2023-1-31
今日で弁当が終わりだ。2月からは午前授業なので。私の親は共働きで弁当にかける時間がないことも理解している。冷凍食品が多かったが、たしかに愛情は感じられていた。しかし今日は最後の弁当だからか、私の好きな麻雀牌の柄が彫られたリンゴが入っていた。しかも幼稚園の頃使っていた弁当箱に。幼稚園の頃の弁当箱をみると泣きそうになった。家に帰り、誰もいない家にただいまという声を響かせる。暫く家事をしていると母親が仕事から帰ってきた。おかえり、と声をかける。弁当のお礼はいつも言うのだが、今日はリンゴについて触れてお礼をした。それは高校三年間のお礼も確かに込めているお礼だ。母親はあんなの十数分程度でできるよ。と言ってきた。無愛想に感じるかもしれないが、いつもより空気が温かかった。十数分を程度と表現することが私には愛情の表れに思えてならなかった。母親にとっては姉と兄、そして僕。合わせて九年間も毎日弁当を作っていたことになる。本当にお疲れさま、そう伝えた。その時も、今も私の目頭は熱くなっている。なにか寂しい。別れの季節。人では無い物と別れることも喪失感という面では、歩んできた時間に比例するのだろう。
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