第87話 やればできる!
「太郎や」
「なに?」
「太郎がそんなになってしまって、おじいさんとわたしはとても心配しているのよ」
「うん、ごめんね」
おお、なんと、太郎が謝りました!
「どうしたら太郎が元気になってくれるんだろうとずっと考えていたの」
「うん」
「だから、太郎がちゃんと返事をしてくれて、とてもうれしい」
「うん」
「太郎がそうなってしまったのは、ほしいものも、知りたいことも、やりたいこともなくなってしまったからだと言っていたわよね?」
「うん」
「だったら、ほしいもの、知りたいこと、やりたいことを探しましょう」
「え?」
「ね、探しましょう」
「うむ、探そう」
おじいさんも一緒にそう言います。
「探すって、どうやって?」
太郎が質問をしました!
「太郎」
「太郎や」
おじいさんとおばあさんはそのことがうれしくて、またじんわりときます。
「だから鬼ヶ島ですよ」
「鬼ヶ島?」
「ええ、話を聞いてたでしょ? 悪い鬼が大事な宝物を奪っているって」
「うん」
「その宝物を奪い返して、奪われた人に返してあげたらどうかしら」
「それは喜ぶだろうと思うよ」
「うん、だからね」
おばあさんは太郎の手をギュッと握って、
「太郎が取り返してあげてほしいの」
「え!」
「そう、太郎が」
おじいさんもそう言って二人の手の上から手を重ねました。
「太郎」
「太郎」
「鬼退治に行っておいで」
「ええっ!」
さすがの太郎が何年ぶりかで大きな声を出しました。
「太郎は強い」
「太郎は賢い」
「太郎は優しい」
「太郎はかっこいい」
「太郎は正義の味方」
「太郎はひーろー」
「だから」
おじいさんとおばあさんはここで声を合わせて、
「やればできる!」
と、ポジティブシンキングに宣言をしました。
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