Focus of Madness
鹽夜亮
アサイラムあるいはクリスマスとフランシスファーマー
チェリーボンボンを咥えた女は破水した。
めいめいに狂った絵画の上に、額縁はそれを見て笑っている。
窓の外の鴉が雀を殺しながら、あるいはキツツキが頭を木に叩きつけながら、空間の内側では壁が血で塗れている。
男は言った。
「頭を叩きつけることは、天気予報に似ているし、もしくはペペロンチーノのニンニクを焦がしすぎたあの不快な香りにも似ているが、壁についた赤色は僕には空と変わりがないように思える」
男の血塗れの指の先で、爪がバレリーナのように片足を上げている。白鳥の湖は遠くにあるという。白鳥はいるというのに。湖は今もどこかで彷徨っているのだろう。
シスターは言った。
「ああ、神よ。私の罪を赦したまえ。清廉で穢れなく、処女で裏切ることもなく、真摯にあなたと向き合ってきた私の罪を赦したまえ。ああ、私はいずれ処女を失い、真摯さを失い、あなたを裏切るだろう。どうか赦したまえ」
シスターの前には男に切り刻まれた絵画があった。そこには何も描かれていない。
「おお!破水しているぞ!ノアの方舟を用意しなければ!世界の終わりが近い!なんということだ!あの鴉を、死んだ雀を、人間の雄と雌を、あらゆる世界を詰め込む方舟を用意しなければ!」
シスターの服を引き剥がしながら、中年の男が叫んでいる。その手は既に精錬に触れていた。
天井に彩られた数々の色彩が嬌声を上げた。わざとらしいそれに、シスターは顔を歪ませて笑った。
「なんと素晴らしい日でございましょう!なんと美しい日でございましょう!夢に見た世界が、今目の前にあるだなんて!」
肉を打つ音が響く。世紀末に肉屋は必要だろうか?あるいは屠殺業者は?花屋は?葬儀屋は?動物園は必要だろう。美術館はホテルの代わりになる。あるいは食べることができる。
「壁が白い。白さは清廉の象徴だ。赤だ。赤が足りない。赤だ。赤が」
男は再び頭を壁に打ちつけ始めた。窓の外の鴉は雀の親を殺し、子どもを食べ始めた。破水した女が叫んでいる。
「ああ、私の子ども!私の!私の赤ちゃん!」
女は窓の外に手を伸ばしたが、格子に阻まれ、鴉に一瞥されただけだった。あらゆる物事が正常であった。あるいは平和であった。あるいは生命の営みであった。あるいは世界であった。あるいは不条理であった。あるいは救済であった。あるいは清廉であった。あるいは放蕩であった。あるいは。
あるいは、何も無かった。
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