第4話 魔法とスキルの習熟



 帰ってきた父さんに呼ばれて、三人で夕飯を食べた。普通にパクパク食べてたら、二人に怪訝な目で見られた。どうしたの?


「駆、今までの記憶がないのはわかるんだけどな、ちゃんとご飯は食べてたのかい?」



 聞きにくそうな感じで、父さんにそう言われた。


 言われてみれば、二週間ぶりの実家の夕飯だ。朝飯は食パンを食べてるし、昼は簡単なものしか食べていないから気付かなかった。おまけに今日の夕食は、俺の大好きな肉じゃがだったのだ。


 きっと母さんは、俺が懐かしむだろうと思って作ってくれたに違いない。

 そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちが湧くけど、それよりも嬉しい気持ちで心が温かくなってきた。


「父さんも母さんもな、お前がちゃんとご飯を食べられてるのか?ちゃんと無事で健康でいられてるのか?例え何処か遠くに行ってしまったとしても、人間として生きる上で無事に健康でいてくれたらそれでいい。ご飯をちゃんと食べれるのならそれでいいと願ってた。ずっと、それだけが心配だったんだよ」



 父さんが言い終わると、母さんも同じ気持ちだったらしく、泣き崩れていた。そんな母さんを父さんがそっと支えていた。



 俺はこのままでいいのか考えていた。こんなに大事に想ってくれている両親に、真実を隠していいのかと。


 数秒ぐらい沈黙が続いたが、俺はまだ答えを出せないでいる。もし真実を話すのなら、その後に俺がやろうとしている事も話さなければならない。


 それはとても危険な事だ。普通の親なら誰でも反対するだろう。でも俺はあのクソ女神に必ず一泡吹かせてやるつもりだ。だからこの計画は止めるつもりはない。



「駆、あんた何か言えないことがあるのかい?それは母さんたちにも言えない事なのかい?」


「母さん٠٠٠」



 俺が秘密を抱えてるって、バレてるみたいだ。そりゃ親なら判るか。世の中の全ての親がそうだとは言えないけど、うちの親に限ってはそういうのを見抜いてくる。それだけ俺のことを見てくれているから。


やはり全てを話そう。


 話しても駄目だった時は、ちゃんと納得するまで説得しよう。黙って行動すると悲しませてしまう結果になる。



もう腹は決まった。



「父さん、母さん。聞いてほしいことがあるんだ。今から言うことは信じられないかもしれないけど、俺たちが体験した、実際にあった本当の出来事なんだ٠٠٠」


 二週間前に何があったのか?俺の体感的には一昨日のことだけど、最初から帰ってくるまでのことを全部話した。



 二人は驚いていたけど、実際にあったんだからどうしようもない。


 女神のクソさ加減も話しておいたよ。あと、この後の計画についても少しだけ話した。

 完全に話さないのは、この会話を女神が聞いているかもしれないからだ。


 後で盗聴無効のスキルも作っておくか。遠見や千里眼的なものも防ぐスキルが要るな。おっと話が脱線したな。



「そういう理由があるから、俺はまたここから離れなきゃいけない。全てまだ話せない事もあるけど、近日中には話せると思う」


「そうか٠٠٠お前はそういう嘘はつく子だが、こういう時には嘘をつかないからな。父さんは信じるよ」


「母さんはよく解ってないんだけど、その神様が悪いやつなのかい?」



 父さんが俺をよく理解しているようで嬉しいが、素直に喜べなかった。なんか釈然としないぞ?母さんにはクソ女神のせいだと認識してもらってる。何も間違ってないし。



「暫くは強くなるために色々と動こうと思うんだ。多分、目標までどのくらいかかるかはわかんないけど、2ヶ月もあれば充分な強さを手に入れてると思う」



 一応、目に見える不思議現象を見せてみることにした。


 右手で火魔法で手の平サイズの龍を出して、左手は水魔法で手の平サイズのイルカを作って宙を泳がせた。



 二人とも驚いていたけど、これが魔法だと説明した。他にも出来ることはあるけどと、付け加えておく。



 話が終わり、部屋に戻ってスキルオーブの作成作業に入る。


 その前に、さっき閃いたスキルが幾つかあったから、忘れる前に色々とノートにメモっていった。メモってる最中に思い付いたスキルや称号もあったからそれも書いていく。


 ちなみに称号もオーブで創造できたよ。作れない物もあるけどね。この辺りの法則はなんとなく感覚で理解している。


 イメージとして参考にした、ソシャゲの経験がかなり生きてる気がする。



 早速、先程のノートを見ながら作成していく。空間魔法、結界魔法、盗聴感知、覗き見感知、そしてスキルの性能を上げるスキルも作った。スキル向上、スキル上昇、スキル重複等々。


とにかく思い付く限りを尽くした。その結果٠٠٠



カケル・アカギ

人族 16歳 男性

職業 昼行灯


LV 1

HP 160

MP 1280


力  8+1150

体力 10+1150

速さ 10+1150

知力 15+1150

精神 20+1150

魔力 130+1150

運  20+11100


スキル

創造

神眼(鑑定、心眼、各種魔眼を統一)

ストレージ

スキル向上、スキル上昇、スキル重複

演技、交渉、魅力、料理

怪力、剛力、金剛力

頑強、剛体、金剛体

俊足、瞬足、韋駄天

知恵袋、博識、秀才、天才

集中、忍耐、明鏡止水

魔力増大、魔力泉、魔力タンク

ラッキー、幸運、豪運

原始魔法(火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、氷魔法、光魔法、闇魔法を統一)

身体強化魔法、空間魔法、結界魔法、天候魔法、魔法合成

魔力操作、MP自動回復、HP自動回復、MP二倍、HP二倍、魔力吸収

武王(剣術、槍術、格闘術、弓術、鞭術、投擲術、鎌術、暗殺術を統一)

鑑定無効、隠密、隠蔽、気配遮断、魔力隠蔽、盗聴無効、神眼無効、視線感知、空間把握、思考加速、高速思考、並列思考、生命索敵、魔力索敵、緊急回避、状態異常無効、全属性無効、即死無効、無効貫通、神殺し、神気、神貫通


称号

女神に嫌われた者、賢者、大魔導士、剣聖、槍聖、拳聖、弓聖、鞭聖、投聖、神殺し、理を壊す者、創造者




 夜も更けてきたので、キリがいいところで止めた。続きは明日だな。その日は風呂に入ってぐっすりと寝た。




 翌朝、目が覚めて朝食を食べたあとに、今日は外に出かけると母さんに伝えた。


 やはり母さんは心配していたが、今は力があるから大丈夫だと告げて家を出た。


「いってきまーす。空間魔法『転移』!」


 外で言うのは恥ずかしいから、家の庭で魔法を使った。


「よし!成功だっ!」



 転移した先は、北海道の何処かだ。なぜ何処かというと、適当に選んだ北海道によくある、"見渡す限り道路しかない"写真を見てイメージしたからだ。


 俺が暫く転移成功で喜んでいると、パパァーンとクラクションを鳴らされた。そりゃ転移先が道路のど真ん中だもん。鳴らされるわ。


「すみませんっしたー!」



 急いで道路の端に避けて、頭を下げておいた。直後、俺の横をトラックが駆けていった。


 危なかった~!危うくトラックで異世界転生するとこだったぜ!次からは転移先をしっかりとイメージしておこうっと。



 とにかく、これで転移実験は成功だ。あとは無人の荒野か砂漠にでも転移して修練あるのみだな。


 スマホを取り出して、候補をいくつか検索してみた。


「無人、砂漠で検索っと。おぉ!結構あるなぁ!ここでいいかな?転移」



 無事に転移成功だけど、どこの砂漠かは不明。パッと見渡した感じ、周りには誰も居ないみたいだ。念のため生命索敵をかけて、付近に人の反応がないことを確認する。



「誰もいないな?まずはこの暑さをなんとかしよう。じゃないと死んじゃう」



 誰もいないから、もし倒れでもしたらそのまま死亡もありえる。周囲が無人なのがデメリットの一つだけど、HP自動回復があるから、割りとなんとかなると思っている。


「氷魔法で冷風を周りに吹かせて、日射対策で闇魔法で頭上に影を作ろう。٠٠٠ハァ~涼しくなってきた」



 快適な温度を纏って、パラソル代わりに闇魔法で作った影を展開させる。砂漠でわざわざやることではないな。


まずは目的を果たそう。



「あそこを的と仮定して、火魔法から順番にいくか。魔法の練習開始だ!」



 まずは原始魔法である火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、氷魔法、光魔法、闇魔法を次々に撃ち込んでいく。


 もしも草木が生えてたら、この辺りは焼け野原になっていただろう。あまりの威力に少し驚いた。


 多分だけど、魔力関連のスキルが威力を上げてると推測する。自爆しないように気を付けよう。


「次は空間魔法と天候魔法、あとは魔法合成スキルも試さないとだな」



 空間魔法の使い方は難しいけど、空間把握と思考系のスキルで補助すれば何とかなった。


 天候魔法で砂漠に雨も降らせたし、魔法合成も掛け合わせパターンを一通り試してメモった。合成出来ないパターンもあるからだ。



「次は剣術の練習だな。相手はゴーレムでいいか」



 次は土魔法でゴーレムを作成する。込める魔力の量で強さの質が変わるので、最弱に設定した。


 ストレージのスキルを使って、中から木刀を取り出した。


 中学の時に修学旅行で買った木刀だ。クラスの半分は買ってた代物である。無論、男子全員が買ってた。ちなみにストレージは無限容量で時間停止機能付き。



「まずは身体の動きに慣れなくちゃいけないから、最初は剣術で試してみよう」



 剣術スキルを使って、ゴーレム相手に打ち込んでみた。砂で出来てるから、ズバッと簡単に斬り裂けた。勿論、ゴーレムの体が砂だからすぐに元通りだけど。


 何度も剣を打ち込んでいくうちに、天才スキルの補正もあって、それなりに動ける様になっていった。



 天才スキルは、知力が上がるもんだと期待して作った。その期待は、いい意味で裏切られたけどね。


 天才スキルの効果は、生産系や戦闘系に関して、劇的に習熟が早くなるというものだったのだ。なのでこなせばこなす程に、最適な動きになっていく。



「はぁ、はぁ、はぁ٠٠٠疲れた。エリクサー飲も」



 エリクサーも創造で作ったアイテムの一つだ。効果は体力、気力、HP、MP、状態異常を完全に回復するというものだ。定番でしょ!



 体力が回復したので、強化系のスキルと強化魔法を使った練習に切り替えた。


 強化した身体能力と実際の感覚のズレを直すためだ。



 まずはスキルのみで強化してゴーレムと戦った。次に魔法のみで強化して戦う。何度かゴーレムを補修しながら、最後にスキルと魔法を使って二重強化した。


「完全に身体が別物に感じるな。よし、少しずつ動いてみよう」



 自分じゃないような感覚を覚えながらも、一歩踏みしめてみる。ひょいと百メートルほど移動していた。リアル縮地だ。そういえば縮地は持ってなかった。

うん٠٠٠これは難しいな。



 ゴーレムとの練習は一旦止めて、高機動を活かして砂漠を縦横無尽に走り回った。跳べば数十メートルは跳躍し、走れば景色が物凄いスピードで過ぎていく。


 どうやら小回りも利かせた動きをするには、思考系の使用も同時に行わなければならないと思った。あと靴にめっちゃ砂が入った。



 高速戦闘になっても大丈夫なように思考系スキルを作っていたのだ。

 思考加速と高速思考と並列思考を使用することで、強化系のスキルと魔法を使っても制御できるようになった。



「これで強化系の確認もできたな。次に槍術だけど、槍がないし、格闘術かな?てか、武器が無いのにスキルだけあるな。武器も創造しちまうか」



 ここで武器を作ることにした。

 作るのは、剣、槍、ガントレット、弓、鞭、大鎌、投げナイフ、短剣。


 大槌も考えたけど、そんなに使うもんじゃないかな?と思って作らなかった。


 ちなみに全部ミスリル製にしてある。見たことないけど、これがミスリルなのだろう。鞭だけは何の素材か不明である。持ち手のとこだけミスリルっぽいけど。


 ラノベにあるように魔力が通り易いかと思い、魔力を通してみた。見た目は特に変化はなかった。



 試しに大岩を創造して魔力なしで試し斬りをしてみた。ガギンッと音を立てて中程まで斬れた。


 次に魔力を通して斬ってみる。

 すると、豆腐を斬るようにスッと斬れた。やはりラノベ知識は偉大だと思った。




 その日は遅くまで様々な武器の習熟に時間を使った。かなり熱中してたので、気が付けば夜になりかけていた。


 砂漠の夜は寒いと聞くので、完全に暗くなる前に帰ることにした。





 帰ってから知ったのだが、日本との時差が八時間もあった。日本では深夜だったのだ。


 両親をかなり心配させてしまった。深く反省して、今後は時差に気をつけよう。


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