その1 第六話
「あー、カルブルム様、聞こえてますかー?」
極彩色の翼を退屈そうに動かしながら、通信を行う。骨と皮ばかりの細腕を持ち上げて、通信機から聞こえてくる声に耳を傾ける。
「ええ、ええ、はい。奴らはもうじきここへ来るでしょう。ええ、はい。ええ、全ては貴方のために、カルブルム」
通信を切断し、鳥男は外を見る。
「やれやれ……」
パラミナ・アリンガ
「……敵の気配がないが」
「気を付けろよバロン。パラミナってのは奇襲が得意なんだ」
ビークル用の通路は非常に幅が広く、高い壁には無数のキャットウォークが添えられているため、この通路の中央を歩くバロンたちくらいであれば、容易に虚をつくことができるであろうのに、パラミナの兵士はただ一人として見えなかった。
「なぜだ、なぜここまで敵がいない。ゾルグのように伏兵を用意していたとしても、ここは元々パラミナの領土。我らが破壊をためらうこともない」
「……アーヴェスとは、時間を稼ぐとか、そういった戦略の得手不得手はあるのか」
「ない。やつはラーフが言った通り、性格上の癖はあるが、戦いは癖がない」
「……まあいい。アーヴェスに会えばわかることだ」
通路をしばらく駆け抜けると、次第に塔が近付いてきた。
塔の麓にある鉄の扉を開けると、擂り鉢状の空間があった。その中央にある巨大な鉄の筒へ三人は降りた。
「……エレベーター」
「上に行くしかあるまい」
「……ヴァルナ、ここで待っていてくれないか?どうもここまで何もなかったのが気にかかる」
「よかろう」
「俺はバロンに付いていっていいのか?」
「……ああ。ラーフとの通信は君の役目だからな」
バロンとヴァーユは鉄の筒の中にあるエレベーターに入り、上へ向かった。
エレベーターのドアが開くと、白塗りの壁と灰色の床が続く通路に出た。
「……ニブルヘイムの建物とは意匠がえらく違うな」
「あー、そうだな。なんでも、Chaos社とかいう大昔の企業が作ったビルらしいぜ」
「……それにしても不気味だ。アレフ城塞の時のように、最小限の警備すら見えんが……」
二人は通路を進む。荒れ果てた通路の横には、会議室や、休憩室など、用途別のプレートが張ってあるドアが並んでいた。通路を抜けると、ガラス張りの大きなスペースに出た。バロンは不意に流れてきた殺気に反応し、咄嗟にヴァーユを抱えて飛ぶ。
「な、なんだぁ!?」
二人が体勢を立て直すと、今さっき通ってきた通路から何かが飛び出してきた。極彩色の外套に身を包んだ男が、緩やかに立っている。
「アーヴェス!」
ヴァーユが叫ぶ。アーヴェスと呼ばれた男は、外套を脱ぎ捨てて答える。
「いかにも。久しぶりだなヴァーユ。まさかゾルグとコーカサスを撃退するとは思わんだったが」
「……僕たちの前に現れたということは、戦う意思があるということだな?」
「そりゃあそうだろうよ。なんで戦う気がないのにこんな敵の拠点に居るんだよ」
アーヴェスは飄々としていながら、その瞳は何の感情をも映してはいなかった。
「……構えろ」
「バロン、お前に一つ聞こう。黒崎奈野花……この名前に覚えはないか?」
「……ゾルグも言っていた。その名の意味は!?」
「知らん!俺も主からそう聞けと言われただけだ。女の名のようにも聞こえるが……まあいい。とにかく俺の役目は、ただお前と拳を交えるだけだ」
アーヴェスは細腕を動かし、右腕を上げ、左腕を横へ広げる。
「……その構えは……」
「フフ……我が主より授かりし拳法、お前にこそ使うべきだろう」
「……いいだろう。ヴァーユ、下がっていろ。拳での戦いに手出しは無用だ」
「わかった。死ぬんじゃねえぞ!」
バロンは拳を構えると、ヴァーユは二人の後ろへ下がる。
「えやぁっ!」
アーヴェスが右腕を振り下ろすと、斬撃が灰色の床を切り裂き、バロンの胴体にも鋭い切創を刻み込む。バロンは突きを繰り出すが、アーヴェスは左腕でそれを受け止め、右腕を振るい斬撃を飛ばす。バロンは左腕でその斬撃を受け止め、アーヴェスの体に左腕を捻り込む。アーヴェスの身体中から血が噴出する。
「……勝負あったな」
「ふん、そんなにすぐ決着がつくとでも?」
「……何」
「はぁっ!」
アーヴェスはバロンの左腕を掴むと、勢いよく引き抜いて自らの口から砂の塊を吐き出す。灰色の床に着弾したそれは、瞬く間に拡散し、バロンの視界を奪う。そして、怯んだバロンへ向けて砂の中から鋭い突きが放たれる。バロンは上体を反らして回避し、その突きを放った腕に向けて闘気を放つ。しかし、闘気は砂をかき混ぜ、天井に大穴を開けただけだった。
「……ちっ、姑息な手を。お前もゾルグと同じく、ここで僕たちを足止めするだけの捨て石だとでもいうのか」
「違うな。さっきも言っただろう。俺はお前と拳を交えればそれで十分!もはや時を稼ぐなど眼中にないわ!」
「……ならばここで終わらせてやろう」
「たわけたことを!お前はこの砂の中、俺がどこにいるのかわかるまい!」
「……ああ、わからん。だが……」
バロンはコーカサスの時と同じように目を瞑り、動きを止めた。
「ぬう!?動きを止めただと!?」
アーヴェスは困惑しつつも、それを好機とみなし渾身の拳を放つ。手を開き、勢いよく両腕を開きながら斬撃を大量に放つ。砂の煙を切り刻みながら、バロンへ向かう。バロンはその刃に被弾する直前で頭上へ鋼と共に闘気を放ち、アーヴェスの放った刃を全て打ち消す。
バロンはそのまま飛び上がり、アーヴェスの胸の中央を強く打ち抜く。アーヴェスは灰色の床に転がり、吐血する。
「……終わりだ」
先程付けられた傷と合わせて、アーヴェスは満身創痍だった。
「なるほど……これが鋼鉄のバロン!ニブルヘイム、いやこの世界で最強の勇士の力か……!ふ、っくははははは!」
アーヴェスは立ち上がり、壁沿いに張られたガラスへ近づく。
「また会おう!」
「……何を!」
アーヴェスは砂を吐き出し、ガラスを割って飛んで逃げた。
「本当にアイツだけだったな」
ヴァーユが呟く。
「……ああ」
「誰だ」
ヴァルナが睨む先には、擂り鉢状の屋内の淵に立つ赤い馬に跨がった骸骨騎士が居た。
「ほう、おのれがヴァルナか」
骸骨騎士は骨をカタカタと鳴らしながら、上機嫌な老人の声を出した。骸骨騎士は長剣を腰に携えている以外は、特に武装をしているわけではなかった。
「誰かと聞いている。質問に答えろ」
「儂か。儂は……うむ、黙示録の四騎士が一人、第二の使徒、世界に戦乱をもたらすもの。人呼んでレッドライダーじゃ」
「レッドライダー……ムスペルの兵か、パラミナか。貴様が敵かどうかも答えてもらおう」
レッドライダーは少しだけ肩をすくめると、馬から降りた。
「今の時点では何も言えぬな。儂は来るべき最後の時のため、肩慣らしをしているだけじゃからな」
「肩慣らしか。つまりこの拠点には本来、もっと兵が居たと言うことか」
「その通りじゃな。儂はこの剣が吸うべき魂を求めている。それで始めに、おのれの魂を貰おうと思ってな」
「後悔するなよ、レッドライダー」
ヴァルナは氷剣を作り出すと、羽織っていた外套を放り投げ、真っ白な鎧を露にする。
「そうでなくてな!儂も雑魚の相手は飽きてきたところじゃ、本気で来い!」
レッドライダーも長剣を引き抜き、構える。
まず始めにヴァルナが鉄の床を蹴り、擂り鉢の坂に設置されているコンソールを踏み壊してレッドライダーに接近し、目にも止まらぬ斬撃を重ねる。剣閃の軌跡に霜が降り、空気が何重にも切断され、レッドライダーの鎧を傷つける。しかしそんなことは意にも介さず、レッドライダーは長剣を振ってヴァルナの氷剣を叩き割る。咄嗟にヴァルナは新しい剣を作り出し、レッドライダーの長剣と競り合い、打ち合う。レッドライダーの長剣が左にブレた瞬間を逃さず氷剣をレッドライダーの眉間に突き入れ、僅かに怯ませる。更に一歩踏み寄り柄で顎を撃ち抜き、鋭い一撃で鎧の腹から右胸にかけてを削ぎ飛ばす。レッドライダーは後ろへ飛び退き、鎧の傷を確認する。
「ほほう、これがニブルヘイムの氷剣の死神……噂には聞いていたがこれほどとは」
「戯れ言は要らん。貴様の本気を見せろ」
「いいや、儂の本気はまだ見せられんな。まだその時ではない」
「ならばここで死ね。私たちの勝利の邪魔だ」
「わっはっはっは!儂に死はない。寧ろ儂は死を撒き散らす方じゃからな」
ヴァルナが再びレッドライダーに肉薄し、連撃を叩き込む。それを長剣を動かすだけで全て反らし、ヴァルナの腹に撃掌を叩き込んで吹き飛ばす。
「ぐっ……!この邪拳が……!」
「本気とはこういうことじゃ。剣と魔法だけで戦う気なら、この先生き残れまい。人は武器を使う。だが人の体は恐るべき力を秘めている。その全ての力を放つのはやはり、己の肉体を武器にする者のみ」
「なら貴様はどうなんだ!その剣は飾りかッ!」
「儂はいい。武器などなんでもいいのだよ。おのれのように得物があるわけではないのでな」
「信念もなく戦場に出ていると言うのか、貴様ァ!」
「戦場で特別な感情を持つ、それは人の特権じゃ。儂のような者にはそんなものを思う必要性がない」
「ここで朽ち果てろ、レッドライダー!」
氷剣で床を引き裂き、氷の波をレッドライダーへ放つ。長剣でその氷剣を破壊し、レッドライダーは馬に乗ってコンソールを蹴散らしながらヴァルナへ突進する。
「愚か者め!馬上の不利を知るがいい!」
ヴァルナは飛び上がり馬上のレッドライダーを狙い澄まして斬撃を放つ。レッドライダーは長剣の腹でその斬撃を往なすが、馬の足が凍りついてつんのめり、鉄の床へ放り出される。勢いよく床を前転し、体勢を立て直し、ヴァルナの方へ向き直る。
「そんな駄馬に乗っていて私に勝てると思うな」
「クク、面白い。すぐにケリをつけて変えるつもりじゃったが、気が変わった。お許しを、奈野花様。儂はこの戦乱の剣を以て、己の闘争本能に従います」
レッドライダーが持つ長剣がスパークを放つ。
「子供騙しか?そんなものが私に通用すると思うな」
「戦えばわかることじゃ」
一瞬だけ視線を交わすと、レッドライダーとヴァルナは互いの得物を叩きつけ合う。まるでお互いにそうなることがわかっているかのように、全く同じ剣の軌跡で打ち合い続ける。が、少しずつ、氷の破片がレッドライダーの鎧に突き刺さりヒビを広げていく。目にも止まらぬ凄まじい斬撃をそのヒビへヴァルナは繰り出す。が、少し逸れ、レッドライダーの長剣がクリティカルヒットする。左肩口が大きく切り裂かれ、血液が床へ垂れ流される。
「バカな、なぜ……」
「支配、戦乱、飢餓、そして死。脳というただ一つのものに支配された体には、戦乱を与えればよい。ただそれだけで、その体は自由を失う」
「この剣か……小癪な!」
ヴァルナはレッドライダーに蹴りを入れて長剣を引き抜き、傷口を凍らせて氷剣でレッドライダーの左腕を切り飛ばす。
「な……!流石に速いな、死神よ!」
「片腕程度では生ぬるい、貴様は生きて帰さん!」
二人が視線を合わせ、今にも切りかかろうとしたその時、上層階から轟音が轟いた。
「今の音は!?」
「(まさか……あのお方が動かれたのか……!)」
氷漬けになっていた馬が再び動きだし、レッドライダーを背に乗せる。
「すまんな、死神!儂はここに長く留まることはできなくなった!また会おう!」
「なっ!待て!」
ヴァルナの追撃を器用に躱して、レッドライダーは去っていった。
「げほっ!げほっ!だ、大丈夫かァ、バロン!」
「……ああ、なんとか」
突然の砂煙の中で体勢を立て直し、ヴァーユが剣閃で砂煙を幾重にも切り裂いて視界を切り開く。
二人の視線の先には、3mはあろうかという巨大な黒馬に乗った黒い鎧の騎士が居た。
「……な、なんだこいつは……!気を付けろヴァーユ、ただ者じゃない!」
「わ、わあってるよそんなこたぁ……」
その騎士を見た瞬間、二人の体は得体の知れない恐怖に襲われた。黒馬が身震いし、騎士が言葉を発する。
「久しいな、鋼の竜」
穏やかなその声は、まるで女性の声にも思える。
「……誰だ、お前は」
「我が名は狂竜王。そなたたちの力を見定めに来た」
「まずいぜバロン……ここであんま時間を使うわけにゃあいかねえ……!」
「……わかっている……」
「まずは拳で試すとしよう。かかってくるがいい」
「……な、何?馬から降りんのか!?」
「ふむ、それもそうか」
黒馬が掻き消え、黒い鎧が着地する。
「どうだ、これだ対等だろう」
「……くっ……」
「仕掛けてこないのか?ならばこちらから行くが」
「……!」
黒い鎧の周囲の流れが僅かに揺らめき、無数の突きがバロンの視界を覆う。バロンは思わずたじろぎ、大きく後退する。
「……(なんだ今のは……!)」
「うん?どうした、遠慮は要らん。そなたの突きなら、私の鎧を貫くことも出来るのではないか?」
「……ぬぁっ!」
バロンが右腕に鋼を纏わせ、鋭い突きを放つ。が、その鎧から噴出する何かに阻まれて、後ろに吹き飛ぶ。
「今はまだ、私と戦うときではないということか」
黒馬が再びゆらゆらと現れ、狂竜王がその背に跨がる。
「済まんな、私もまだすべきことがある。そなたの力がわかってよかった。そこなる風の剣士、そなたも用心しておくのだ」
「なんだァ……?」
「この世界はただ輪廻するためだけにあるのではない。この世界の根元に至るまで、その鋼の竜を守り続けよ」
「当たりめえだ。こいつが居なきゃ俺らに勝ち目はねえ」
「よい。では私は帰ろう。行くぞ黒皇」
巨大な黒馬は左前足で床を踏み抜くと、そのまま下へ降りていった。
ヴァルナがレッドライダーの去った後の擂り鉢で暇潰しのために歩き回っていると、突然天井が割れて巨大な黒馬が降ってきた。
「今度はなんだ!」
「む?ほう、そなたが奴の言っていた氷剣の死神か」
「貴様は?」
「我が名は狂竜王。そなたが居るとは思わなかったが、まあよい。そなたの力も測らせてもらうとしよう」
「貴様も馬から降りんのか、戯けたやつらだ」
「この馬は私の闘気を体から逃がすための一つの策でな……これを引っ込めては対等な戦いはできない。そうか、私だけが降りたら良いのか」
「……(なんだこいつは……緊張感がまるでない……)」
狂竜王は馬から降りると、軽く着地しただけで凄まじい音が鳴り響く。
「さて、ヴァルナよ。私にそなたの剣技、見せてくれないか?その類い稀な魔法の力でもよい」
「生憎私の力は大道芸ではない。貴様が全力で来んというのなら私も全力など出すものか」
「ふむ。ならば礼儀として、私の全力を少しだけ見せよう」
狂竜王の背後で黒馬が掻き消え、狂竜王の全身から瘴気を放つ。
「なんだ貴様の体は……」
「はぁぁぁぁぁーッ……行くぞ、後悔せぬな?」
「何……」
「塵と砕けよ!」
狂竜王が左腕をその場で突き出す。凄烈なまでの衝撃波がヴァルナを通り過ぎ、塔の壁を消失させて猛り狂う。
「がはっ……!」
ヴァルナの体がボロ雑巾のように宙を舞い、そして落下する。
擂り鉢状になっていた塔のフロアは、闘気の通った形に削り取られていた。
「ふう……また私の良くない癖が出てしまったな。少し闘気を弱めてしまった。許せ、そなたの望む全力を出し切ることができなかった。ん……?どうした、早く起き上がりたまえ。私がそなたの全力を受ける番だ」
「ぐっ……この闘気……ただの闘気ではない……!」
鎧が所々砕け散ってはいるが、ヴァルナは二本の足でしっかりと立ち上がる。全身から夥しい血を吹き出しつつも、氷剣を手元で作り出す。
「いいだろう、答えてやろう狂竜王。私の全力を受けるがいい!」
ヴァルナが魔力を放ち、渾身の一撃を放とうとしたとき、丁度エレベーターの扉が開く。
「……待てヴァルナ!そいつに玉砕覚悟の技を使っても傷一つ付けることなど出来ない!」
バロンがヴァルナへ駆け寄り、ヴァルナを制止する。
「なぜ止める!これほどの闘気を扱うものを野放しにはできん!」
「……無駄だ!僕たちの誰もこいつには勝てん!」
「元々命を奪いに来たわけではない。死神よ、早まるな。そなたもまた、この世界を鋼の竜が乗り越えるために必要なのだ」
狂竜王の背後に再び巨大な黒馬が現れる。狂竜王はそれに跨がる。
「死神よ、生きていれば、いずれまた会おう。それまで死んではならぬ。では、また会おう。非礼の詫びと言ってはなんだが、そなたたちが苦境に喘ぐとき、私が力となろう。……む?」
狂竜王が外を見たとき、ヴァーユの腕のコーデックが電子音を発する。
「ヴァーユ、将軍、バロン!そこにムスペルの大軍がいる!」
ラーフの大声が響く。
「……そのようだな」
「ふむ、ではこれはおまけだ。こんなところで死にかけてもらっては困るからな。そこでのんびり見ているといい」
そう言うと、狂竜王は黒馬を走らせ、真正面のゲートを蹴破って外へ出た。
バロンたちがそこから見た風景は、まさに驚愕すべきものだった。
狂竜王が馬上から片腕を振るうと、大群の機甲虫が瞬時に粉々になってゆく。殺気を交えることはなく、ただ純粋な闘気が噴出し、鳥人さえ次々と撃ち落として進む。まるで無人の荒野を走るように淡々と、しかし敵をただの一匹も残さず滅していく。
「また会おう鋼の竜!この世界の結末まで、決して死ぬことのないようにな!」
狂竜王は呑気に手を振って、走り去っていった。
後にはただ、塵芥となったムスペルヘイムの兵士が転がるのみであった。
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