少年は天狗山で死んだ

みやぎ

ゼロ

 カアアアアアッ………




 鳴く。



 日の暮れ始めた森の中。



『そこ』にとまり、こっちを、俺を見て。






 カアアアアアッ………






 一声鋭く、逢魔が時に。カラスが一羽。



 まるで『助けろ』とでも言うように。






 助けろ。






 カラスは乗っていた。人の背中に。



 それも、倒れた人の背中に。






 カラスに乗られているのにピクリとも動かないその人物の年の頃は、中学生か高校生か。



 制服。ズボン。上下の色が違うからブレザー。男。






 カアアアアアッ………






 また。






 どうするか。






 カラスの鋭い一鳴きに、逡巡していたその時だった。






 ひゅうううううううううう………






 山に音。



 凪ぐ木々。






 風。






 そして。






「助けろってさ、鴉。あれ」






 風と共にふわりと現れて俺に向かって言ったのは、金に近い茶髪に金のピアスに金のネックレスにダボダボのダボ服。



 どこからどう見ても立派なチャラチャラのチャラ男。






 の、右手。



 金の指輪がはまる人差し指があれって指差す。






「生きてるの〜?その子。もう死んでるんじゃない?」






 倒れた少年を見ての一言。






 カアアアアアッ………






「ふうん、まだ生きてるんだ。けどほっとけばすぐ死ぬよ?」






 カラスに答えるのその声が、告げる。チャラく軽く。






「だって刺さってるよ?首んとこ。矢が3本」






 日の暮れ始めた森の中。山の奥。






 カアアアアアッ………






 ひゅうううううううううう………






 カラスが鳴く。その声が響き風が吹く。






 ここはその名を天狗山と言う。

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