62
翌朝、直央はリナに見送られながら家を出た。
川に着いた直央と菊田は直央が用意した荷物を詰めたリュックを背負って早速川に下りた。
「この辺りは浅そうですね」
川を覗きながら直央が言った。
川の水は澄んでいてとても綺麗だった。
「でも真ん中辺りがどうなってるかはわからないよ。もう少し先に行って見てみよう」
「はい」
二人は昨日子どもの姿を見た辺りまで歩いてみることにした。
「菊田さん、昨日双眼鏡で見てましたよね?」
「ああ、あの子ども?」
「はい。どんな様子でした?」
「どんな様子……普通に歩いてたよ。普通の男の子。体は細かったかな」
「男の子か」
「子どもは皆ネイチャーランドにいるはずなのにね」
「ですよね。まさかここがネイチャーランドなわけもないし」
「うん、僕も一瞬考えたけどそれはないよね」
「リナと二人で一週間見張ってた時も、子どもの姿なんて見なかったし」
「ネイチャーランドだったらもっとたくさん子どもがいて賑やかなはずだもんね」
「はい」
「でもそうなるとますます不思議だよね」
「本当に」
二人はしばらく川のすぐ横を歩いていた。
草が生い茂っていた川沿いがだんだんと砂利道に変わってきていた。
さらに砂利は大きな石へと変わっていった。
ごつごつした石の上は歩きにくかった。
「あ、直央くんあそこ。あそこだったら渡れそうだよ」
直央は後ろを歩いていた菊田の方を振り向いた。
菊田は前方を指さしていた。
「お、本当だ」
見ると川の中を大きな岩が点々と顔を出していた。
これなら岩の上を伝って向こう岸へ渡れるかもしれない。
直央は足を早めた。
「とりあえず渡りましょう」
「うん」
二人は注意しながら岩の上を渡っていった。
「やった。やりましたね」
「ああ。さてと……」
菊田は目の前に現れた崖のような岩の壁を見上げていた。
「大丈夫です。これなら俺登れそうです」
「本当かい?」
「俺が行ってロープを下ろします。待っててください」
「わかった」
そう言うと直央は岩と岩の間に指とつま先を差し込みながらいとも簡単に崖を登っていった。
「すごいね直央くん」
「これくらい、誰でも登れますって」
「いやいや、おじさんには無理だよ」
「ははっ」
直央はあっという間に五メートルほどの岩を登りきっていた。
「直央くん?」
「ちょっと待ってください。今ロープを下ろします」
菊田は直央が投げ込んだロープを受け取るとそれを自分の体に巻き付けた。
「いいですか?」
「うん」
菊田は直央に半分引っ張られるようにしながら岩の間に足をはめ込み崖を登っていった。
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