第13話
(女子高生は手を加えすぎないほうが可愛いよな)
口に出すとおっさんくさいので心に思うだけだが、その年齢でしか発揮できない魅力もあるだろう。
肌の弱い女の子もいて、女の子だけではないが、その手入れは美容とはまた別の方法になろう。
「あなたもスポーツしてる割に肌綺麗ね」
「格闘技だけど、屋内で練習するし、打撃だけだからね。柔道みたいに接触は多くない」
レスリング選手などは組み合っているうちに長年の鍛錬と摩擦によって体の表面が変化してくる。耳が餃子のようにめくれてしまう人もいる。電車で隣に立っている人の耳たがぶ変形している場合、多くは格闘技の熟達者と思って良いだろう。
「はい、どうぞ」
「うん?」
気づいたらグラスが空になっていた。
(いつの間に飲み干したかな)
優奈がもう少し体を近づけて、空いている右手でお茶を注いでくれた。
「ありがと」
これがクラスメイト相手だったらドギマギして大変なことになるところ。しかし、姉弟でも現時点である意味大変なことになっているのであるが。
これが赤の他人なら、何を話そうかと頭をひねるところだが、姉弟にいちいち言葉は不要に思えた。お風呂上がりに姉弟でぼーっとしていても何もおかしくない。
「ねぇ、お父さんとお母さんたちっていつごろから仲直りしたのかな?」
いつから2人に変化があったことに息子と娘は気づいたか。智樹の気づく限りでは、1年以上は今の交際関係を続けているが、2年前にはそんな気配はなかった。
「『父さんと食事をしてくる』と、久しぶりに聞いたのが、1年半前。それ以前は兆候はなかったように思うよ。不自然な外出もなかったし、それからしばらくして急に仕事の都合で一晩出張してくるって連絡があったことがある」
「なんかそれは怪しいわね。女性社員が何の前触れもなく、出張に行くようになるのかしら?」
シングルマザーでれば、尚更、会社も家を空けるような仕事には配慮するだろう。
「おれは、会社員ってそんなこともあるのかなぁと特に疑いはしなかったけど。親父と会い始めてからすぐの事だったから、 今考えるとあれはきっと嘘だったんだろうな」
「同じ頃にわたしも気づいた。 お父さんは、いつも、わたしのことを心配して家を空けたりしないのに、事前の予定もなく出張に行くなんてことあり得なかったわ。だからぴんときた。お母さんと会っていたのは知っていたし」
その時は、近所に住む祖父母が訪ねてきたのだと言う。「もう子守を頼むような年齢じゃない」と言ったけど、祖父母はどうしても来ると言って聞かなかった。離婚の時もそうだったが、祖父母の優奈への執着は強い。
「ラブホテルにでも泊まったのかなあ」
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