第38話~妹ちゃん命名~

 ふはははははー! 我、帰還せし者なり! 館山牧場に帰ってきたぞー!!!



「おー、久しぶりだからファーも高ぶってやがる。このままレースの感覚も忘れてなきゃ良いが」



 館山牧場に帰ってきた俺は館山牧場長に引かれて久しぶりのマイ馬房に到着する。おぉ、俺が帰ってくると聞かされていたのかめちゃくちゃ綺麗になってやがるな。



「にしても……お前、太ったか?」


『な、なにぃぃぃぃぃ!?!?!?』



 館山さんが俺の馬体を見てそんな判断を下す。馬鹿な!? 果物も食べずに頑張って普通の運動量の1.2倍をこなしシェイプアップに勤しんだこの俺様が? 太った、だと!?



「うわ、馬体重も……40kgも増えてやがるじゃねぇか!?」



 俺が稼いだ賞金で買ったと聞いた馬の体重計に記された俺の体重を見た館山さんが頭を抱える。うそん……!



「こりゃ早めに調教を再開してみるか。見る限り怪我の後遺症は無さそうだし、軽く始めてみて荻野さん達の判断も仰ごう」



 嫌だァァァ!!! もうちょっとグーダラ遊んでいたいんだァァァ!!!



『あれ、お兄ちゃん?』


『館山さっさと調教に行くぞ! 俺は今猛烈に走りたい気分なんだ!』



 妹ちゃんに再会した。



***



『なんかね、またここに連れてこられたの!』



 妹ちゃんが言うにはその言葉の通りで、なんでも俺のために連れてこられたらしい。あー、確かに俺ってばフェイと妹ちゃんの時にしか本気で調教しないからね。


 今はフェイの奴と張り合って怪我するよりも、調教に慣らすために2歳の妹ちゃんと牧場で軽く走らせた方が良いって訳なのかな?



『お母さんも元気そうだったよ? 顔合わせた?』


『え、いやまだ』



 会えねぇぇぇぇ!!! 実は弥生賞から1勝も出来てないし怪我して春競馬を棒に振ったって言えねぇぇぇぇ!!!



『なんかね、私たちの弟か妹が生まれるらしいの』


『おぉぉぉ!』


『でもね、妹だったらお兄ちゃんを取られる気がして……私、こんな事考えちゃうんだけどおかしいのかな?』


『おかしくないさ。俺も妹ちゃんが俺より産まれてくる下の子ばっかり見てたら取られたって感じる』



 多分感じない。普通に俺も一緒に生まれた幼子を甘やかすと思われる。でもそれを口にはしないよ。



『あっ、そうだ!』


『どしたの妹ちゃん。俺が相変わらず格好いいのは指摘しなくて大丈夫だぜ?』


『そうだけど違うの。私ね、もう妹ちゃんじゃないの!』



 格好いいのは否定しない、最高か!? ……え、妹じゃ、ない……?



『お、お兄ちゃんを嫌いになったのか!? そうなんだな!? そうか太ったからだなっ! ちょっと待ってろ今すぐ痩せるぜ!』



 ちくしょー! 確かにこんな身体じゃお兄ちゃんなんて呼んでもらえる訳ねぇな! 頑張って1週間で痩せてやる!!!



『え? え? なんの話? 嫌いになんてなる訳ないよ。あとお兄ちゃんは太ったんじゃなくて馬体が成長しただけのように見えるけど』


『……本当?』


『うん、お兄ちゃんの事は大好きだよ?』


『でも妹じゃないって……』


『だって私、妹ちゃんじゃなくてちゃんとした名前貰ったもん!』



 なん...…だと!? あれだけ悩んでた宮岡さんがついに妹ちゃんの名前を決めたらしい。



『カーテンコールって名前。なんかね、お兄ちゃんのために付けたんだって』



 カーテンコール、それが妹ちゃんの名前か。可愛い名前じゃないか。カーテンコールには確か意味があったはずだ。えっと……演目とかで使ってたはず! クソ、これだって具体的に言えない。



『そっか、名前貰ったのか。ならこれからはコールと呼ぼうかな』


『うん。それで、デビューも多分決まったんだよ! まだ具体的な日付は知らないけど』



 俺は予め、自分がデビューするまでの出来事を話しておいてある。母さんも恐らく同じことをしたはずだ。だって俺にもしたんだから。つまりコールがデビューの近い事を把握してることになんの不思議もない。



『そっか……頑張れよ。俺もどうやら近々走るらしい』


『そうなの? じゃあさ、どっちも1位取ろうよお兄ちゃん。私頑張るから、ねっ? ……だ、だめかな、お兄ちゃん?』



 いいに決まってんだろぉぉぉ!?!?!? 待ってろ妹ちゃん……いや、コール! 今度のレースじゃ100馬身突き放してやるよ!!!



『本当? 嬉しい。じゃあさ、久しぶりに走ろう?』


『あぁ』



 という訳で久しぶりに妹ちゃんと併走してみました。うおっ、思ったより速いぞ妹ちゃん!?



『ちょ、もう、無理ぃ』



 と思ったがすぐに体力は切れる。これじゃあ皐月賞に出ても体力が切れるんじゃないだろうか? フェイの奴もそうだった気がする。コールは恐らくマイラーだ。



『あ、相変わらず、お兄ちゃんは体力すごいね』


『コールの走りも目を張る物がある。これからも磨き続けたらきっとスピードなら俺を超えるさ』



 そんな感じで牧場での生活を満喫しながらコールにハムハムとグルーミングをしたり、久しぶりに出会った母さんに怪我したことがバレて怒られたりもした。そして時が経ち……。



『お兄ちゃん、今度会った時に私の勝利の報告、ちゃんと聞いてね?』


『あぁ、俺も楽しみにしてる。また会おう』



 まぁ、いつ走るかは分からないから後日に報告することになるだろうけどな。そして俺とコールは一緒の馬馬車に乗せられ、同じ美浦トレセンに連れてこられた。



『お、お兄ちゃん……ま、また、会ったね……ぷぷぷっ』


『うるさい!』



 ニヤニヤしながらこちらを見てくるコールに声を荒らげる。……これ、同じ日に走るパターンですか?



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需要あるのか?と思いつつ書いてみた


競馬歴:1年半ぐらい


好きな競走馬:コントレイル・キセキ・サニーブライアンなど


推し馬:マカヒキ・サリオスなど


好きな現役競走馬:ピクシーナイト・タイトルホルダーなど


現役推し馬:ビーアストニッシド・ステラヴェローチェなど


好きなウマ娘:ライスシャワー・キングヘイローなど


好きな競馬小説:12ハロンのチクショー道など

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