第24話 雑談配信2 ※天川有加里視点

 彼に関する情報について絶対に漏らさないように気をつけながら、ざっくりとしたイメージだけ伝えてみた。すると、視聴者から様々な反応が返ってくる。


チャット欄▼

:そんな男と出会えるなんて、運が良すぎ

:どう考えても、そんな男なんて存在しないだろ

:なぜ出会えたのが私じゃないんだ

:私だったら、もっとスムーズに対応できるけどね

:もっと詳しく教えてくれ

:知りたい

:なぜ隠すんだ


 羨ましいとか、信じないとか、もっと詳しく教えてほしいとか。視聴者が私の話に食いついているのを強く感じる。


 彼の話だからこそ、というのは十分に承知している。男性に関する話なら、どんなことでも聴きたい。私の配信には、そういう女性視聴者が見に来ている。ちゃんと、現状を把握している。だから私は調子に乗ったりしない。直人くんの魅力を視聴者に伝えるため、しっかりと話す。それが、私の役目だ。


「それで、悩みがあるって私が言ったら、彼が話を聞いてくれそうだった。だから、落ち着いて話せる場所に移動しようって事になって」


チャット欄▼

:ナンパかよ

:危ない女にホイホイついて行くなんて心配ね

:ダメだよ、こんな危ない妄想女について行ったら

:よく誘えたね

:私だったら無理だね


「何もしないって。ちょっとお話するだけだから」


チャット欄▼

:そう言って連れ込むんですね……

:通報しました

:羨ましい

:普段から、あんなことしてるんだから。信じられるわけない

:やめとけ

:男の子が可哀想


「あー、で。実は、彼と一緒に学生服の女性が居て」


チャット欄▼

:女か

:なんだ女か

:そりゃそうか

:一緒に女が居たのね

:学生が付き合うなんて。けしからん

:まあ、それだけ魅力的な男の子なら相手も居るだろうね

:残念でした

:その学生の女が羨ましいぃぃぃ

:私が学生だった頃、そんな幸せな日々は存在しなかった……

:ぐぬぬぬ


 彼の幼馴染の麻利恵ちゃんについても話す。彼女に関する情報も漏らさないように注意しながら。すると多くの視聴者が、彼女に対して嫉妬し始める。その気持ちは、私もよく分かる。学生の時から男性と一緒なんて、羨ましいよね。


「3人で移動しようって話になったんだけど、お店を探すことから始まって」


チャット欄▼

:探す必要ある?

:ホテル直行でよくね?

:金はあるのか

:私なら奢れるぞ!

:お前じゃねぇw

:学生をホテルに連れて行こうとするなwww

:捕まるわ!!


「近くにファミレスがあったから、そこに入ったよね」


チャット欄▼

:ファミレスか

:もっと良い店に連れて行ってあげなよ

:出会ったばかりの相手と高級店に行くのは難易度高くない?

:怖いでしょ

:恐怖でしかない

:一緒に居た女の子にも優しくしろよ


「もちろん、2人の食事代は私が払ったよ。私のほうが年上だからね」


チャット欄▼

:それは当然

:ドヤ顔で言うことじゃない

:相手は学生でしょ。当たり前だろ

:最近、ミルキーちゃん収入が減ってるんじゃないの?

:大丈夫なのか?


「まだ生活に余裕はあるから全然大丈夫よ。でも、ファミレス代は結構高かったな。彼が、意外とたくさん食べる人だったから」


チャット欄▼

:彼が? 彼女じゃなく?

:それは意外だ

:よく食べる男の子は良いね

:私の知り合いの男性は、心配になるぐらい食欲がないよ

:食欲がない男の人が多いって、よく聞く

:だから、健康的なのか

:ちゃんと食べないと大きくなれないよ

:腹いっぱい食べさせてあげな


「そうそう。男の人は、もっと食べたほうが良いよね。私もそう思う。だから、彼の食事する様子は見ていて気持ちよかったよ」


チャット欄▼

:へぇ~

:ふぅん

:ほぉ

:なるほどね

: ぐぬぬ。羨ましいぞ。私も、その様子を生で見たい


「で。食事しながら、自己紹介したよ。それで、このチャンネルも彼に教えた」


チャット欄▼

:踏み込みが早い

:チャンネルを教えたのかよ

:まじで? このチャンネルの存在を?

:軽蔑されそう

:妄想話の動画なんか見られたら、一発で嫌われるだろ


「彼、WeTubeを知ってたよ。ペットの動画とか、よく見るんだって」


チャット欄▼

:かわいい

:知ってたか

:私もよく見る。一緒だね

:男性も見るのか

:他の動画は見ないでしょ

:見るのは、そればっかりなの?


「逆に彼女の方は、WeTubeは見たことないって」


チャット欄▼

:マジか

:近くに親しい男性が居るなら必要ないよね

:満たされているのか

:そういう事?

:のめり込んでいる私達とは違う人種だ

:ますます羨ましい


「それで、妄想話の動画も彼に見てもらった」


チャット欄▼

:うわぁ

:えぇぇぇぇ

:そこまでする必要あった?

:セクハラですよ!

:妄想の動画を見せたのか?

:男性に見せるものじゃないだろ

:精神的被害で訴えられそう


「でも、彼は興味深そうに私の動画を見てくれたよ」


チャット欄▼

:まじで?

:意外だ

:そう見えただけでしょ

:実際は……

:信じられないのよね


「妄想の話やデートプランについて、色々と感想やアドバイスも貰ったよ」


チャット欄▼

:アドバイスまで!?

:リアル男性の意見は貴重ですよ!

:どんな反応だった?

:はよ聞かせて

:聞きたいような、聞きたくないような


 視聴者が、待ちきれない様子を見せる。私は、焦らすことなく話し続けた。彼からもらった意見やアドバイスについて、視聴者にも共有していく。配信は、盛り上がり続けていた。


 視聴者の数も、いつの間にか1000人を超えていた。その数値は、私の過去最高だった。こんな多くの人に雑談を聞かれるなんて、長い配信者活動の中でも初めての経験である。

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