19てぇてぇ『一週間ってぇ、あっという間なんだってぇ』後半

【73日目・ノエ視点】



「んん~、よし! おいしく出来た!」


 ノエは出来たばかりのスープの前で自分を褒めていた。

 目の前にはあるのはルイジの教えてくれた料理。

 早速写真を撮ってルイジに送る。


『どう!? 上手に出来たでしょ!』


 すると、いつも通り直ぐに返信が返ってくる。ふふ。


『すごいです! おいしそう!』


 ヤバい。思わずにやけてしまう。

 ルイジのレシピのお陰で、順調に痩せていってる気がする。

 少なくとも体重はちょい減りキープで来てる。


 今なら、会えるかも。会いたい、かも。


「よよよよよよし!」


『よかったら、食べにくる? ちょっと多く作り過ぎたかも』


 送ったー! 送っちゃった!

 返信が早い!


『すみません、今日ウチにツノさんとガガ来てて……』


 なんであの子達、ルイジの家行ってるの!?


『じゃ、じゃあ、明日とかは?』

『明日は、【ワルプルギス】の社長に呼ばれてて……』


 なんでえ!? なんで社長と!?

 もしかして、マネージャーとかやるのかな!? だったら、ノエの担当に……。

 って、今はそれじゃない! ルイジからまたメッセージが。


『本当にすみません……』


 ルイジが謝る必要はない。ツノとガガは謝れ!


「ええい! もう!」


『今からわたしもそっちに行くから! スープも持っていくね! 一緒に食べよ!』


 負けてたまるか! 今もどんどんライバル増えてるんだから!


 その前に、もうちょっと味見しとこう。ルイジが食べるなら絶対美味しくなきゃ。





【74日目・ルイジ視点】



「こんにちは。天堂累児クン」


 この日、俺は何故か【ワルプルギス】に連れて来られた。


 目の前にはセクシーお姉さん。この人が社長らしい。黒川由美。


「ど、どうも、本日はお招きいただき……」

「かしこまらなくていいわ。今日は折り入って話があってね」


 黒川さんが俺の周りをぐるぐる回る。甘い匂いが鼻をくすぐり混乱してくる。


「あ、あの! も、もしかして、ですが、マネージャーとかそういうのでしょうか?」

「ああ、うん、それも考えたんだけどね……殺し合いが始まりそうだったから」


 どういうことぉおおお!? ゲームの中での殺し合いの話ですよね?


「だからね、今回はマネージャーとかそういう話じゃなくて、Vtuber愛溢れる君にちょっとお願いしたいことなの……勿論、断ってくれてもいいわ」






【75日目・うてめ視点】



「累児、おーい」


 累児の部屋をノックする。

 すると、累児はちょっと疲れた雰囲気で出てくる。


「姉さん、ごめん。もう夕食の時間だね」

「うん、でも、累児大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、ごはんつくるくらい」

「じゃなくて、何かやってたんじゃ」

「ああ、うん……ちょっとね」


 そう言いながら累児はキッチンに向かい、調理を始める。


「昨日、社長と会って何か言われた?」

「うん。ちょっとね、頼まれごと」

「頼まれごと? 大丈夫な話? まさか、マネージャー!?」


 なら、絶対私担当にさせねば!

 最近、オフコラボした子みんな、また来ようとする。

 この前の、ツノとノエ先輩とガガのご飯会はヤバかった。

 完全に狙ってる目をしてた。


 それに、ツノももう少しで100万人で絶好調だし、ノエ先輩も最近の伸びは凄い。

 ガガも新人としては異例のスピードで上がり続けている。同期デビューで大事故を起こしたあの子とは違って……。

 そこで、ふと思いつく。


「累児、もしかして、社長に頼まれたのって……」

「まあ、出来る限りのことはやってみるよ」


 そう言ったルイジはごはんが終わると、また部屋にこもり始めた。


「がんばれ」


 そう言って私は、配信の準備を始める。

 少しでも累児に、そして、見てくれる人に、元気を送れるように。





【76日目・ルイジ視点】




 その日、俺は女の子と会っていた。


「あ、あ、え、あ……!」


 十川さなぎ。


 デビュー生配信で大事故を起こしてしまった彼女。


 彼女を応援するのが、俺の頼まれたことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る