第15話 迷いとその行方の夏祭り
先日の海の日から1週間。明日は夏祭りの日がやってくる。実は約束していた。
だが俺はすごく悩んでいた。
主に理由は2つ。
・中野さんに明日、告白するかしないか
これはクラスは一緒だったものの、俺が助けてなければ出会えてもいないし、しゃべるようになってすぐ告白しても相手はほぼ100%俺のことを好きではないからだ。
だが、せっかく恋していることに気付いたのに言わないと、俺の中でもやもやして仕事などでミスする可能性があるため、どうにかしなくてはならないのだ。
そしてもう一つ、これは恐らく考えても意味ないのだが、
・仮に告白して、付き合うことになった場合、自分の正体をあかすかあかさないか
2つとも事務所的には報告さえすればOKではあるのだが、彼女は生粋の上野明ファンなので、ファンとして意識されたら申し訳ないような気持ちになる。
さてどうしようか?
かれこれ一時間は過ぎたと思う。結論は出ない。一つ言うなら、告白しても恐らく付き合えないので、2つ目については考えないことにした。
恐らく付き合えないのなら言わなければいいじゃんと思う人もいるだろうが、俺は失敗したらしたで気持ちの整理がつくのでむしろした方がいいまである。というかしてるだろう、自分がヘタレじゃなかったのなら。
◇
結果答えは出ず夏祭り当日。今日は海の日のことが嘘のように楽しめている。
夏祭りっぽく金魚すくいしたり、フランクフルトやかき氷を食べたりしていた。
この後は時に予定もなく適当に祭りをまわるるつもりだったのだが、雅が
「たしかこの左側に射的があるよな?」
「だねー!」
「右側には輪投げがあるぞ」
「じゃあ二手に分かれてどっちがたくさん景品とれるか勝負しないか?思い出作りとしてさ!」
「なんか楽しそうですね!やりましょうか」
「私もやる―!」
「俺も賛成だな」
「よしきまり!でも射的ってどうしても不利になるよな?どうする?」
「射的だけ一つにつき2点にすればいいんじゃないか?」
「お、栄太いいねーそれでいこう!」
「じゃあチーム分けするぞー!」
結果、俺と中野さん(射的)、雅と未海(輪投げ)となった。
「よろしくお願いしますね、早川君」
「ああ、よろしく中野さん」
ルールは時間制ではなく回数、終わったら花火の見れる場所で集合となっている(場所共有済み)。
俺たちはさっそく射的に向かった俺たち。だが俺は驚いていた。
中野さんが急に才能を発揮して全弾命中させた。
「中野さんすごくない?優等生ってこういうのも補正かかるのか...?」
「そういう早川君も一度外しただけじゃないですか」
「中野さんがすごすぎて俺が全然みたいになってるんだよなぁ」
「思い出にはなったのではないですか?」
「たしかにな、思い出に残るいい射的だったということにしておこうか」
俺は今、気分がのっているとでもいうのだろうか?彼女と話していて、心が満たされていくような感じがする。
射的も終わったので、話をしながら花火を見る集合場所に来たのだが、まだ雅達は来ていないようだ。すると、
「あの...早川君」
「どうしたんだ?」
何だろうと思っていると、
「恋愛相談に乗ってもらってもいいですか?といってもあなたの意見が聞きたいだけなのですが...」
「俺に?」
「はい、気軽にしゃべることのできる異性があなたしかいませんので...」
「いいけど、俺は彼女いない歴=年齢だってことだけは言っておくよ」
「わかりました」
なんで中野さんが俺に恋愛相談???とは思ったのだが、理由を聞いて納得した。
そしてそれと同時に昨日からずっと悩んでいた告白をするかしないかという考えは消え去っていった。
「私、好きな人がいるのですが、告白しようか迷っているんです。早川君だったらどうしますか?」
まさに俺が悩んでいたのとまったく同じなのが来た!まぁ俺の場合は俳優をしているから悩んでいたけど…。してないんだとしたら答えは決まってるな。
「俺だったらすると思う」
「何故ですか?」
「言ってOKが出たならうれしいからいいけど、OKが出なかったときはたしかにショックは受けるかもだけど、言わずにずっとモヤモヤしているよりかは気持ちが楽になるからかな」
「そう...ですか、ありがとうございます」
「どういたしまして...ん?あれ雅達じゃないか?」
「え?どこですか?」
「えっと...あの手繋いでるやつ...」
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