まったりM&A現場閑話★独禁法Part.2(Breakup Fee)
ということで、Part.1に引き続き、企業結合の届出をした後のPart.2に移ります。
届出受理後、概ねどの国でも1か月で一次審査が終わり(日本では早期審査を請求することは可能です。ただ確約はされません)、そこで問題なければクリアランスが送られてきます。
でも問題があるとみなされたら、二次審査が始まります。
これは日本では90日以内かかるとされていますが、国によっては何年もかかり、最終的にはシェアアップしすぎないような問題解消措置(資産の一部を他社に売れ!みたいな)が出されることもあります。
さらにひどい場合では、結局クリアランスがもらえない(もしくは排除措置命令)という事態も、やはり起こるんですよね。
こりゃ、大騒ぎです。
最近では、2022年8月にAmazonがiRobot(ルンバの会社)を14億ドルで買収すると発表しましたが、2024年2月にEU当局のクリアランスが出る見込みがなくなったとのことで買収を断念しました。
アドビによるフィグマ買収(2022年9月発表、約200億ドル!)も昨年12月にEU・英国当局拒絶により断念しています。
それぞれアマゾンもアドビも、1年以上の時間と莫大なコストを使った上にBreakup Feeという違約金を買収相手に払ってディール中止しているので、本当に大変です💦
『当局が許可出さなかったのに、なんで買収側が違約金を払うの?』
(悪いことしているわけではないのに……)と思いますよね。
はい、その通りなんです。これは法的に決まっているものではないです。
あくまで買収される側が「最後までゴールできなかったらBreakup Fee払ってね、その条件だったら買収に合意してあげるよ」といって契約時に勝ち取った権利です。
買収される側も大変な労力を強いられますし、審査の期間、他の相手との交渉もできませんので、買収側はその要求を受け入れることが多いようです。
違約金は、
✔アマゾンは9400万ドル(買収価格の6.7%)
✔アドビは 10億ドル (〃5%)
だいたい5%超という相場ですね。
2025/1月追記:
✔日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールのBreak up feeは、買収総額141億ドルに対して、5.65億ドルですので約4%です。
それにしても規模が大きい。
違約金だけで150~1500億円くらい。
その違約金のうちの1%でもいいから、私に分けてくれませんか?
Amzonで買い物しますから……
……………………………………………
問題解消措置について
https://www.fsa.go.jp/frtc/seika/discussion/2020/DP2020-12.pdf
アマゾン、アドビのニュースソース
https://newspicks.com/news/9514170/body/
日本製鉄による2023年度第3四半期決算説明会質疑要旨
(同義のターミネーションフィーという言葉を使っています)
https://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20240207_500.pdf
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