婚約破棄された瞬間に思い出したの前世が現役ヤンキーでした。
谷絵 ちぐり
第1話 〇か✕か
「リリアナ・ラドック、貴様との婚約は破棄する!」
リリアナは目をそらすこともせずじっと目の前の男を見ていた。
「貴様は自分の身分が上だということをかさにきて私のミナを激しく虐めていたそうだな」
リリアナは一つ頷き、男の背中に隠れるようにしてこちらを伺っている女を見た。
「そのような者は私の伴侶にふさわしくない」
リリアナはまた一つ頷いて男に視線を戻した。
「・・・・・・リリアナ、お前聞いておるのか?」
リリアナは頷いた。
「・・・申し開きがあるなら申せ。最後に聞いてやる」
リリアナは辺りを見渡した。
リリアナの周囲は綺麗に円を描いたように人がいなかった。
リリアナは首を傾げながら、遠巻きにしている人々に問いかけた。
人差し指を自分に向ける。
人々が皆、首を縦に振る。
それを見たリリアナがもう一度念を押すように自分を指さす。
人々はぶんぶんと首を縦に振る。
リリアナは手を横に振る。
人々は手のひらを上に向けながら頷く。
リリアナは再度盛大に手を横に振る。
人々も再度どうぞどうぞとする。
リリアナは盛大にため息をついた。
「好きにしろや」
男は思わず息を飲んだ。
ミナと呼ばれた女はこれでもかと目を見開いて驚いている。
人々も唖然とした。
リリアナは唖然とする人々に向けて、親指を立てた。
人々は首を横にぶんぶん振った。
リリアナはまたも首を傾げた。
瞳が、違った?と問いかけている。
人々はぶんぶんと首を縦に振る。
リリアナは腕を組み考え始めた。
「っなっ、なんなんだお前は!この俺に向かってなんて口のきき方するんだ!」
男は激昂した。
リリアナは男を手で制した。
人々は、リリアナが今考えてるだろという目を男に向ける。
視線の圧に負けて男は黙った。
すると、リリアナがポンと手を打った。
そして男の影にいるミナと呼ばれた女に目をやった。
「好きにしろや」
どうよ?と得意げな顔で辺りを見回すリリアナ。
言った相手が違うってことじゃないよ?と人々は目で訴えかける。
リリアナは腕を交差させて、問いかけた。
人々も、総出で腕を交差させた。
リリアナはガックリと頭を垂れた。
そして、首を横に振りスタスタとその場を去るように歩き出した。
「待て!お前なに考えてるんだ!勝手にこの場を去ることなど許さん!」
リリアナはくるりと振り返り言い放った。
「うるせえよ。つかお前誰だよ。婚約破棄だかこんにゃく廃棄だか知らんけど好きにしろや」
歩きづれぇな、とリリアナはハイヒールを脱いで裸足でペタペタと歩き出した。
スカートも長すぎんだろ、とドレスの裾もよっこいせと持ち上げ歩いた。
そして、大きな扉の前に立ち首を傾げて振り返った。
「誰か、私の家知ってる?どうやって帰りゃいいの?」
人々の輪の中から深い紫の髪の美丈夫が歩み出てきた。
「私がお送りしましょう」
と、そっと手をさしだした。
「ねえ、それ染めてんの?」
リリアナは手をとらない。
紫髪男は苦笑しながら、衛兵に扉を開けさせた。
あ、そうだ、とリリアナは振り返って大きな声で言う。
「あのさー、リリアナって私だよね?さっき死んだみたい。そこのいけ好かない男に嫌われてたのがよっぽどショックだったんじゃない?んで、私が生き返った?みたいな。知らんけど。私リリコっていうの。だから、そこのお前らは勝手にしろや」
あースッキリした、とリリコは裸足でスキップしながら去っていった。
後にはハイヒールだけ残して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます