24てぇてぇ『競争意識ってぇ、時に凄い力を生み出すんだってぇ』

『今日もぉ、うてめ家でオフコラボ会でーす! マジグッドスメルでずっと住めるわ』

『ツノ、キモイキモイキモイ!』

『ノエ様~、ガガにもしお分くださいよお!』

『ここここここここがうてめ様の、』

『ちょ、ちょっと、さなぎちゃん、どこ行くの? ツノ姉さんもびっくりなんだけど』

『無理です! うてめ様のお部屋の空気をさなぎのようなゴミ虫が汚すなんて耐えられません!』

『いや、出て行ったらオフコラボの意味、それにこれはガガ達新人Vの歓迎オフコラボなのよ!』

『じゃあ、さなぎ息止めてます』

『じゃあ、しゃべれないじゃん! っていうか、死んじゃうでしょ! アンタばかぁ!?』


 おかしい。

 私の予定では、累児が来てからは、二人きりのあまあまライフが始まるはずだったのに。


 なんで、こんなにみんな来るの?

 オフコラボ配信したがるの?

 っていうか、オフコラボもないはずなのに来てる子も最近いっぱいいる。


 その代表が、今いる四人。つの、ノエ先輩、ガガちゃん、さなぎちゃん。

 この子達は本気で累児を狙っているように見える。

 その為にか、Vの活動も目に見えて洗練されてきている。累児のアドバイスが絶対に大きいけど。


 そして、伸び続けている。ガガとさなぎは新人としては異例の伸び率。

 ノエ先輩は、ずっと落ちてた伸び率がここに来て上昇しているし、ツノに至っては、もうすぐ100万人越えだ。


 あなどれない……!

 そして、あなどれないといえばもう一人。


 元、引田ピカタ。

 【フロンタニクス】を引退し、最終的には、ガガと同じように【ワルプルギス】で転生予定らしいけど、毎日のようにウチにごはんを食べにくる。


 許せない。

 だけど、累児曰く『Vの能力に全振りしすぎて、生活力皆無』らしく、活動の為には誰かがお世話の必要があるみたいで、【フロンタニクス】の時は最終的に辞めるまでは累児が面倒を見ていたらしい。


 で、今は、ウチに通ってる。しぶしぶ認めた。

 だって、ウチに来させないと累児がピカタの家に行っちゃうからだ。

 そんなのやだ。


 それもこれも累児がモテすぎるのが悪い。

 まあ、分かるけど。

 栄養も味も見た目も最高の料理作れるし、配信のさりげない言葉とか雰囲気で察するし、褒め方もそれぞれに合わせて凄く褒めて、時には注意もしてくれる。素敵過ぎる。

 好きすぎる。


 絶対に累児は渡さない。渡したくない。もう誰もウチに来るな。

 累児、累児、累児……。


 そう思ってオフコラボ配信前に累児を見つめていたら、


「みんな姉さんとコラボしたいんだね。弟としてうれしいよ」


 はうぅう、いい笑顔。すきぃ。


 だけど、このままではヤバい。社長もまた動いているらしいし。どうしよう。

 とにかく、Vtuberのトップを目指す。それが多分累児の一番を手に入れる方法だ。

私は気合を入れなおし、みんなの輪に入っていく。


『じゃあ、今日は、新人歓迎会ということで、ようこそわが家へ。感想はどう?』

『どうって……あのー、ガガ的にはマジでウテウトとのツーショット写真ばっかりで引いてるんですけど……』

『だよねえ! ノエも最初そう思った!』

『どうどいですぅううう! うてめ様とウテウトさんのツーショットなんて、もうルーブルに飾るべきなんですぅううう!』

『さなぎちゃん。落ち着け。さあ、というわけで今回は、ツノが新人歓迎会として、企画を用意させていただきました! クイズ、【答えはワルメン】! 新人には、ワルのメンバーをもっと知ってもらおう、そして、ベテランには新人のことをもっと知ってもらおうという事で、誰かの情報、もしくは、印象を言ってもらってそれを当てるクイズです!』


 ツノがゲーム内容を説明。流石ツノね。新人知ってもらえるし、他のワルメンも紹介できる。


『じゃあ、最初は、うてめから出題お願いします!』

『分かったわ。えーと、ゲームとか企画を考えるのが本当に凄いわ。今回もすごい感心した』

『あたしじゃねーか! この、だ女神! やべえ、人選間違えたかも! 次、じゃあ、新人チーム、ガガ』

『じゃあ……印象なんですけど、猥褻物陳列罪』

『あたしじゃねーか! いや、あたしじゃねーよな! おい! お前、いい度胸してんな!』

『ええー、ガガ、まだ答えとか言ってないですけど~』

『じゃあ、答えは?』

『ツノ先輩★』

『あたしじゃねーかああああ! やってんなあテメエ! ちょっと、同じ新人としてさなぎちゃん何か言ってあげて!』

『は、はい! 問題』

『いや、今は問題言って欲しいワケじゃねーんよ!』

『神です』

『あたし……じゃねーなああああ! うてめでしょ!』

『せ、正解です!』

『やったああああああああ! じゃねーんよ! この流れならあたし来いよぉおおお!』

『ツノ、うるさい』

『あたしのせいぃいいいい!? ノエ先輩、ちょっと待って。ノエ先輩の仕事がツッコミでしょ!』

『ノエの仕事はツッコミじゃねーわ! 目からしお分吹き出させるわよ!』

『いや、でも! 絶対、こいつらのせいでしょ! っていうか、人選はノエ先輩でしょ!』

『ノエだって、こんなカオス生み出すつもりなかったわよ!』

『問題です』

『『勝手に進行すんなぁあああああ! ポンコツ女神!』』

『最高の弟』

『『ウテウトォオオオオオオ! メンバーから問題出せっつってんでしょうがぁああ!』』


 この日のオフコラボ配信も盛り上がった。

 累児は喜んでいたけど、ウテウトがツブヤイッターのトレンド一位になって複雑な顔していた。私は嬉しい。頑張った甲斐があった。


「えー、今日は泊まれないのー?」

「ごめんね、ツノ。今日は無理なの。みんなもごめんね」

「ま、まあ、仕方ないわね。お、弟君のお土産も貰っちゃったし今日は帰るわ」

「か、神の世界にいれただけでも感激ですぅううう」

「さなぎ、泣き止め。ちなみに、もしかして、明日なんかあったりするんですかあ? ガガ的に好奇心で聞きたいんですけど」


 うふ。


「ごめんなさいね。明日は累児とデートなの」

「「「「は?(え?)」」」」


 ドアを閉める。


 うふ。


 言ってしまった。ああ、つい。つい!


 明日は百万人突破記念のデート!


「ね、姉さん。お出かけだよね?」


 見送りで隣にいた累児が顔を引き攣らせている。


「お出かけもデートも一緒のようなものよ」

「そ、そう」

「24時間累児独占が100万人のご褒美だったはずでしょ?」

「あれ? そんな内容ダッケ? あ、頭が……」

「うふふ、累児。明日は早いから。もう寝ましょ」

「なんか、凄いピンポンなってるけど」

「悪質な嫌がらせね。ちょっと連絡いれておくから。さ、寝ましょ」

「ちょっと待って、なんで姉さんの部屋に俺を連れて行こうとしてるの?」

「添い寝からスタートよ。大丈夫、それ以外何もしないわ。それにウテウトと添い寝ってネタ的には面白いでしょ」

「ぐ、ぬぬう……」


 さんざん悩んだ挙句、累児は自分の部屋へ逃げて行った。

 かわいい……。


 さて、明日が楽しみだ。

 ワルメンから凄く連絡来てるけど無視無視、うふ。

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