彼女が決めた日曜日

静野 ふゆ

第1話

私は彼女の顔を両手で包むようにして、その瞳をじっと見つめて、言いました。

「パパね、土曜日には帰ってくるからね」

と。


彼女はじっと、私を見ていました。

白くなってしまった瞳を私に向けて、繰り返す私の言葉を、ずっと聞いていてくれました。






◆◆◆◆◆



我が家は三人家族です。

夫と私と、長女である彼女と。

彼女がうちに来てからは、私はずっとそう言ってきました。


その彼女とは、生後4ヶ月でうちにやってきた柴犬の女の子。


子供ができなかった私達夫婦には、最愛の我が子で。

彼女を迎えてから16年、我が家は常に彼女を中心に回っていました。



一緒にいろんな所へ行って。

彼女と遠出をしたいが為に車中泊ができる車に買い替え、わんこと入れる施設を探して。


犬友達もできました。

彼女自身が犬社会の中で気の合う友達、遊び仲間を見つけましたし、私達も飼い主同士で交流がありました。




そんな彼女も今年で16歳になり。

人間で例えるなら80歳前後、「シニア犬」と呼ばれるようになり、老いも目立ってきました。


認知症が出始めて、夜鳴きをするようにもなり。

たまのお出かけでは笑顔も見せていたりもしていましたが。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る