3〜4章 幕間-2
「さってと」
カバを魔法陣に戻したユウヒは商人に手を振って、ギルド敷地内の裏庭に向かう。
天気が良く暖かな日差しで、ポカポカと聞こえてきそうな快晴だ。
途中でギルド長とすれ違うと、ギルド長はユウヒに話しかけてきた。
「ユウヒ、ギルドではカバを走らせるな」
「どこにもぶつかってないよ?」
「……そもそも走らせるな」
「わ、わかったよ」
ギルド長の目が据わったのを見て慌てて謝るユウヒ。
ため息をつくギルド長だが、すぐに表情をあらためてユウヒに軽く頭を下げた。
「ユウヒ、今回は良くやってくれたね」
「お仕事だからね」
「領主様も感謝してたよ」
「うん、これであの子に会いに行きやすくなったかな」
「顔パスで行けるようになるかもな」
「そしたらいいな、毎回門番さんと話すと疲れるしね」
2人で顔を見合わせて笑う。
話をしていると、ひょこっと兎がカバンから顔を出した。
ギルド長は兎を見て、呟くように話す。
「彼女から聞いたかな。今、領主様と取引している商品は流行病の治療薬で使う薬草だ」
「……うん、ボクのお母さんの病気の薬だね」
「そうだね。あんなことが起きないためにもちゃんと薬を使えるようにしないと」
「お姉さんと手伝う約束してきたよ」
ふむ、と呟くギルド長。
「もしかすると今回の薬がらみで運びの仕事依頼がくるかもね」
「お仕事があるのはいいことだ」
おどけて話すユウヒに真剣な表情で話すギルド長。
「ただ、荒っぽい妨害が入りそうだからね」
「船に穴開けてたもんね。もったいない」
「船ならともかく、命に関わるからね。危ないと思ったら自分優先で動くこと」
ユウヒに向かって真剣に諭すギルド長。
ユウヒは笑いながら返事した。
「大丈夫、大丈夫。みんないるしね」
「ユウヒの大丈夫は当てにならないんだ」
「えー、ボクは大丈夫だよ。……あれ?」
大丈夫を繰り返すユウヒに、苦笑を浮かべるギルド長。
「まあ、気をつけて仕事してくれ。じゃあね」
「うん、わかった。裏庭で日向ぼっこしてるから、お仕事きたら教えてね」
ユウヒはギルド長に告げて別れて元々の目的地であるギルドの裏庭に向かった。
裏庭は建物の裏側にある。
倉庫に荷物が入らなくなった時は臨時で荷物を置いたりもする場所だ。
しかし通常時は日差しがあってあまり人が来ない絶好の日向ぼっこスペースのため、ユウヒはちょいちょい裏庭を使っている。
ポカポカ陽気の裏庭に到着すると、ユウヒは周囲に人がいないことを確認して呪文を唱えた。
『召喚:結界亀』
すると亀が召喚される。
召喚された亀に対してユウヒは声をかけた。
「ウラシー、ありがとね。日向ぼっこしよう」
ピカっと甲羅を点滅させると亀は大きく口を開けてあくびする。
そのまま手足を大の字に広げて、動かなくなった。
ユウヒと亀は、言うことを聞く時間と同じ時間、日向ぼっこすると言う契約を結んでいる。
そのため、時折このように亀を召喚して、日向ぼっこしてるのだ。
「ボクも日向ぼっこしよっと」
亀の甲羅に寄りかかり、地面に座るユウヒ。
鞄から兎が出てきてユウヒの横に前脚を揃えて座る。
何をするでもなく、甲羅干しする亀の横にぼーっと座る1人と1匹。
間も無く兎はプスプスと寝息を立てて昼寝し始めた。
「兎と亀で仲良くお昼寝だ」
呟くユウヒ。
ユウヒ自身も海中への配達から休みを取っていない。
暖かい日差しの中、だんだんと重くなってきた目蓋を支えるつもりもなかったので一緒に昼寝を始めたのであった。
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