45話
貴族学校に来てから数週間が過ぎた。
王太子はずっとヒロインに構いっぱなしらしく、セリーナさんとは全く顔を合わせていないそうだ。
たまに一緒にいるところは見掛けるらしいけど、ヒロインはまだ戸惑ってる様子らしい。
まぁ、王太子でしかも婚約者のいる相手だし、その婚約者のセリーナさんも身近にいるんだから、普通の感覚持ってればそうなるよね。
一方のセリーナさんは、授業には真面目に出てるけど、終わるとすぐに部屋に帰って来る。
そして、ずっとダラダラしている。
貴族学校に来るまでは、毎日のようにある王太子妃教育やらで忙しくしてたから、時間に余裕の出来た今はそれでも仕方ないのかなと思ってたけど、さすがにこれだけ毎日ずっとダラダラしてるのはどうなんだろう……。
「お嬢様、さすがにダラダラし過ぎです。
課題をされるなり、読書や刺繍をされるなり、何かやる事はないんですか?」
どうやらマリーさんも同じ事を考えていたみたいだ。
「えー?授業は真面目に受けてるんだから、部屋にいる時くらいはいいじゃないのよぉ……。」
セリーナさんはマリーさんに抗議しつつも、ソファに寝転んだ体を起こす様子はない。
「そう言えば、もう少しでテストもあると聞きましたが?」
セリーナさんの抗議を完全にスルーしてマリーさんが告げる。
テストかぁ、一学期の中間テスト的なやつかな?
「なんでそれ知ってるのよ……。
はぁ……、わかりましたー。勉強すれば良いんでしょー。」
完全に不貞腐れながらも机に向かったセリーナさんが、ペンも持ったところでピタッと止まる。
「あ、インク切れてる……。これじゃあ勉強出来ないよね?ね?」
満面の笑みで振り返り、こちらに同意を求めてくるが、マリーさんはそんなことでは折れなかった。
「学内に売っている場所がありましたよね?
そこで買ってくれば良いだけのことです。
ミリ、悪いんだけどお願いしてもいいかしら?」
「え!?
いや、買い物なら自分で行くから!ミリに行かせるなんて可哀想でしょ?」
2人から見詰められるが、私が誰に従うかなんて決まってる。
「わかりました。すぐに行って来ますね。」
セリーナさんとは目を合わせないようにしつつ、マリーさんに笑顔で答える。
「裏切り者ぉ……。」
何か言われた気がするけど、私には何も聞こえません。
「ありがとうね。私はお嬢様が逃げないように見張っておくから。」
何やらセリーナさんが叫んでいたような気もしたけど、私は一礼してさっさと退室する。
セリーナさんごめんなさい。
あそこでマリーさんに逆らうと私の命が危ないんです。
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