第35話 デート報告配信2 ※天川有加里視点

「私たちが見た映画は、最近話題になっているあの恋愛映画だよ。チケットも事前に買っておいた」


 映画のタイトルを視聴者に伝えると、チャット欄が盛り上がっていく。


チャット欄▼

:ああ、あれね

:それなら問題なさそうだ

:男の人って映画とか見るの?

:あの作品だったら、男の人でも楽しめそうだけど

:安心して見れるね

:私も見た。もちろん1人で

:あの映画は良かったよ


 あの映画を見た人は多いようだ。そして、非常に好評のようだ。世間で話題になっているだけある。私も、その評価を聞いて大丈夫だと思っていた。だから、彼と一緒に見ようと思った。よくよく考えたら、事前に相談するべきだったな。


チャット欄▼

:男装俳優じゃなくて、実際の男優をキャスティングしているリアル作品だから

:あの監督は、ちゃんと男優を選択してくれるから好き

:でもやっぱり、演技力は男装俳優のほうがあるでしょ

:いやいや、あれが味なんだから

:男も知らないのに、演技云々を語ったら駄目だよ

:この監督さんの作品は、女優の演技力も高いんだよね。毎回クオリティが高い

:男性と女性で実力に差が出るのは仕方ないよ

:特に今回の主演は、演技派で有名な人だしな

:あれがリアルだから


 チャット欄で、視聴者たちが映画について議論し始めた。やはり、男優を起用していることは高評価に繋がるらしい。でも直人くんは、男優の演技が気になると言っていた。やはり、男性と女性では評価が異なるようだ。


「それで、売店で飲み物とポップコーンを購入してからシアターに入った。時間ピッタリだったよ」


チャット欄▼

:映画を見る時の定番だね

:彼の反応は?

:待たせないのは良い

:席は並んで座った?


「うん。2人で並んで座った。2人の座席の間に買ったポップコーンを置いて、映画を見ながら一緒に食べた」


チャット欄▼

:羨ましい

:ぐぅぅぅぅ!

:そんな夢みたいな

:一緒に食べるなんて……ッ!

:しかも、暗闇なんでしょ!

:なんというラブコメ展開……

:私にもこんなパートナーが居たらなぁ!

:ちくしょう!!!


「映画を見てたら、ちょっと過激なシーンが出てきて気まずくなった。けど彼は意外と平然としてたかな。特に反応もなく、普通に映画を見ていた」


チャット欄▼

:ああ、あのシーンね

:確かに、ちょっと気まずいかも

:そんなシーンあった?

:それは気にしすぎじゃない?

:反応しないってことは、慣れているということ?

:経験豊富そう

:まだ学生でしょ? 経験豊富なんて、そんな

:中盤ぐらいの場面か

:男性と見ていたら気になるかもね


「映画を見ている時、横に座っていた彼の様子を確認すると目が合ったりして。そうすると彼が微笑んで、別の意味で気まずくなったりした。でも、あの瞬間も楽しかった。彼と一緒に映画を見ている、という実感があったなぁ」


チャット欄▼

:なにそれ

:ますます羨ましい

:微笑まれた、って何!?

:羨ましすぎるでしょ!!

:あ~、いいなぁ。そういう体験してみたい

:本当にズルい


「あの映画も噂に聞いていた通り面白くて、最後の方は夢中になって見ちゃったな。一瞬だけ、彼と一緒に映画を見ていたということを忘れるぐらい」


チャット欄▼

:いやいや忘れちゃ駄目でしょ

:薄情な女だ

:そんなことある?

:それぐらい素晴らしい作品だったということ

:でも、あの作品が素晴らしかったのは同意する


「終わってから余韻に浸ってボーっとしていたんだけど、ふと横を見ると彼が私の顔を見て笑ってて」


チャット欄▼

:それは笑うか

:いい雰囲気そう

:不機嫌じゃなくて良かった

:笑ってくれるならよかったじゃん

:こっちまで嬉しくなってきた

:これは完全に惚れてるわね

:お似合いカップル


「それで私が照れちゃって、顔が熱くなったりした。その後は映画館を出て、近くのカフェに移動したよ」


チャット欄▼

:映画の感想を語り合うのか

:2人でカフェか

:デートの締めくくりとしては最適だね

:楽しめたんだろうな

:これぞ理想のデート


「そうそう。そこで映画の感想を話したんだけど……」


チャット欄▼

:彼の評価は、どうだった?

:気になる

:男性の評価を聞きたいな

:って、どうした?

:表情が暗いが

:いやまさか


「実は、彼の評価があんまり良くなくて……」


チャット欄▼

:え

:まじ?

:そんなに?

:予想外だ

:期待外れだったとか?

:いやだから、男性は映画なんて見ないよ。映画館に行くのも嫌がるでしょ


「彼は映画をよく見ているらしい。普段は恋愛映画を見ない、と言ってたけど」


チャット欄▼

:じゃあ、あの作品の何が気に入らなかった?

:あの作品のどこが不満なんだよw

:女性と男性で、評価が違うということか

:男から見ても面白いと思うけどなぁ

:映画の選択ミスか

:アレで駄目なら、他にどんな作品を見せればいいんだ?


「彼は、アクションの映画が好きだと言ってた。それを選んでおけば、間違いはなかったかも。とにかく、事前に相談するべきだった。何の映画を見ようか、って」


チャット欄▼

:そっかそっか

:やっぱり勝手に決めたらダメか

:相手の好みを把握してからじゃないと

:それぐらい分かりそうだけど

:いやいや、実際にやってみないと分からないよ

:私も同じ失敗をしてしまいそう

:男性は女に合わせるべきじゃない?

:その考えは古いよ。だから、女性たちは男性に嫌われてきたんだ

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