グッジョブ」

 千晶がサムズアップ。

「まぁそんな訳なので、本番前に誰か見学者がいるって状況でやってみた方が良いかと思ってね」

 とん、と瑞葉の両肩に手を置いて莉徒は練習の見学にきた瑞葉を紹介した。お節介はしないと思っていたのだが、つくづく甘いなと思ってしまう。それでも掛け替えのない友達のためだ。

「おじゃましますね」

「うん、大歓迎。んじゃ暑いし、中入ろう」

 たくが先を歩いて地下へ降りる。瑞葉を促して莉徒も拓の後に続く。

「あれ?瑞葉じゃん」

 唐突に声をかけられた。莉徒の前を歩く瑞葉が振り向いたので莉徒もそれに習う。

「あ、じゅん兄」

 視線の先にはこの間喫茶店で会った、大沢淳也(おおさわじゅんや)がいた。

(淳兄?)

 親しい仲なのだろうか。

「あ、こないだのバンド少女じゃん。何、瑞葉の友達?」

「うん。柚机ゆずき莉徒ちゃん。淳兄会ったことあるの?」

「あぁ、こないだたかんち手伝ってた時にいたんだよ」

「あぁー!淳さんじゃん!」

「おぅわ!デカイ声出すな少年!」

 遅れて気付いたシズが大声を上げる。それで拓と千晶も気付いた。

「え?The Guardian'sガーディアンズ Knightナイトの大沢さん?」

「え、あ、そ、そうだけど、騒がないでくれるとありがたい」

 大沢淳也が辺りをきょろきょろと見回す。大沢淳也の所属するThe Guardian's Knightは、以前日本でも有数な人気を誇ったロックバンド、The Guardian'sガーディアンズ Blueブルーの直系のバンドで、今なお日本でも屈指の人気を誇るロックバンドだ。ロックバンド好きでなければ知らないというレベルのバンドではない。

「こないだ野音のイベントに貴さんと多分りょうさん来てましたよ」

 知っているかどうか判らないが、一応言ってみる。水沢貴之みずさわたかゆき谷崎たにざき諒は、同じくThe Guardian's Blueに所属していたが、The Guardian's Blueの解散後、The Guardian's Knightには入らず、オリジナルレーベルまで打ち立てて-P.S.Y-サイを結成した。今でも関係が続いているのかは莉徒では知りようもない。

「あー、オレもそれ聞いててさ、行きたかったんだけど、レコーディング入っちゃっててさ。そういや中々いい音出してたバンドがあったって言ってたけど、君らのことかな」

「流石に違うと思いますよ」

 莉徒は苦笑して言う。今は違うバンドにいたとしても交流はあるということか。あの時の千晶とシズと拓の演奏は莉徒の胸に突き刺さってくるほどの印象があったのは間違いないが、それでも水沢貴之や谷崎諒が、大沢淳也に伝えるほどに良い演奏をしていたかは判らない。

「今日はリハみたいだな」

 リハというのはリハーサルの略で、本来ライブでの本番前に、音響チェックや曲のつなぎの確認など、本番に向けての練習を差すが、いつか来るライブの練習、ともいう大枠で通常の練習でもリハという言葉を使う者もいる。

「そっす。ちょっとオレの弾き見てもらえません?」

 シズが勢いで言う。一度や二度会っただけで随分と馴れ馴れしい。大体にしてプロのミュージシャンにそんな時間などある訳がない。

(相変わらずばか……)

「莉徒」

「してないって」

「そう」

 相変わらず勘もいい。

「ははは。ボクがボーイ達に教えられることはたった一つだけヨ。Standスタンド andアンド fightファイト立って、そして戦いなさい。これダケネ」

 外人が片言の日本語を話すように大沢淳也は言った。莉徒にはすぐに元ネタが判ったが、大沢淳也にそこを突っ込むことが適切かどうかは謎だ。

「それ違うんじゃ……」

 しかし元ネタを知っているのか、千晶が突っ込む。

「あ、バレた」

「……」

「まぁ冗談は置いといて、オレもこれからリハなんだよ。ま、ライブ本番ん時ゃあ貴と諒さんも呼んでやっから、今日のところは勘弁してくれ。んじゃ悪いけど……。あー、そうだ瑞葉、涼子りょうこさんがまたバイト頼みたいって言ってたぞ。そんじゃな!」

 ババッと手を上げて大沢淳也は足早に去って行く。

「何これ?一体どういう関係?」

 莉徒が瑞葉に詰め寄る。随分と親しいようではあったが、恋人ではありえないだろう。瑞葉は大沢淳也のことを淳兄と呼んでいた。

「えっと、従兄……」

「マジ?」

「うん」

 これには莉徒も驚いた。もう一年の付き合いにもなるが、まさかこんな秘密を親友が持っていたとは。

「ってことは-P.S.Y-の水沢貴之も?」

「そうだよ」

 大沢淳也と水沢貴之が従兄弟同士だということはG's系のファンならば誰でも知っていることだが、まさかその従妹が同級生だったとは想像もつかなかった。姓が異なるということは母型の従兄妹ということになるのか。

「あんた何気に凄い子なのね……」

「二人が凄いだけで私が凄い訳じゃないよ」

 瑞葉は苦笑してそう言った。

「しっかしどーするよ!オレらのライブにG'sの三人が来んだぜ!すごくねー?」

 シズは大はしゃぎだが、プロの目から見ればこのバンドのレベルなどたかが知れているのではないだろうか。己惚れる訳ではないが、確かにKool Lipsは学生バンドの中では中々のバンド力を持っていると思える。しかし過小評価する訳でもないのだが、それでもG's系バンドを長年続けてきたようなプロフェッショナルの耳に留まるようなバンド力は、まだまだ出せていない気もする。

倉橋くらはしさんのおかげだろうね」

 千晶が言って苦笑する。

「いやー!ありがとう!マジありがとう!」

 瑞葉の手を握ってシズは振り回すように激しく揺らす。千晶の表情が一瞬揺らぐ。そうかまだ手もつなげていないのに抜け駆けしやがってこの野郎、などとついつい千晶の心の声を勝手に妄想してしまう。

「え、違うってば。元々駅前広場のイベントに貴兄と諒兄ちゃんがきてたんだから、もし二人の耳に止まった音がみんなの音だったら、みんなが凄いんだよ」

「えー!そうか、オレらってやっぱすげー!」

「シズはしゃぎすぎ」

 そもそも水沢貴之と谷崎諒の耳に止まった音が自分達の音だとは限らない。ただ、あの時はまだ聞き手であった莉徒の、自己的な判断をするならばその可能性はゼロではないような気も気がするが、確信は持てない。あの時、拓たちの演奏が終わった後に出演したバンドを莉徒は見ていないのだ。

「ま、誰が来るにしたってカッコ良くやんなくちゃ」

 隣の千晶の肩に手を置いて、莉徒も笑顔になる。万に一つくらいの可能性ではあるが、プロも足を止めて聴いてくれたサウンドかもしれないのだ。後は自分が入った今のKool Lipsのサウンドがどう変わったか、だ。

(こりゃ、ちょっとプレッシャーね)

 ライブまで二週間を切っている。その間、練習は今日を含め五回だ。セットリストも固まったし、アレンジも殆どできあがっている。あとは個々の練習と、バンド力を上げるための練習だ。スタジオのでの練習は個人の練習は出来る限り個人で済ませて、合わせる練習をするのが理想だ。一人でもできる練習は一人の時にしておく。そうしなければ態々お金と時間をかけてスタジオに入っても、合わせる練習ができなくなってしまう。

(考えても始まらないわね。とにかく練習だけはしとかなきゃ……)

 音楽に精通している者とそうでない者とでは聴き方や感じ方が違う。そして音楽を創る者、演奏する者としては、サウンドに凝っているだけでも、気軽に聴けるだけでも駄目だ。そのバランスが難しいところなのだが、個人的な意地として自分達はここまでやれる、という部分を同じ音楽をやっている者達に見せたいという気持ちは大きい。それと相反して音楽をやっていない者達に楽しい音楽を聴かせてあげたい、という気持ちもある。どちらに偏りすぎてもいけないが、莉徒は簡単な演奏でも楽しく聞かせる方が好みだ。実のところ簡単な音楽をきっちり聴かせることは、高い技術力が要求されることは、バンドを、いや音楽を演奏する者は誰もが判っているものだ。今のところのKool Lipsの楽曲は莉徒もシズもギターを弾く時の手癖から作っていることが多く、さほど難解な技術は使用していない。故に本番で無理に予定していない難解なギターソロを弾いたりするよりも、きっちりとバンドのまとまりを見せつけることが、他のバンドに対しての武器となる。

「気合入るなー!頑張ろうぜ!」

 馬鹿みたいにはしゃぐシズに、この時ばかりは全員が同意し、頷いた。

「あー、そうだ、シズちょっとピック選ぶの手伝ってよ」

 急に思い出して莉徒は言った。どうも今使っているピックが合わなくなっているような気がするのだ。一口にピックといっても様々な種類がある。弾き易さやギターから出る音もそれぞれ違う。今までの莉徒はギターボーカルでのギターでしかギターを弾いてこなかったので、コードを弾きやすいピックを使っていたのだが、Kool Lipsではギターソロも弾くようになったため、今使用しているピックとは違う物を試してみようと思っていたのだった。

「ん?別にいいけど、ピックなんか自分の判断じゃねーの?」

「うん、まぁそうなんだけどさ、あんたがどんなピック選んでるのかとか、参考にね」

「基本的には弾き易さ重視なんだろうけど、ピックって案外他のに変えても慣れるの早いしねー」

 千晶が口を挟む。確かにそれはある。ベースだからといってギターに良く見られるティアドロップを使ってはいけない、ということはないし、硬さなども好き好きだ。

「千晶ちゃんは珍しいの使ってるよね」

 柔らかい正三角形のものだ。大体ベーシストはオニギリ形の硬いピックを使用する者が多いが、千晶のピックは柔らかいピックだ。それはピック弾きでも柔らかく、それでいてしっかりと音を出したいという気持ちの表れなのだろう。

「俺は硬いの使うと弦を叩く音が気に障るんだよ。カチカチって音がさ。柔らかすぎると激しい曲について行けなくなることもあるし、その辺バランス難しいよね」

「角ついてるのは?」

 正三角形もオニギリ形も大して形そのものは変わらない。オニギリ形の方が、直線部分にRがかかっていて、正三角形の方は殆どRがない形状だ。どちらもオニギリ形でまとめられる場合が多いが、千晶はオニギリ形を使っていなかったようなので、少し気にはなっていたのだ。

「あぁ、それはオニギリ形にすると角のR取ってる面が多いじゃん。だからちょっと音が広く鳴っちゃうのも気になるし……。てんでコレに行き着いたんだけどね」

 音が広く鳴る、というのは感覚だろう。尖った、硬質的な音よりも、平たい音になってしまうという漠然としたイメージだが、莉徒にも想像は出来た。

「へぇ、拘ってるねー」

 千晶の口からそんなに拘りの言葉が出てくるとは驚きだった。莉徒にとって今ひとつ、千晶はバンドに対して消極的な姿勢、という最初のイメージを拭い切れていないのかもしれない。今の千晶は何か吹っ切れたような感じがあるし、莉徒の方がしっかりと認識を改めなければいけない。

「俺は基本が指だからさ。やっぱり指とははっきり区別したいし、指なら指、ピックならピックで気に入った音のがいいじゃん」

「そっかぁ……まぁ、そんな訳なのよシズ」

「?」

 千晶の話の流れでシズに言ったが、こういうときは何も判っていないのだろう。莉徒は苦笑して続けた。

「色々考えてピック選ばないとさ。あたしもシズの音と弾き易さで考えないといけないし、シズの意見は必要になる訳よ」

「んー、そか。まぁいいや、んじゃちと見に行こうぜ」

 楽器販売のスペースまで莉徒とシズは足を向けた。

 

 Nothing starts only by thinking END

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