第19話 ライオンラビット

 今日も冒険者ギルドに来ている。

 特に代わり映えのない依頼内容だ。

 それなら特に依頼を受けず、行き当たりばったりで森に入り、倒した魔物の素材を売ればいいと思うが。

 それだと依頼を受けた事にならないので、駄目らしい。

 依頼を受けて対象に出会わなくても、薬草採取かゴブリン討伐でもお金になる。

 ギルドでも保険を考えてくれていると言うわけだ。

 

 俺達4人はEランクなので、たいした依頼がない。

 せめてDランクになれば、護衛の依頼も受けれるのに。


 そして安定した収入を得るためには、どうしたらいいのか4人で話し合った。

 討伐系は収入としては不安定だ。

 どうせ森に入るのだから、果実を採り売る事にしたんだ。

 この世界は砂糖が高く、甘味に飢えている。

 森に入らないと採れない果実はとても高いのだ。


 そうすれば、討伐は駄目でも果実を売ればお金になる。

 俺のストレージなら、無限に収納できるし。


 これからは生活の事を考えないと、3人からも言われてしまった。

 え、どういう事?

 友達同士だよね、俺達。

 まるで所帯を持ったような、言い方をされても。

 これはハメられた!てやつか。


 そのうち、「遅れてるの、もしかしたら…」なんて言い出さないだろうな?

 あ、まだしてないし。平気です。

 そんな簡単に子供が出来ない事は、知ってるつもりですから。

 騙されないぞ!


 今日はジャッカロープと言う、常時依頼の鹿の魔獣の狩りに来ている。

 角は美術品と煎じれば漢方として高く売れる。

 そして肉も少し硬いが、売れるそうだ。

 結局、毒がなければ肉は食べれる!てことかもね。


 今日、俺はオルガさんと腕を組みながら、4人で森に向かっている。

 どうやら順番で腕を組むらしい。

 レーザーアーマー越しでは、当たっても分からん。

 実にしからん装備だ。

「ねえ、エリアス君。さっきから何か言ってるけど、誰と話しているの?」

 ま、まずい!俺は脳内で考えてる事が口に出るようだ。気を付けないと。

「さすがに魔獣相手だと、レーザーアーマーは着ないと危ないからね」

 え、もしかしたらオルガさんは、相手の思考が読める超能力があるとか?


 草原に出た。

 草食系の魔獣は群れを成し、草原にいる事が多いらしい。

 見るとダイアウルフという魔物が5匹、ジャッカロープの子供を追いかけている。

 ジャッカロープも数十匹で群れており、逃げ遅れたジャッカロープの子供のお尻に、1匹のダイアウルフが爪を立て押し倒した。

 すると逃げていた大人のジャッカロープが5~6匹引き返し、押し倒したダイアウルフに向かい角を向け牽制している。

 他のダイアウルフも加わろうとするが、数十匹いる残りのジャッカロープも引き返し5匹のダイアウルフを囲んで輪を作った。

 そして何度もジャッカロープの角でダイアウルフはつつかれ、一か所だけ囲みを開けるとダイアウルフ達は逃げていった。


 こうしてジャッカロープはダイアウルフから子供を守ったのだ!

 めでたし、めでたし~て、おい!

 こんな場面を見てジャッカロープを狩る気にはなれない。

 それに下手に手を出せば、ダイアウルフの二の舞だよ~。

 『紅の乙女』のメンバーと話し、日を改める事にした。

 

 仕方なく森に入り、ブルーベリー、さくらんぼ、イチジク、ビワを山ほど採った。

 後はこれがいくらで売れるかだ。


 そして見るとウサギが居た。


 念のため

【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:ライオンラビット

 種族:ウサギの魔獣

 年齢:1歳

 性別:メス

 レベル:3


【特徴】

 長い毛と短い耳が愛くるしいウサギの魔獣

 肉は美味しく毛皮は高く売れる

 臆病で身の危険を感じると仲間を呼ぶ習性がある


 以前、コンラードさんが言っていた。

 ライオンラビットだ。

 臆病で素早い、構えた瞬間にはもうどこかに逃げていない、て聞いたが。


 そうだ、試してみよう。

 みんなにそのまま動かない様に合図を出した。


【スキル・ストレージ】発動

 カスタマイズ開始・ ・ … … カスタマイズ完了!


 俺はライオンラビットの前後左右と、上の空間にストレージを張り包んだ。


 ストレージは生き物をできない。

 ストレージでライオンラビットをおおえば、箱に閉じ込めたのと同じで、逃げることは出来ない。

 ただ広い範囲で、できないのが難点だ。


 ライオンラビットは驚いたように暴れたが、俺を見つめ動かなくなった。

 ??

「ルイディナさん、早く!」

「はいよ!」


 ルイディナさんが仕留めようと構えると

「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」と声が聞こえたような気がした。

 気が付くとライオンラビットは3匹になっていた。


 シュッ!!

 ルイディナさんの弓矢が飛ぶ!!

 ドンッ!


 俺はその都度ストレージで囲み、ルイディナさんが弓矢を打つ!

 MPがみるみる減っていく。

 逃げるライオンラビットも居たが、中には俺を見つめ動かなくなるものがいた。


「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」

「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」


 シュッ!!


 ドンッ!


「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」シュッ!!ドンッ!「ライオンラビットはエリアスを見つめている!」「ライオンラビットは仲間を呼んだ!」

 

「はあ、はあ、はあ。もう駄目だ」

 俺の魔力が尽きストレージ囲いは出来なくなった。

 その途端、残ったライオンラビットは逃げた。

 俺はこの技をconfineコンファイン(閉じ込める)と名付けた。


「凄いな、エリアスは。いったいどんな魔法だい?」

 ルイディナさんに聞かれ、さすがに疲れたのか汗ばんでいる。

(おぁ~、今日もルイディナさんのご褒美の汗が…)


「これは俺のスキルの応用で言えません」

「私達にも言えないんだ。ライオンラビットの周りを、何かで囲んでいるように見えたけど」


 すると突然パメラさんが興奮したように叫ぶ!

「魔力の具現化よ!魔力を形にして囲んだんだわ。凄いわ!」

(エリアスっちと子供を作れば、生まれてくる子供は大魔導士になるかも?あ~早く子種が欲しい)

「パ、パメラ、また何をやっているの?股に手を置くのはやめて!」

と、オルガさんに注意をされていた。

 時々、パメラさんがやる、股に手を挟むポーズは何の意味があるんだろう?


 仕留めたライオンラビットを数えると13匹だった。

 これは大量だ~!とみんなで喜んだ。

 これでしばらくはお金の心配をしなくて済むからだ。


 そして森を出て帰る途中、気づいたことがあった。

 とても重大な事に…。


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