第22話

 異様な雰囲気が包み込んでいて、本当にここは虎倉街なのかと俺は思った。

 周囲の生活の音が木霊して、自動車も影が運転している。

 自動車のクラクション、チャイムの音、「行ってきまーす」とかの日常会話。


 音だけはそれぞれのいつもの喧騒が聞こえてくる。

 だけど、全て影たちによるものだった。

 ここでは影たちが生活をしているんだ。 


「な……なんだってんだ! ここも影の世界なのか?!」

 

 俺は暴走する不安を、一旦立ち止まらせた。

 ここは表の世界のはずだ。

 そう、俺たちの世界だ。

 だけど、辺りは影たちが生活をしていて、普通の人が一人もいない。


「と、とりあえずはだなあー。近所を調べてみようか……」

 

 

 幾度も通行人の影を過り。

 しばらく歩くと、俺の家があった。

 郵便箱にはまた何かが飛び出しているが……。

 普通に建っている。 

 うん。俺の家だ。


 中へ入ってみよう。

 

「うぎっ?!」


 …………

 

「なんか言った? ほにいちゃん?」

「うん? いや……」


 中にはもう一人の俺と妹がいた。

 普通に生活をしているようで、大好物のショルダーベーコンをもう一人の俺が食べている。妹の光はパンを頬張り。これから学校のようだ。


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