18話 敵対者と復讐者
蚊神が当たった鉄の扉が音を立てて倒れる。
「これでやっと終わった」
ダールは疲れと共にため息を吐く。
煙と砂煙の流れが一斉に変わる。
蚊神のいた方向からありえないほどの
「今のは、マジで死ぬかと思った」
血がついた唇を蚊神は荒々しく拭う。
「な、なんだよ!それは」
蚊神の両腕、両手に装着された赤黒い籠手。
「"
ダールはポケットに入れてた鉄屑を蚊神に向かって投げる。
「
鉄屑から水面が揺れる。
鉄屑からまるで光の乱反射のように光線が放たれる。
光線が鉄柱や天井にぶつかる。
その一つが蚊神に向かう。
蚊神は
「お前、ボロボロだな」
蚊神は光線の一撃で服は所々破れて両腕は骨にヒビが入り衝撃で手が震えていた。
そして
口からは血が流れ背中には鉄の扉にぶつかった衝撃で大きなあざが出来ていた。
「いやこっからだけどな」
蚊神は腕を後ろに垂らしながら鉄製階段で2階に上がる。
先ほどの
「待て!」
ダールも蚊神を追って階段を上がる。
廃工場の2階は驚くほど殺風景だった。
粉々に砕かれたガラス窓の跡。
色んな器具が外された機械などが転がっていた。
ダールと蚊神はまたお互い距離をとっていた。
蚊神の額から汗が流れる。
これ以上、
今は
ダールは腕を垂らして口から血が出ている蚊神を見ながら勝利を確信した。
「見てるかヅールよ。こいつの首を取って土産にしてやるからな!」
ダールは自身の
「あの時からだ!俺が鉄屑にぶつかった時、そこから変だと思ってた──だってよその右手の
「そうだ。あの時から能力を使ってた──拾っておいてよかったぜ」
ダールは余裕の笑みを浮かべた。
蚊神の腕が痛み始めた。
ズキズキッと両腕が蚊神に痛い!と主張してくる。
とりあえず時間を稼げ、あいつが
ダールは痛む左足首をまたチラリと見た。
そしてそこだけ集点をした。
「次お前の猫に引っ掻かれたら危ないからな」
「お前は※
※
例を挙げると、ダール・ドッコイの
「そうだ。俺は力点術師だ。職業は
「だから能力を持ってるわけね。ちなみに
「お前と話すつもりはねえよ。かかってこいよ」
ダールは左手の人差し指で蚊神を挑発する。
アホか。お前が床に能力使った事は分かってんだよ。発動されたら即死じゃねえか。……いやいい事、考えた。
「舐めやがって!殺してやる!」
蚊神は拳を振り上げてダールの元に走っていく。
「かかった!」
突如、一階の床が水面に揺れて
光線は先程よりも威力が上がり一階の天井を破壊し二階に到達する。
光線が二階に達した瞬間、蚊神は踵に体重を乗せて止まりダールとは反対方向に走る。
「クソッ!ミスった」
ダールは残りの鉄屑を蚊神に向かって投げる。
鉄屑からも光線が放出される。
廃工場の二階はまるで花火のように光り輝き光線は鉄柱や天井に当たり蚊神には当たらなかった。
廃工場が揺れる。
ダールとは反対側の壁まで到達すると蚊神は左腕に力を入れて思いっきり床を破壊する。
「なっお前、何やってんだ?廃工場、壊す気か?」
「その通り!」
床を破壊した蚊神は剥き出しになった鉄柱を
鉄柱が音を立てて破壊される。
そしてダールが壊した鉄柱と蚊神が壊した鉄柱は同じ位置にあった。
その両方が破壊されたことにより廃工場を支えていた重心は消えて無くなる。
「お前、イカれてるぞ!死ぬ気か!?」
「殺されるよりマシだ!」
廃工場は傾きながら二階の天井が落ち、錆びて古くなっていた事もあり崩れ落ちた。
とんでもない爆音が21区に響く。
砂煙と埃が辺りに舞う。
「おりゃああ!!」
血だらけになったダールは右手で天井の瓦礫を退かす。
蚊神は倒れながら砂と埃にまみれていた。
「はあっはあっ。テメェ本当にイカレ野郎だな」
ダールは痛む左足首を引きずりながら倒れている蚊神の元にゆっくりと向かう。
蚊神も膝立ちになりながら立ち上がろうとする。
「最後はこの
ダールの右手に更に
蚊神は口から血を吐きながらようやく立ち上がった。
ダールが拳を振り上げる。
「あの世で弟に詫びろ!!」
「ありがとよ」
その時だった突然、左足首に激痛が走る。
ダールは何が起こったか分からず倒れ込み足首を抑える。
「ぐっおお!何が起こった!」
「ニャー!」
瓦礫の上に座りながら血がついた前足を舐める
色は瓦礫と同じ灰色になっていた。
「あ、猫!何で忘れてたんだ!」
ダールは激痛が走る足首を抑える。
血が噴き出てアキレス腱が切れていた。
「ここまですれば忘れてくれると思ってよ。お前が左足首の
「クソッッ!!──いてぇ!」
蚊神は
「一発で終わらせる」
その時……ダールのポケットから小さい袋が落ちる。
「テメェ!薬やってやがるな!!薬やってる奴は死ねぇ!!!」
「これは弟だ」
「……なに?なんだと?」
予想外のことに蚊神は構えをとく。
「お前に殺された!弟の骨だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます