死にたい男の夢(完結)

Unknown

第1話 もう気が狂うほど気が狂う!

 最近寒くて嫌だ。もう死にてえなあ。発達障害も精神病も受け入れてはいるが、辛いことに変わりはない。仮に宝くじ5億円当たっても俺の死にたさは消えないと思う。仮に愛する人がいたって俺の死にたさは消えないと思う。結局のところ、俺の心が戦場だから、いくら物質的に満たされたところで、きっと俺は死にたいままだ。


「明日世界が滅びます」と言われても、おそらく俺は何もしない。「それならそれでいいや」と言って、何もしない。


 俺は死にたいのだが、夢が一つだけある。


 バンド組んで成功する事だ。


 日本全国の引きこもりの死にたい男女を一つのライブハウスに集めてやる。それが俺の最近の夢だ。


 ベースを弾いてくれる男と、ドラムを叩いてくれる女が見つかった。俺はギターとボーカルを兼務する。ちなみにベースが25歳でドラムが26歳で俺が26歳だ。世代的にめっちゃ丁度いい。


 メンバーは集まった。あとは革命を起こすだけだ。


 もう書くことがない。


 死にたい。


 俺(26)は酒を飲んでタバコ吸って、ギター弾いてる。働きもせずに。


 工場で1年半くらい働いてたことあるけど、もう2度と俺は定職には就かないと今ここに誓う。働いたとしてもバイトだけにする。だって働くの辛いんだもん。


 俺の無味乾燥な人生に、夢という名の水を与える。旱魃した人生に夢という名の潤いを与える。


 俺は最近、とても死にたいが、それ以上にやる気が満ち溢れている。


 やれるところまでやってみる。


 首吊りして、失敗して、今も生きてる。くだらん。


 ◆


 死にたくて仕方ない。酒とタバコと精神薬で死の欲動を誤魔化す日々。もう気が狂うほど気が狂う。いかれた。俺はいかれた。自分の頭を何度もぶん殴った。俺は椅子から崩れ落ちた。


 俺は何をやっているんだろう。


 先日、俺はSNSで仲良くなった女の子と肉体関係を持った。彼女の細い腕は、俺の腕と同じように自傷でめちゃくちゃだった。彼女の笑った顔が、枯れてしまった桜のように切なく映えた。


 アレの後の虚無も相まって、俺は死にたくなった。彼女に背を向けて俺はタバコを吸い始めた。銘柄は赤のマルボロだ。ホテル代だけ払った。


 ああ今、俺の中で確実に何かが死んだ。と思った。


 あー、もう気が狂うほど気が狂う!!!


 気持ちいい。かわE。かわヨ。


 俺は何やってんだ。何回同じことを繰り返すんだ。


 俺は極悪非道だから、たまに女とセックスする。


 もうこんな繋がり必要ない。ちんこを切り落としても後悔しない。と言いつつ、いざ切り落としたら絶対後悔する。


 もう気が狂うほど気が狂う……!!!


 結合部がエロい。今日も生きてて偉い。やっぱりロックンロールだねー。


 論客、用無し!!!!!!!!!!!


 やばい、やばい、まじやばい。気が狂うほど気持ちええんじゃ。


 気が狂うほど気が狂う……!!!!!!


 答えなんかどこにも無い。


 酒を飲めばすぐに忘れてしまう程度の絶望しか俺には無い。部屋に広がるタバコの煙。部屋に転がる酒の缶とビン。ジャキジャキ鳴らすギター。答えなんかどこにも無い。中にも外にも無い。


「中に出すのはやめてね。」


 ああ、わかった。ところでお前はどこの誰なんだ? 貴様はどこの誰なんだ? テメェはどこの誰なんだ? 


 誰なんだ!!!!!!!!!!!!


 もう気が狂うほど気が狂う!!!!!!


 貴様の腕のタトゥーの“蝶”がとても綺麗。


 何歳の時に入れたの?


「21のとき」


 ネオンの光。街の光。電車の光。お前の名前は「ひかり」ちゃん。


 もう気が狂うほど気が狂う!!!!!


 先生、あなたの審美眼は狂ってる。先生、あなたは俺に「良い子」とか「天才」とか言ってたな。


 もう、気が狂うほど気が狂うよ。


 俺は独りの部屋で無感情な涙を流した。


 そして俺は酒に酔い潰れて、また寝てしまったのであった。


 ひかりちゃん、アイ・ミス・ユー。ひかりちゃんを優しく抱きしめた。


 俺は、全ての絶望も希望もアルコールで希釈して飲み干してしまうだけ。


 もう気が狂うほど気が狂うほど気が狂う。


 あの日、好きだった女の人のことを今も忘れられん。俺の全てをあなたのものに出来たら、どれほど幸せだろうか!!!


 論客、用無し!!!!!!!!!


 真夜中の闇の中、死神が俺を手招いている。俺は死神とは手を組まない!!!!


 もう気が狂うほど気が狂う!!!!!!


 酒で森羅万象を飲み込む。


 貴様を飲み込む。俺自身を飲み込む。そして、その部屋にはもう誰もいなかった。






 次回に続く


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