第46話 君嶋という娘
テレビ局で働く君嶋伊織は茶髪でゆるふわな今をときめく23歳。
とある日に偶然ダンジョンへと入り、落ちていたナイフで瀕死のゴブリンを討伐した。
運がかなり良いのだろう。
偶然ダンジョンに入り、偶然落ちていたナイフで偶然瀕死のゴブリンを討伐し、偶然ユニークスキルを得た。
こんな世界中の人間が羨やむ様な幸運は、かなり珍しい事だろう。
それがある日、世界中の人間が哀れむ様な不運に見舞われるとは思いもしなかった。
テレビ局のお偉様に呼ばれ、探索者ランキングの1位についての情報を調べてこいと依頼された。
無事にターゲット宅に侵入し、あとは情報を得るだけだった。普通の人ならこれでけつの毛まで抜かれる勢いで個人情報を抜かれるところだろう。
しかし、相手が悪かった。
恐怖に怯え、鳥肌が立つ程の存在感に身震いし、絶対に逆らってはいけない存在なのだと感じた。
テレビ局へと戻り、事の顛末を話す。
「絶対関わっちゃいけません。絶対です。特に家族には触れちゃいけません。家族に被害があろうものならこのテレビ局は物理的に潰されて終わりです。」
番組を制作するディレクターは、不動の情報を得られるものとして様々な準備をしていた。
「君がそう言うならそうなんだろう。でもテレビマンはそれでも番組を作るのが仕事だ。」
「絶対にだめです。」
困り果てたディレクターは、ブルブルと恐怖に怯える君嶋に温かいコーヒーを渡す。
「ありがとうございます。けど本気で辞めてください。彼は人間では無いのかもしれないのだから。」
「人間ではないって?」
「あくまで直感ですけど、人間本来に備わっている人間らしさが極端に無い気がしたんです。勿論家族にはありましたよ?でも敵と認識した人にはほんの少しも慈悲を与えてはいない様に感じました。」
「ふむ。やばい系?」
「イエス。やばい系。」
悔しくも番組を作る事を諦めたディレクターは、次の手として今活躍中の探索者の特番を作る事を計画した。
ランキング上位の探索者をスタジオに呼んで、ダンジョンや探索についてトークをしてもらうという番組だ。
色んな探索者を呼べば、ランキング上位者を呼んでいるだけですよという理由を作る事が出来ると思ったからだ。
「なんかディレクター、ニヤニヤしてますけど良からぬ事を考えてません?」
直感的にこのテレビ局にいたらやばいと感じた君嶋は辞職する決意をするのであった。
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