第39話【Side】ミミは誓った
ミミが孤児院生活にようやく慣れてきたころ、孤児院に変化があった。
ミミたちの食事が少しだけ豪華になったのである。
「スープ!? 今日はいつもよりメニューが良くなったのですね」
「ミミちゃんが孤児院でみんなが食べられる野菜を育てようと提案してくれたからよ。みんなで育てた野菜だからきっとおいしいわよ」
ミミは久しぶりの温かい食べ物を口にして、満面の笑みを浮かべていた。
「これはお姉ちゃんがいたころ、外で野菜を育てているのを思い出して、みんなで協力すればできるかなぁって思って」
「そうね。私も良い案だと思ってすぐに企画書を書かせてもらったわ。みんなで頑張ったのだから、ちゃんと食べなさい」
孤児院生活でおいしいものを食べるためにはどうしたら良いのか考えたことが、結果になってミミのもとへ返ってきた。
これがミミにとってどれほど喜ばしいことだったかは言うまでもない。
「ミミお姉ちゃん来てくれてからみんな元気になった気がするー」
「野菜づくりとっても楽しかったよー。ありがとう!」
「もっといろんなこと教えてほしいなぁー」
ミミの周りには、たくさんの友達ができたのであった。
♢
「え!? こんな野菜は育てた覚えはないですよ?」
普段はパンとミルク、それからみんなで育てた野菜が食卓に並ぶ日々だった。
だが、今回のメニューは、まるでミミがデジョレーン家で食べていたようなメニューがずらりと並んでいた。
「毎日は無理だけど、しばらくはおなかがいっぱいになれるくらいの食事を出せるようになったのよ。みんなで感謝しましょう」
「「「「「はーーーーーい!! いただきまーす!!」」」」」
ミミは孤児院に入ってから勉強もするようになり、計算程度ならできるようになった。
だからこそ、いきなり食事メニューが変わったことに対して、どこかの偉い上位貴族が提供してくれたのだろうと考えていた。
「これだけのメニューを出せて、しかもしばらくってことは、よほどのお金持ちが恵んでくださったのですよね?」
「ミミちゃんの良く知っているお方からよ。よっぽどあなたのことが心配だったのでしょう」
「え? 私の知っている? お父様もお母様もそんなことできる余裕はないし、お姉ちゃんだった私のことは嫌いなはず……」
今までミミがフィアラに対してワガママを言い続けた挙句、ゴミ同然のように家から出ていってもいいと発言したことを悔いていた。
当然、フィアラからは嫌われても当然だと思い込んでいたのである。
だが……。
「ガルディック侯爵邸で執事をやっていらっしゃるフィアラ様よ」
「うそでしょう!? だって、お姉ちゃんは……」
「嫌いだったらこんなことを無償でするはずがないでしょう」
ミミは涙を溢しはじめる。
嬉し泣きをしながら、モグモグと満腹になるまで食べ続けた。
「お姉ちゃん……ありがとう」
ミミはこのとき、何年かかってでも絶対に使用人になって、フィアラの元に姿を表せられるような存在になりたいと誓っていた。
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