第077話 〈配信コメント欄〉
「てことで、今後のハヤテ式四刀流推進室はこの3人でやっていきます!」
〈はーい〉
〈頑張れ!〉
〈え、でも3人ってことは〉
〈アマテラス様もダンジョンに?〉
〈幼女は危ないだろ〉
〈そもそも15歳未満は入れん〉
アマテラスと自称する神は日本誕生以来2700年以上存在しているため、特に問題はない。加えてこの世界にダンジョンを出現させた女神より格が高く、女神が定めた設定に影響は受けなかった。
とはいえ見た目が幼女である以上、颯たちも神を連れてダンジョンに行こうとは思っていない。
「流石にアマテラス様をダンジョン攻略にお連れできないので、第5等級ダンジョンのトロフィーで貰えるバディに憑依して頂こうと考えてます」
〈なるほど、そーゆーことね〉
〈それなら良いんじゃない〉
〈キャラデザ頑張んなきゃな〉
〈ん? バディってなに?〉
〈どーゆーこと?〉
「視聴者さんの仲にはFWOのシステムをまだよく分かってない人もいると思うので、改めて説明しときますね。第5等級ダンジョンは様々な生物をモチーフにしたダンジョンになってます。人のダンジョン、獣のダンジョン、鳥のダンジョンって感じ。それぞれのダンジョンを踏破すると、トロフィーとしてバディと呼ばれる自律型戦闘補助NPCがゲットできるんです」
人のダンジョンをクリアすれば人型の。獣のダンジョンをクリアすれば猫型の戦闘補助NPCを入手することが可能になる。
「このNPCはかなり便利で、基本ソロ活動をしてた俺にとって貴重な相棒でした」
〈つっても補助しかさせてなかったじゃん〉
〈猫型の可愛いバディだったな〉
〈でも危ないからって同伴させなくなった〉
〈クロちゃん、人気だったのに……〉
颯はクロと名付けた子猫のNPCをバディにして、バフなどを任せていた。しかしある時モンスターにクロが狙われ、ダメージを負ってしまった。仲間を守れなかったことを後悔した颯は、ダンジョン攻略にクロを同行させなくなった。
〈ダンジョン攻略以外でめっちゃ遊んでた〉
〈アレはアレで癒しだったな〉
〈ハヤテ君は最強だけど、可愛いとこもあるね〉
〈私はクロちゃんの配信ブースにも登録してた〉
バディのクロと戯れたり、装備構成を考えている颯に構って欲しくて擦り寄ってくるクロの様子を配信していたブースも数万人の登録者がいたが、颯は今そのブースを更新していない。FWOと世界が同期した影響か、ゲームの方のFWOは何故かプレイできなくなっている。
「そんな感じで、俺は『人のダンジョン』を踏破しようって考えてます。ゲットしたバディをアマテラス様の姿にして、その戦闘や性格設定をアマテラス様にお任せする予定です」
〈憑依させるって設定ね〉
〈よきよき〉
〈神様とパーティー組むの熱いな〉
〈ハヤテとエレーナをよろしく頼みます〉
〈レア泥たくさんするようにしたげて〉
〈神様まで味方につけたら最強すぎるw〉
〈そもそもハヤテは運が良い方だし〉
「そこで視聴者の皆さんにお願いがあります」
〈お、なんぞ?〉
〈珍しいな〉
〈ハヤテのお願いか〉
〈てか初じゃね?〉
「アマテラス様の3Dモデルと、それに投影させるデザインを作って欲しいです」
FWOのバディはあらかじめ決まった形状、決められたデザインの範疇でユーザーが設定するほかに、完全オリジナルデザインでモデリングすることも可能だった。とはいえどんな形状でも良いわけではなく、人型バディであれば人としての形状と明らかに異なるモデルは利用出来ない。関節の数や可動域などもチェックされる。
これはFWOのAIが自動判別しており、この判定が厳しすぎるためユーザーでオリジナルモデルを作成できた人はあまり多くなかった。
〈オリジナルモデルの募集か〉
〈もし採用されたら配信に映るぞ〉
〈でもアレって、くっそムズいだろ〉
〈日本でオリジナル使ってんの7人だけ〉
〈それマジ?〉
〈ガチのプロ3Dモデラーに依頼したって〉
〈1体作んのに300万とかかかるらしい〉
〈一般人じゃ無理だろww〉
〈難易度たっかwww〉
〈さすがハヤテのお願いだ〉
「これからバディをゲットしに行くんで、正式募集はまだ先になります。それにオリジナルデザインが使えるかどうかの情報もまだ出てないですね」
颯はまだ第5等級ダンジョンに挑んでいない。
そして彼が偽ハヤテを強化したせいで、世界規模で見ても第5等級ダンジョンのボスに挑めるパーティーの数は多くなかった。
既に第4等級がクリアされているので、誰でも第5等級に入ることは可能。しかしボスへの挑戦には前の等級のボスを倒している必要がある。
「てことで明日、俺はエレーナと人のダンジョンに挑戦しまーす! もしバディをゲットして、オリジナルモデルも使えるってなったら詳しい条件をお伝えしますね。アマテラス様の
〈3Dモデラ―のプロ20年目です、応募します〉
〈人気配信者たちのパパです。アマテラス様も担当したいっ〉
〈コンテスト優勝経験ありっす。応募します!〉
〈イラストレーターやってます。ママになりたいな!!〉
〈↑この人、ルルロロさんじゃね?〉
〈フォロワー300万人のガチプロじゃん!〉
〈も り あ が っ て ま い り ま し た w〉
颯の一言は世界中の有名クリエイターたちの心を動かした。
金銭面での条件はまだ提示されていないが、颯は配信で稼いでいるし東雲財閥がバックについている。あまり気にしなくても大丈夫だという安心感があった。更に配信の視聴登録者が1億人を超える颯に使ってもらえれば、とんでもない宣伝効果が期待できる。
なによりモデルとなるアマテラスが可愛らしい。
キャラデザ担当になれば、もしかすればアマテラスに直で会う機会もあるのではないかと考えたプロのイラストレーター数名は、この時点で作業を開始していた。
同様に3Dモデラ―たちも行動を開始している。過去のFWOに関する資料を大量にダウンロードし、オリジナルモデルに関する制約などを確認し始めた。
こうして神様のママとパパを巡る戦いが始まった。
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