第52話

 けれど、俺の家には当然だが玉座や王室なんてなかった。


「一体? これからどうするんだー!?」

「ほひいちゃん? 何もないよ……?」 


 妹が花柄模様の壁のキッチンテーブルを前に佇んでいた。

 キッチンテーブルの上には二人分の朝食がポツンとあるだけだった。


 影の王国って?

 一体?

 どこだ……?

 どこにあるんだ……?


 その時。


「うぎっ!」

「な、何!? おにいちゃん!! 地震!?」

「光!! 伏せろーー!!」

「……伏せていいの?」


 また天地を揺るがすような大きな地震がキッチンの家具を揺れ動かせた。

 巨大な地鳴りに耳を塞ぎたくなる。


 しばらくして、辺りは静寂が支配した。


 どうやら、光と一緒に気を失っていたみたいだ。

 倒れていた床から立ち上がって、周囲を見回してみると、ここは俺の家のはずだった。


 なんともない……。

 花柄模様の壁はあれだけの揺れでも亀裂すらないし。

 キッチンテーブルの上の食器も無事。


「光……。外へ出てみよう」

「うん……」


 起き上がった光はいつも通りに元気一杯だったのが、唯一の救いだ。


 家の外も無事。

 何事もない。

 近所の家が倒壊しているとかもない。

 

 無事なのは本当に良いが、激しい揺れは俺たちの錯覚だった??


「うん?」


 俺の家の郵便箱には、また何かが飛び出していた。 

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