TSクソビッチ少女は寝取られたい
二本目海老天マン
プロローグ~小学生編
01.俺自身が寝取られ女になる事だ
「ごめんなさい……私、もう彼じゃないと駄目なの……」
「そ、そんな……アキ、嘘だ……! 嘘だと言ってくれよっ! 俺達は恋人同士じゃ無かったのかっ!?」
降りしきる雨の中、一人の男が傘も差さずに慟哭する。
高校生なのだろうか、学生服を雨水と泥でずぶ濡れにしたその姿は、見るものに憐憫の情を抱かせる哀れな姿だった。
――そして、彼の視線の先には、罪悪感と恍惚感が入り混じったような複雑な表情を浮かべる少女と、その少女を胸に抱いて嘲笑を浮かべる端正な顔立ちをした優男の姿があった。
「――やれやれ、いい加減に現実を見たらどうだい? 俺と君、"男"として優れているのがどちらなのか。まだ分からないのかい?」
「あ、あァぁ……い、嫌だ……行かないでくれ、アキ……」
ずぶ濡れになった男が、雨水と涙で顔をグチャグチャにしながら恋人に――否、
「――本当にごめんなさい……さようなら、ヒロくん」
「それじゃ、そういう事だから。もう"俺の"アキにちょっかいを出すのは止めてくれよ? さあ、行こうかアキ?」
「う、うん……♡」
肩を抱き寄せられた少女は頬を赤く染めると、一つの傘の下で優男と抱き合うようにして、その場を後にする。
「あ……ああ……あああぁぁアアアあああアあああアアアアアアアアア」
その光景を見せつけられた男の喉から、精神の均衡が崩れた断末魔のような声が漏れ出す。
それはやがて、血を吐くような絶叫へと変わっていくのだった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
***
「………………」
「どうしたの?」
不意に立ち止まった優男に、少女は目線を向ける。
彼は少女のかつての恋人であった男が、泣き崩れている姿を見ているようだった。
「――ん、何でもないさ。ほら、濡れちゃうから、もっとこっちに来なよ」
「きゃっ♡こ、こんなにくっついたら歩きにくいよぉ♡」
淫蕩の熱に浮かされる少女は気づかない。
優男の目は少女を見ていないことに。
その視線は無様に泣き崩れている男にこそ注がれていることに。
「………………ふふっ」
そして、その視線には昏く、粘ついた熱情が籠もっていたことに。
***
「それじゃ、また明日学校で」
「う、うん……♡また明日……♡」
少女を家まで送り届けると、男は自宅へ向かって歩きだす。
「……さて、と」
男は学生服のポケットを探ってイヤホンを取り出す。
先日、貯めたバイト代で奮発した高級品だ。彼は音に拘るタイプなのである。
手持ちのイヤホンをスマートフォンに接続する。
「……早く。早く早く……」
男の指先が忙しなく動く。
その指がホーム画面から立ち上げたのは、ソーシャルゲームでも動画サイトでもなかった。
【ボイスレコーダー】
【再生】
『ごめんなさい……私、もう彼じゃないと駄目なの……』
『そ、そんな……アキ、嘘だ……! 嘘だと言ってくれよっ! 俺達は恋人同士じゃ無かったのかっ!?』
【早送り】
『あ、あァぁ……い、嫌だ……行かないでくれ、アキ……』
【早送り】
『――本当にごめんなさい……さようなら、ヒロくん』
【早送り】
『あ……ああ……あああぁぁアアアあああアあああアアアアアアアアア』
『うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
【巻き戻し】
『うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
【巻き戻し】
『うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
「…………ああぁぁ~~脳が破壊される音は最高なんじゃあぁぁ~~~~」
男の端正な顔がニッチャリと湿っぽい音を立てて歪む。
彼は人格破綻者の人間の屑であった。
オマケに女体化願望が有り、恋人と健全なお付き合いをしているところを間男に寝取られたいという業が深すぎる性癖も患っている。
男の身体ではそれが叶わないならばと、通っている学校内のカップルを片っ端から寝取り、男の脳を破壊することで、満たされない渇きを少しでも癒そうとする何処に出しても恥ずかしいド変態だった。
「ヒロくんの慟哭いいよォ~~最高! アキちゃんのビッチムーブもアカデミー賞モノだよォ~~」
たちが悪いのは彼が別段、寝取るカップルに対して悪意を持っていないという点が特に最悪であった。
何なら素晴らしい脳破壊シーンを魅せてくれた彼らに対して、男は感謝すらしているのである。金を払ってもいいとか思っていることだろう。
控えめに言って、早めに死んだ方が世界全体の幸福度が向上するであろう屑だった。
「――――へっ?」
そして、そんな世界の祈りが天に届いたのか。
はたまた歩きスマホが交通マナーに厳しい神の逆鱗に触れたのか。
信号無視をしてきたトラックが、猛スピードで自分に向かって突っ込んでくるのが、彼の最期に見た光景であった。
***
――しかし、悪を滅する神が居るのならば、邪悪を生かそうとする悪魔が居るのも、また必然であろう。
トラックに数百メートル引きずられて、現代アートみたいになった筈の彼は、気がつくと赤ん坊になっていたのである。おぎゃあ。
そして、座ったばかりの首をウゴウゴと動かして、自分の股ぐらを確認する。前世で付いていた
どうやら彼は女性として生まれ変わったようである。
彼――いや、彼女は神に感謝した。
前世では決して叶えることの出来なかった大望を掴むチャンスが与えられたのだ。
恋人とピュアピュアな交際をしている所を、横から間男に寝取られたいという願望ッ!
前世では口惜しくも間男役に甘んじていたが、今生の自分は女である。つまりNTRモノの
大作ハリウッド映画の主演の座を射止めた若手俳優かのような興奮に、世界一邪悪な赤ちゃんの闘志は、闇よりも昏く燃え上がるのであった。多分、悪魔も「やっぱ転生させなきゃ良かったかな」と若干首を傾げていることだろう。
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