ねこねこ日記
西しまこ
十月二十七日(木曜)こくに
最近、あの家ではちょっとおいしいものをもらえるときがあるんだ。ぼくはしっぽをぴんと立ててウッドデッキを歩いた。あ、こくいちがもう来てる。こくいちはぼくが来たら、さっと後ろにさがり、ぼくを先に餌入れのところにやる。そうそう、ぼくがお兄ちゃんだからね。この家のひとには「こくに」つまり、「こくろ2」なんて名づけられちゃったけど。
ぼくたちはお父さんのくろの子どもだ。お母さんはもう死んじゃった。それから本当は四匹兄弟だったけど、三匹になっちゃった。車が怖いからね、この辺は。
あ。みけも来た。みけは二番目に生まれた女の子。こくにって呼ばれてるぼくがお兄ちゃん。その次に女の子のみけ、それから末っ子で女の子のこくいち。くろの子どもだからこくろで、こくろが二匹いるからこくいちとこくにって名前つけられたんだよね。安易なネーミングだよね。笑っちゃうよ。ちなみにぼくの目はお父さんのくろと同じ金目、こくいちは緑の目なんだ。
あ、今日はかりかりの他に缶詰がある! 当たりの日だ!
こくいちもみけも食べたそうにしているけど、何しろお兄ちゃんのぼくが先に食べる決まりなんだ。まあ、お父さんがいたらお父さんが先なんだけど。
あーあ、おいしかった。
あ。
なんか、今日は戸が閉まってなくて、少し隙間がある。
ぼくは好奇心旺盛だから、そーっと入ってみる。そーっと。足音立てずにね。まあねこだからね。
あ。
ニンゲンと目が合った。
「こくに」
うん、大丈夫そう。
ぼくはそろそろと進む。
何しろこころはニンゲンのテリトリーだから慎重にならなくちゃ!
ぼくはいつもは入らない奥まで進んだ。
あ!
ウッドデッキで何か気配がした。
やばい! 戸が閉められたら帰れなくなっちゃう!
ぼくはダッシュで走り、慌てて戸の隙間から飛び出した。
ふー、あぶないあぶない。
「こくに、うちの子になればいいのに」
ニンゲンはそう残念そうに言った。
いや、ぼくは自由を愛しているんですよ。でもごはんもらえるのはうれしいから、また来るけどね。
みけは食事を終えたらしく、身体を舐めていた。こくいちが今はかりかりを食べていた。
ぼくはしっぽをぴんと立て、次なる冒険をするために緑の中に入っていった。
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